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多生の御縁
降り立った駅は無人駅
初めて踏んだ土地の縁
券を箱に入れて出る
駅前は人の足音もまばらな広場
その向こうには広大な田園
さらに遠くに山の線
空は高く 青く
陽気は麗らかに
吸い込む空気は異郷の薫り
さあ行こうかと踏み出したとき
ふとそれが目に留まった
何を象ったのかもわからない像
見たことがある
と しばらく考えて思い出した
それは遠く 若い頃
目的地は違ったけれど
この地に立ったことがあった
そう あのときもこうやって
同じ像を見下ろしていた
お前は一体何者だ、と
久し振り 奇遇だな
奇妙な親近感をもってしゃがみ
視線の高さを揃えてみる
こっちは随分変わったけれど
そっちは相変わらずで何よりだ
それで
結局お前は
何者なんだ?