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第五話

『いやー流石に壮観だな,ハハハ。』


アルが気持ちよさげに高らかと笑っている。


「笑い事じゃない!!これどうすんのよもう」


さっきの小島を中心に半径百メートルぐらいの全てが荒地と化していた。


さっきまでの景色が見る影もない。


『別にいいじゃないか,このままで。それに俺もここまでとは思わなかったんだ。でも事前に衝撃的デビューになるって言っといたじゃないか。』


「ここまでとは思わないわよっ!!」


『まーやってしまったもんはしょうがねーだろ,ハハハ』


まだ笑ってる,むかつくわー。





『さて,カイリの魔法デビューも終わったし,これからどうする?』


「どうするって言われても私何にも分かんないって,アルが決めてよ。」


『じゃあとりあえずここから最寄りの町にでも行くか?俺も死んでからどのぐらい経っているか知りたいし。』


「じゃあ決定。町どっち?早く行こうよ。」


さっさとこの場所から離れたいのでアルをせかす。


『んー多分こっちだな。』


アルが進みだし私はそれについて歩き出した。


















・・・三時間後


「ア,アル,ま,まだ?」


『何言ってる。まだ半分も来てないぞ。』


・・・マ,マジですか!?まだ半分!?


三時間歩くことすらあやしい私なのになれない山歩きということも加わり私の体はとうに限界を迎えていた。


今はもう途中で拾った棒に全体重を預け,かろうじで立っている状態だ。


こ,こんなことになるならもっと体力をつけておくんだったわ。



「も,もうムリ,もう歩けない。」


倒れている巨木にドカッと座り込む。


『なさけない,たった数時間歩いただけでこうなるとは。だから魔法を使えと言ってるだろ。』


「それは絶対拒否。」


手をバッテンに交差さして断固拒否する。


 








「ねぇテレポートとかないの?いきなり町までいけるやつ。」


 歩くのはだるいの,だって現代人だもん。


『あるぞ。』


 やったーと思っていたらテレポートは一回いったことある場所にしか飛べないらしい。


じゃあまだどこにもいったことない私には何の意味もないじゃん。

仕方ないので歩こうかな~と思ってたら,アルがテレポートじゃなくても移動系魔法はほかにもあると言うので使ってしまった。






 それが運のつき。




 吐いた,うん吐いた。こうおぇぇ~とね。


 竜巻を作ってそれに乗って飛んでいくという、誰が考えたの?といいたくなるかなりムチャな魔法だったんだけど乗ったらすごいスピードで回転した。

某テレビの回転テーブルとかの比じゃないスピードで・・・


 1分ももたずに墜落しました。



 ということがあったのよ。


 拒否している理由はほかにあってね,

このソフトボール野郎は何事にも過剰な力も持つ魔法を教えてくるのだ

私が水を飲みたいと言ったら滝のような雨を降らす魔法を教え辺り一面を水浸しにし,おなかが減ったと言ったら山一面に光の矢を放つ魔法を教え山を焼け野原にして動物を黒墨にした。


 アルはそのたびに大笑いしていた。


 魔法を使って移動なんかしたら今度は何が起こるかわからない。

町の人に被害が出るかもしれない。


 でも,さすがにもう歩けない。

こんなに遠いとは思わなかったなー


 結構都市部に住んでいたので一番近場な町まで何時間もかかるっていう考え自体浮かばなかった。

バスとか電車を使えば5分もかからなかったし。


 距離に対してかかる時間の認識が合わなくなってる。

こんなところでテクノロジーの弊害を見つけてしまうとはね。




『で,どうすんだこれから?やっぱり魔法使うか?』


「それだけは拒否ってさっきから言ってるじゃん。あなたの力には頼りません。」


『ちゃんと普通のやつにしてやるから。信じろって。』


 ごまかしているが笑っているのが分かる。

全然信用できない。


「アルの普通が信用できないのよっ!!とりあえず動けるようになるまでここで休憩!!」


そう言い切り木の上で横になる。

疲れていたのでそのまま眠りに落ちるのにそう時間はかからなかった。















「動くなっ!!」


 背後から怒号を浴びせられ目が覚める。

全然疲れが抜けていない,眠ってからまだ五分もたっていないだろう。

よくも私の安眠を邪魔してくれたな,と怒りながら声のほうに向きなおると二十代前半ぐらいの男性がファンタジーっぽい鎧を身に纏い,両刃のロングソードを構えていた。

そしてその切っ先を私の喉元に突き付けてきた。


何なのこの人?山賊?

ていうか私この世界でまだ少ししか過ごしてないのに何回死にそうになるの?


「ここで何をしていた!!正直に話せ,さもなくば斬る!!」


腕に力を込めさらに剣先を押しつけてくる。

ちょっ,あたってますよー。


(ちょっと助けてよアル!!)


心の中でアルに助けを求める。

契約している者同士は言葉に出さなくても心の中で強く思えば会話できるらしい。

いわゆるテレパシーだ。

アルはこの人から見えないところにいるので声を出すわけにはいかなかった。


『さぁ自分でなんとかしろよ。俺の力には頼らんのだろ?』


ニヤニヤしながら嫌味を言い私の横に来る。


こいつ,そんな場合じゃないのがわからないかな?しかもどうどうと出てくるし。


(そんなこと言わないで助けてよ,これホントやばいって。)


『そうだなー,二度と俺に逆らわないって言うんなら助けてやらんというわけでもない。』


 さらにニヤニヤする。


 こ,この球体がっ。調子こきやがって覚えてなさいよ。どうしてくれようか。まずは・・・。


「聞いているのか?早く答えろ!!」


 男がしびれを切らしまた声を張り上げる。


 はい,アルへの罰を考えている場合じゃなかったですね。


「えっと,・・・道に迷った・・・のかな?」


『なぜ疑問形なんだ?』


 アルがあきれ顔で言う。うまい言い訳なんかそう思いつくものじゃないのよ。


「道に迷っただと?嘘をつくな!ここは一番近い民家から何メル離れていると思っている!?怪しい奴め。」


 やっぱ通じないか。

それに単位がさっぱりだ。メルって一体何キロ?


 つーか目の前にもっと怪しいヒトダマが浮いてるでしょ?なんで無視してるの?




「落ち着けガルマン。彼女からは何の反応もない,ただの民間人だ。剣を降ろせ。」


 ガルマンと呼ばれた男の後ろから長髪の男性がでてきた。

長髪なのにさわやかでかなりのイケメンだ。身長も高く180は軽く越えている。

しかも髪の色は銀,キラキラしてる。銀髪なんて初めて見たよ。白髪ならたくさん見たけど。



 なんにせよ助かったみたい。


「しかし隊長!!犯人が化けているという可能性もあります。油断しては危険です!!」


 ガルマンが隊長に反論する。


 ガルマンよ,上司の言うことを聞いて早く剣を降ろして。

怖いから。ちょっとあたってるから。


「ガルマン,君は魔法がかかっているかどうかも見抜けないのか?剣を降ろすんだ。」


 隊長と呼ばれている男性が今度は少し凄みを入れて言うと,ガルマンはやっと私の喉元から剣を降ろし腰にある鞘に戻す。


 あー怖かった。


「私の部下がとんだ失礼をして申し訳ありません。悪い奴ではないのですが少し真面目すぎるところがありまして・・・」


 隊長は謝りながら私に深く頭を下げる。


「いえこんなところにいる私も悪いんですから気にしないでください。」


 その行動につられ私も頭を下げる。


こんなとこってどこか分からないけどね。


「私はアストリエル王国第32中隊,隊長クイード・エルカーノと申します。クイードとお呼びください。申し訳ありませんがお名前をうかがってもよろしいですか?」


この人礼儀正しいなー,まるで私みたい。


『どの口が言ってる?』


 うるさい,ヒトダマ。言ってないし,思ってただけだし。


「あっ櫛宮海里です。」


 礼儀正しく生きている私は自己紹介をし返す。


「クシミヤ・カイリ?珍しいお名前ですね。なんとお呼びしたら?」


「カイリでいいですよ。」


 友達だった人は皆カイリって呼んでいたので,櫛宮と呼ばれるのは慣れてないのだ。最近どっちの名前も言われた記憶ないけどね。


「ではカイリさん,こんなところでいったいなにを?」


やっぱ聞かれるのか。なんて言えばいいの?異世界からワープしました?


「道に迷ったんです。だからここがどこなのかさっぱりで・・・。」


 さっきとくいちがうこと言ってまた,ガルマン?とかいう人に剣を突き付けられたらいやなので嘘を付き通すことにした。


「そうですか。どこの町から来たんですか?アルビヤですか?」


 アルビヤってどこ?

とりあえずそうですっていっとこうか。


「そ,そうです,そのアルビヤです。」


『アルビヤ?そんな町あったか?』


 アルが疑問に思っているみたいだけど,気にしないでいいか。


「わかりました。ちょっと失礼します。」


そう言ってクイードさんがイヤリングに手をやるとイヤリングがぼんやりと光だした。


「こちらクイード,山中で民間人の少女を保護,これより本部に帰還する。」


 誰に言ってるの?私じゃないよね?


「あれなに?」


 クイードさんが使っているものを指差す。


『さぁ。』


「なんで知らないのよ あんたすごい魔術士じゃなかったの?」


『いや、たぶん念話系の魔法を魔水晶ラクリマに定在化させたものだろう。魔法の定在化は昔から理論だけは完成していたからな,誰かが実用化に成功したんだろ。』


 ちっともわかりません。底在化ってなに?


「というと?」


『だからあれで離れたとこと会話できるってことだ。』


「なるほど携帯の役割をはたしてるのね。」


「どうかしましたか?」


 いつのまにか連絡を終えていたクイードさんが近くまで来ていた。


「いやっなんでもないです。」


「カイリさん,ここは危険ですので麓の本部まで下ります。歩けますか?」


 クイードさんは手を差し伸べる。


ずいぶん休憩したがまだ私の足は回復していない。


「いやーちょっとムリっぽいですねー」


 全然力が入らない。


「わかりました。」


 するとクイードさんは私をいわゆるお姫様抱っこした。


「え?あ,あのっ,ちょっと。」


 いきなりの大胆な行動に顔が真っ赤になる。

 

 お姫様抱っこなんてやられるのは生まれて初めてだ。

断じて体重が重いからではない。


「急いでここを離れなくてはならないので嫌でも我慢してください。」


そういってクイードさんは勢いよく走りだす。


嫌ではなくどちらかといえば心地よかった。



ついにまともな人間がでてきました。

五話でやっとっていうのはどうなんですかね(笑)

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