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第七話

今回はクイード目線です。


カイリはでてきません。

「ふうっ。」


野営地内に設置された作戦司令室兼自室に戻り椅子に身体をあずけため息をつく。

いまだにあの目前に広がっていた光景を信じられない。

水が澄んでおり魚が多種多様に存在していることで観光スポットとして有名だったスイル湖が、みるも無残な荒れ地と化しているのを目にしたときは隊員とともに呆然とした。

あれは魔法なのだろうか?いくつかの戦場で戦ってきたがそのどこでもあの規模の破壊ができる魔法などみたことがない。






コンコン


考えに浸っているとノックの音が響いた。

おそらく部下の報告だろう。


「入れ。」


「よっ。」


入ってきたのはマウロ・アミーチス少尉。

私の同期で私がまだ新米のときからの付き合いだ。この隊の副隊長でもある。出世には興味がないらしく私を支えてくれるよい部下であり親友だ。


「なんだお前か。」


「ん?クイード、あの娘は?」


「話をしにいったらもう寝ていたよ、よほど疲れていたんだろうな。」


「よばいにいったのか?ずいぶん気に入ってたようだがそれはちょっと引くぞ・・・」


「な、何をいっているっ!!そんなことするわけないだろう!!」


「大声出すな、みんなが起きる、冗談だ。」


「くっ。」


こんなふうにからかってくるところは昔と全くかわってない。

だが,こうみえていつもはふざけているがこの隊の誰よりも思慮深い、こんな時間に尋ねてくるのにはなにか重大な理由があるに違いない。


「まったくなんのようだ?報告か?」


「いや暇だったんでな、からかいにきた。」


「おまえというやつは・・・」


さっきの言葉は撤回だな。


「冗談だ、ちょっとはなしがあってな。」


「話?なんだ?」




「失礼します。隊長、ご報告が・・・」


「まて、マウロがさきだ。」


「いや、おれは後でいい。たいした話じゃないし。」


「そうか?よし報告を聞こう。」





「スイル湖一帯の消滅ですが国の魔術研究室に問い合わせたのですが、そんな規模の破壊ができる魔法はない。しかも魔法痕がないのなら魔法ではない、何か他の原因があるのではないか、とのことです。」


上は頭が固いな。そのせいで苦労するのは現場の我々だというのに。


「ふん、あれが魔法ではないならなんだっつーんだ。あっこの連中は頭固いばっかりだ、使えんったらありゃしねぇ。」


「そういうことを部下の前で言うな。」


吐き捨てるように文句を言うマウロを咎める。私が思っていたことを言ってくれたが上官として認めるわけにはいかない。


「わかった、もう下がれ。私が直接連絡してみる。」


「はっ、失礼します。」





退出していく部下を見送りながら深くため息をつく。


「マウロどう思う?」


「むかつく。あの連中は保身ばっかり考えやがって・・・」


「そっちじゃない。湖の件だ。」


「そっちか,んーおそらく禁術だろうな。」


禁術とは大昔にこの大陸の評議会が定めたあらゆる魔法の中で存在してはならない魔法のことだ。

それなら研究室が認めないののもわかる。禁術は全て存在しないのと同じ扱いだ、研究室の連中も分かっていても存在を認めるわけにはいかないのだろう。


「やはりそう思うか。」


「一刻も早くここから離れたほうがいいだろう。禁術を使える魔術士などと戦えるわけがない。」


「そうだな、まだ残っている全隊員に退却命令をだせ。並びにアルビヤに対魔導特殊戦闘部隊を配備するよう要請。アルビヤの領主に危険を知らせろ、いつでも避難できるようにだ。全隊員が戻りしだいすぐにここを引き払う、寝ているもの全員叩き起こせ。日が上りしだい出発する。それまでに準備をすまさせろ。」


「・・・それ俺がやんの?」


本気で面倒くさそうな顔でこっちをみてくる。


「当たり前だ、お前は副隊長だろう。」









「ふぅ。」


マウロに命じた後今日三回目のため息がこぼれた。


「なぁクイード。」


まだいたのか。さっさと仕事してほしいのだが・・・


「なんだ?早く仕事しろ。」


「あの少女のことどうおもってる?」


「ど、どうって、カイリさんはただの民間人だ。そんなよこしまな気持ちはない!!」


 突然の質問に激しく動揺してしまった。何言ってるんだこいつは。


「そうじゃない、怪しいとは思わないのかときいてるんだ。あそこは猛獣がうようよいるわけではないがけして安全な場所じゃあない。しかも湖からそう遠くないところだ。そんなとこに杖すらもたず歩いているなんておかしいとは思わないのか?」


「カイリさんが犯人だと言いたいのか? マウロ、彼女はどうみても十代だぞ。どんな天才でも上級魔法が精一杯だ。ましてや禁術だぞ?考えすぎだ。」


 禁術は威力は絶大だがその代わりに習得が難しい。何十年も修練を積んだ者でも使えるかどうか怪しいほどだ。あの若さで使えるわけがない。


「あの娘にはな。これを見てくれ。」


マウロが意味ありげに出してきたのはどこにでもありそうなボロボロの黒い本だった。


「これがどうかしたのか?」


手にとって何ページか確認してみたが、白紙だという意外何の変哲もないただの本だ。


「湖の近くの森のなかに落ちていた。おそらく犯人のものだ。」


「なぜ分かる?」


「さっき解析してみたんだ。魔法痕はほとんど消されていたが魔法の種類だけはなんとか読み取れた。それはな・・・魂の器だ。」


「魂の器?たしか大昔に不死の魔法の研究によって生み出された魔法だったな。」


「なんだ知ってたのか。」


「名前だけ昔学園で教えてもらった、たしか全工程を反帰蘇魂と言っていたな。詳しくは教えてくれなかった。」


「概要はその名の通り蘇りの魔法だ。が、問題はそこじゃあない。誰にも迷惑をかけないんならいくらでも蘇っていい。」


・・・それはそれでどうかと思うが。


「これが禁術に指定されている理由は蘇りの方法だ。」


「どういうことだ?」


「蘇った当初は魂の状態になる、魂の器に入れれるのは魂だけだからな。そして身体を取り戻すために他の人間の身体を奪う。そこまでやってやっと完全復活になる。」


「反帰蘇魂は分かったがそれが何の関係がある?」


「・・・お前は本当ににぶいな。あの少女がもしかしたら乗っ取られているかもしれないということだ。」


「それだけじゃない。問題は蘇った術者だ。あの規模の破壊ができる禁術、まったく魔法痕を残さないほどの術者、空になった魂の器、そしてこの場所、心当たりないか?」



少し思案してみると1人の魔術士が頭に浮かんできた。



「・・・まさか・・・そんなことあるわけがない。あの男が蘇ったというのか?そしてカイリさんを乗っ取っていると?」


冷や汗が頬をつたう。


「ここは国が何度も調査した。そしてあの男の痕跡は何一つ見つからなかった。それが事実だ。」

そう。ここにあの男が何かを隠しているという報告を受けた王国軍が何度も調査隊を派遣しくまなく調査したのだ。そして何も見つからなかった。


「仮説だからな。本当かどうかは分からん。だがよく考えてみろ。街中でのテロなら分かるが誰もいないこんなところで禁術を撃つ理由があるか?」


「・・・それは確かにそうだが。」


 何も言い返せない。認めたくはないが認めざるを得ない。


「蘇って乗っ取ったその身体で試し撃ちした、と考えればつじつまがあうだろ?それにあの男なら調査隊にばれないようにするぐらい難しくないだろうしな。」


「・・・」


「それだけじゃない、湖跡とお前があの娘を見つけた場所の間に何ヶ所か魔法が使われたような場所を見つけた。おそらくどれも上級以上の魔法だ。」 


「いいかげんにしろ、どれも推論だ。それらは状況証拠にすぎない。それにもし間違っていたらどうする気だ。すいませんでしたではすまない。彼女の心に深い傷をつけてしまうかもしれない。」


国民を守る使命を帯びている我々にそんなことは許されない。責任を取るべき立場の者が軽々とこういうことを言ってはいけないのだ。


「だから仮説だって言ったろ。別に殺すべきだとはいってない、可能性の一つとして頭に入れとけってことだ。」


「だが・・・」


「お前は隊長になったんだ、あらゆる可能性を考えとけ。あとこれは俺の師匠の受け売りだが、簡単に人を信じるな。お前は優しすぎる。」


「・・・わかった。」


「あの娘のほうは俺も注意をしておく、何かあったらちゃんと対処する。じゃあな」


「あぁ、また明日な。」


マウロを送り出しさっき言われたことが頭の中でこんがらがる。

カイリさんが犯人,もしくはあの男に乗っ取られている。

もしそうなら自分は・・・


・・・ダメだな、頭が混乱しすぎてちゃんと考えられない。

今日はもう寝るか。

明け方には出発すると言ってしまったしな。



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