06.見透かす笑み
なに。いつもの小鳥遊くんじゃ、ない。
あの暖かそうな雰囲気すら今はどこにもない。
あまりの驚きに固まっていると、小鳥遊くんは先ほどの笑みを浮かべた。
「ほんと、面白い。俺の変わりように驚いた?」
そりゃ驚くに決まってる。
例えるなら、太陽がいきなり月に変わったのと同じだ。あ、すごく微妙な例え。
警戒しながらも返答する。
「驚いた」
「だろうね。顔が強ばってる」
「・・・二重人格・・・とかなの?」
おそるおそる聞いてみた質問に彼は一瞬きょとんとしたが、すぐにクスクスと笑う。
「残念だけど俺は二重人格じゃない。
クラスの中の俺も、この俺も、全て小鳥遊結月だから」
つまりはこれか、いつもの方、どちらかが本当の小鳥遊くんで、どちらかが猫かぶりの小鳥遊くんなわけだ。
まあ、普通に考えてこっちが本当の小鳥遊くんだろう。
私に猫かぶる必要性はない。本性を見せる理由もないけど。
といったところで詳しく分析している自分に気がついた。
小鳥遊くんも余程おかしいけど、こうやって冷静に考えられる私もおかしいのかな。
「須成も気づいてると思うけど、こっちが本当の俺。あっちは全部殻なの。
なんで須成の前で戻ったかというとね、須成と友達になりたかったから」
「・・・へ」
や、もうなんというか、唖然。
友達になりたかったってどういうこと。