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始まり その4

「自分たちで作る。ですか。」

改めて新波先生に言われたことを言う。

「そう!どんなクラブで、どんな事をするか。っというのを全部自分たちで作っちゃえばいいのよ!」

「おぉ!それめっちゃ楽しそうっスね!」

孝俊は目を見開き賛同した。

「自分たちで作るのかぁ…面白そうだね!」

菜花も笑顔で頷く。

「でしょー?ただし、少し条件があるけどね。」

「条件…ですか?」

俺が聞き返すと、新波先生は少し困ったような顔をした。

「そんなに難しくないのだけど、クラブメンバーを最低でも6人にしないといけないのよ…。」

そこまで言うと隆俊が口を開く。

「なるほどー…あと三人か…。先生は顧問やってくれないっスかね?」

「うーん…ごめんなさい。私はもう吹奏楽の顧問なのよ。やってあげれなくもないけど…。」

「あぁ、無茶しないでください。流石に別系統のクラブ掛け持ちはきついでしょう。」

「ってことは世弥くん、音楽系はやらないの?」

菜花は首をかしげながら言う。

「あぁ、俺は音楽に関してなんの知識もないからな。」

「そっかぁ…世弥くんギターとか似合いそうなのにな…。」

と残念そうにしょぼくれる菜花。ごめんなぁ、買ったら一週間でマスターするから待っててな。

「あ、そいえば。学年とかって関係あるんスかね? 」

「どういう事かしら?」

「ええっと、つまりッスね、『二年生何人必要』とかってあります?」

「あぁ、それなら問題ないわ。そこら辺この学校曖昧なのよ。やりたいなら掛け持ちの子を入れてもいいって訳。」

あはは…と苦笑いを浮かべる新波先生、その顔には昔の苦労が伺える。

「結構曖昧なんですね…。でもあと三人か。」

俺が呟くと新浪先生は少し渋い顔をした

「ホントは私が言っちゃあダメなんだけど、名前だけ置いてもらっておいて活動はあなた達三人がするってのも、手だとは思うわ。ホントはやって欲しくないんだけどね?」

「なるほど…。」

それはいいな、人が多すぎるのはきらいだ

考えていると、チャイムの音がなる。どうやらHRが終わったみたいだ。

「まぁ何も無理に作れって言ってるわけじゃないし、他のクラブの見学をしてからでも遅くないと思うわ。」

まぁ気軽に相談してね?と振り返る前に言って新浪先生は去った。

その後はまた自己紹介の連続だった。

「俺が君たちの国語担当〜…」「私があなたたちの数学を任させてもらう〜…」などの言葉の後に必ず来る。

『じゃあ、貴方達のことも教えてくれないかな?』

……この言葉は嫌いだ、自己紹介が苦手な俺には、この言葉は極刑と同じぐらいの重みに感じる。

「三崎世弥です…よろしくお願いします。」

ペコリと一礼して席につく。しんどい…帰ってすぐに寝たい…。

自己紹介が終わり、今日一日が終了した。帰りの挨拶をし、それぞれ部活や帰宅するものが出てくる。

俺は今日一日の疲れを取るために伸びをする。

「おぅ、お疲れさん。」

俺の頬に缶コーヒーをあてながら、しれっと後ろの席に座る孝俊。

「あ、おごりじゃないから、あとでしっかり払えよ?」

「・・・。おごりじゃないなら買ってくんな。」

苦笑いをしながら財布を取り出し120円を払う。とてもありがたい、この甘さが脳に染み渡る。

「今日はお疲れさん。お前にとってみれば今日は地獄の一日目だったか?」

頬杖を突き、ニコニコしながら聞いてくる。

「そうだな・・・、これから2~3日間こんな事が続くのかと思えば憂鬱すぎるな。」

「ははは、まぁ、中学のお前よりは生き生きしてると思うぞ。」

「・・・。」

「あの時は・・・、おっと、こりゃ失礼。」

途中で俺がとても微妙な顔をしていたのに気づいてか、孝俊が言葉を止める。

思い出したくもない、必死に謝る女性の後ろ姿、俺の後ろにいる両親の罵声。

「・・・まだ禁句か?『家庭教師』は。」

「あぁ。」

強く肯定する。あれは許してはいけないことだ。

「あと、『両親』も、だ。」

「そうだろうな、あの件に関しちゃ、擁護もしきれないからな。」

短い沈黙。それを裂くように小さい声がした。

「あれ?世弥君たち、どうしたの?」

さっきまで同じクラスの女子と話していた菜花が、こちらにやってきた。

「んにゃ、そろそろ帰るところよん。」

冗談めかして言う孝俊。

「あぁ、そろそろ行甲と思ってたところだ。」

「へぇ、そうなんだ・・・。」

何かを言いたそうな目で菜花はこちらをちらちら見ている。

「・・・よかったら一緒に帰らないか?」

そういうと蕾から満開になった花のように笑顔になった。

「う・・・うん!一緒に帰ろうねぇ。」

ニコニコ・・・もといニマニマしている菜花。超絶可愛い。

「んじゃ、さっさと行こうぜ。」

孝俊がそう言い、俺達は鞄を肩にかけ、教室を出る。

「ん、そういえば。」

俺は菜花を見て聞く。

「菜花の家はどの方角なんだ。俺たちはあっち側なんだが。」

「あ、大丈夫、そっちならおんなじ方角だよー。」

そうか、よかった。違う方角なら、誘っといて何なんだ、って話になるからな。

「しっかし、自分たちでクラブを作るかぁ・・・。」

唐突に、孝俊がつぶやく。

「俺達3人と、あと・・・何人だっけ?」

「3人だ馬鹿たれ。・・・しかし、活動内容も未定だぞ?まずそっちを決めなきゃな。」

「そうだね・・・うーん、何も思い浮かばないしなぁ。」

三人でうんうん唸っていると、

「あ、俺この辺で。」

孝俊がT字路の違う方を指しながら言う。

「今日はバイトの日か。」

「姉ちゃんが煩くてよぉ・・・。あ、またお前も来いよ?お前は意外と女性受けが良くて姉ちゃんが偉い気に入ってるから。」

「ははっ気が向いたらって言っといてくれ。」

じゃぁなと言い駆け足で去っていく孝俊を見送る俺達、完全に姿が見えなくなった時、菜花が声をかけた。

「・・・孝俊君のお姉さんって何しているの?」

「あぁ、あの人は服屋を営んでいて、たまに新作の洋服を俺らに着させて、それをネットで拡散、アピールするんだ。」

「えっ!?じゃぁ世弥君意外と有名人?」

「うーん・・・有名ブランドって程じゃないけど、町でたまに写真を撮られる程度だな。」

「わ!凄い!私の彼氏さんは有名人だ!」

ピョンピョンと跳ねそうな勢いで喜ぶ菜花。メッチャクチャ可愛いい、この()をSNSに投稿した方がいいんじゃないか?

「今度菜花も行ってみるか?」

「え、行っていいの!?」

「あぁ、普通に客として行ってみればいい。」

「うん!えへへっ楽しみだぁ。」

その日の下校は、途中からずっと菜花はニマニマしていた。

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