仮面舞踏会
小指の爪だけ伸ばしてる。サイテー。
女は男が思う以上に男の手先を気にしている。和人―デートに誘ってきた会社の同僚なんだけど、そのくらい分かれって感じ。
どうせ鼻ほじるのに便利だから小指の爪だけ伸ばしてるんでしょ? キモッ。だってドライバーの持ち合わせがない時にネジの緩み発見したからって小指の爪じゃネジ回せないでしょ? 最悪。鼻ほじって小指の爪に引っかかった〝獲物〟のサイズとか空気の通りがよくなったことに対してニヤけんのよ絶対! うげっ。
「和人くん。私そろそろ―」
「だぁっー!」
ハッ? マジ意味分らないんですケド―
「悪いね。この小指の爪、つけ爪なんだよね。ちなみに材質はダイヤ。喉ぐらいなら簡単に貫けるんだ―って聞いてる?」
え、マジ何コレ? しゃべれない……っていうか超痛い!
「あっ、ゴメン美和ちゃん。俺次のターゲットと約束入ってるからもう行くわ。大将! お勘定とあと〝コレ〟、片しといてぇ!」
「へい!」
いや、ウソ、何マジで……イや、ちょっ、触んないでよ、いや、いやだって!
欧州のどこか―
男A「今度はどこの〝ドール〟を買ったんだい?」
男B「ジャポネのドールを一体ね」
男A「ヒュ~。高かったんじゃないのかい?」
男B「まあね。でもこれで残すは80ヶ国さ」
男A「しかし裏ルートとはいえ、よくバレずに済んでるな」
男B「僕のは特注でね。声帯を潰してもらってるのさ」
男A「声なしでヤルのかい?」
男B「女に必要なのは〝下の口〟だけだろ?」
男A「違いない」
男AB「HAHAHAHAHA!」
有り余った資本は時に、価値あるものを無価値にする。
日本における年間行方不明者数約8万人。内、約1万人が所在不明のまま捜索を打ち切られる。