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Turning Point

 私はただ、『信じます』と言っただけだ。しかも、礼拝中だったから、声に出して言った訳じゃない。

 だけど、その一言で私の世界は劇的に変わった。

 

 私は自分で思う以上に『あの一言』を悔やんでいたのだと思う。先輩の離婚劇の真相を知り、博美さんの置かれていた状況を知ってからは特に。その重石が一気に取り除かれて、赦されたという喜びが全身をかけ巡って、許されるならその場で踊りだしたかもしれない。

「冴子?」

号泣に近い私を隣の篤志は心配そうに見つめる。その篤志に口パクで『後でね』告げると、私はまた前を向く。程なくして、安藤先生のメッセージが終わった。

 そして私は、礼拝が終わるのもそこそこに自分の決心を安藤先生に伝えた。安藤先生はもう大喜びで、すぐに博美さんと篤志を招き寄せた。

 

 博美さんは私よりも大泣きでその報告を聞き、篤志は、

「決心のみことばがローマ書だなんて、おまえかっこ良すぎだろ」

と言い、

「どんどん先に行くなよな」

と言ったが、その顔は笑顔だった。


 不思議なもので、御子を受け入れたとたん、それまで難しいとばかり思っていた聖書の言葉は、それからどの架書も自分に向けて書かれているように感じるし、日々のデボーションが全く苦にならなくなっていた。

 それどころか、てらいがあるからと篤志とのデボーションを自分で断ったのに、以後の私は毎朝、その日の聖句と所感を彼に報告するのが日課になった。

 負けず嫌いの篤志は、そんな私の変わりように焦ったのかもしれない。それが、ノー残業デーの水曜日にあることも手伝って、祈祷会に熱心に参加するようになり、私から遅れること一月、彼もまた御子を主として受け入れた。


 そして、クリスマス礼拝のこの日、私たちは夫婦揃って主の家族として新しい歩みを始めた。


 私たちの洗礼式を見て、博美さんはまた号泣していた。

 先輩の前夜式の時、私に感謝すると言った博美さん。あのとき、私はその意味が分からなかったけれど、思えばあのときから、いや、私が先輩と博美さんをやっかんであんな発言をしたときから、この救いは始まっていたのだろうと思う。


 本当に……神様の導きは不思議だ。



【家を建てる者の退けた石が隅の親石となる。

これは主の御業。

私たちの目には驚くべきこと。

今日こそ主の御業の日

今日を喜び祝い、喜び踊ろう】


   

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