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ただ、愛の故に

 成人の日、私たちは『新年聖会』に参加するため、大阪にある教会に行った。

 この聖会も、昔は2日か3日のどちらか聖日(日曜日のこと信者はこう呼ぶ)に当たらなかった方にしていたのだが、ハッピーマンデー法が施行され、一月の第二月曜日が確実に休みになった昨今、この日に固定された。

 とは言え、大阪から離れているウチの教会からの参加者は少ないし、翌日から新学期が始まるため、子供たちも留守番だ。だが、行ってみると、小学生は予想通りいなかったが、中高生は結構いて、夏の教団キャンプで知り合ったメンバーから、

「今日は菅沼くん来てへんの?」

と残念がられてしまった。その話をすると、安藤先生が、

「ゴールデンウイークに青年大会があるんです。私も参加しますから、良かったら拓也くんを乗せていきますよ」

と言うので、

「そんな、ご迷惑じゃないですか?」

私は恐縮してそう返したが、

「いいえ、明日美ちゃんや御国くんも一緒に行きますから」

安藤先生は笑顔でそう返した。明日美ちゃんが行くと知ったら、拓也は他に用事ができたってそれを蹴ってでも行きたがるだろう。

「じゃぁ、お願いします」

篤志もそう思ってか、ニヤニヤしながら先生にお願いした。


 そして、聖会が終わってそろそろ帰ろうとしていたとき、私たちに慌てて近づいてくる人がいた。博美さんの姉、曳津順子さんだ。

「菅沼さん、いらしてたんですね。

受洗おめでとうございます」

順子さんはにこにこしながらそう言って頭を下げた。

 洗礼式当日、初めておめでとうといわれたときには面食らったが、信者にとって受洗は、第二の誕生日とも言える日。『生まれ変わっておめでとう』ということなのだろう。

「ありがとうございます」

「あの時は、主人が失礼なことを申しましてすいませんでした」

続いて順子さんは、ちょっと恐縮したようにそう言った。

「いいえ、普通はあれが正しいと思いますから。

それに、曳津先生のあの一言がなければ、あの場所で博美さんの許し言葉も聞けなかった訳ですし、すべては御心なんだって今は思ってます」

そう、自分たちを離婚に追い込んだ女に、『感謝します』と言いきれるのはどこからきてるのだろう……それが私たちの救いの初穂だった。

「主人がね、ヒロたちが離婚したとき、『人の思いに勝る神の御思いを感じる』って言ってたんです。あの時はその意味が分かりませんでしたけど、振り返ってみて、本当にそうだなぁと思って」

「そうですよね、俺たちみたいなのを救うのに、神様なんでこんなに頑張るかなって」

順子さんの言葉に、篤志がそんな相づちを打つ。

「それが神様の愛なんですよね。

ヒロもね、菅沼さんたちの受洗の報告の電話でね、『私って本当にいろんなところを通らせてもらって、ホントに神様に愛されてるよね』ってしみじみ言ってました」

病気も離婚も再会も死別も全てを神様に愛されていることと言い切る博美さん。私はそこまでの信仰は持ってないけれど、神様は本当に思いもしない方法でご自分の民を興される。ただ、愛の故に。

 

 そして今、その愛の中におかれていることを本当に幸せだと思った。


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