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第四話

「で,アルはなんなの?妖精とか?」


『人間に決まっているだろう。あんなひきこもりな奴らと一緒にするな。』


 アルは心底嫌そうに吐き捨てる。


 ・・・妖精いるんだ,冗談だったのに。

しかもひきこもりなの?妖精って好奇心旺盛って聞いてたのに,イメージが・・・


「だって人間にしてはおかしいでしょ,その姿。」


『俺からしたら魔法知らないってそっちのほうがおかしいがな。』


 そんなにメジャーなの?魔法って?




「でもアルにだけはおかしいって言われたくない。」


 じと目で言うとアルはそっぽ向いてしまった。


『うるさいな,蘇るのは初めてなんだ,仕方ないだろう。まさかこんな形で蘇るとは俺も思わなかったんだ。』


いいわけがましい男は嫌われるよ?


「蘇った?封印とかされてたの?」


『いや死んでた。』


 うわーお,さらりととんでもないことを言ったよ。


「死んでたのにどうやって蘇ったの?それも魔法?」


魂の分裂アルマ・ディヴィジョン封印の器リシピエント・フォーカという魔法でな,全行程を反帰蘇魂という。生前に自ら自分の魂を切り分け箱に入れておくんだ。箱って言っても俺の場合は本だったしなんでもいいんだけどな。そうしておくことでもし本体が死んでしまっても誰かが魂を入れた箱を解き放てば蘇える。』


「じゃあお城の中にあった黒い本がその箱だったんだ。」


 どおりで変な存在感があったのか。


『城?おー忘れてた城の中はどうだった?かなり手間をかけ細部までこだわって作ったんだが。』


 アルが急に嬉々としてきいてくた。夢を見る少年のように目がキラキラしてる。


「作った?あの城も魔法なの?」


『箱を隠すために作ったんだが途中で楽しくなってきてな,つい凝ってしまった。役目を終えると消えるようにしていたのが悔やまれるな。テーマは部下の裏切りにあい皆殺しにされた王族だ,すごかっただろ?』


 ホントに自分の宝物を見せびらかし自慢している少年にしか見えない。


 まぁたしかにリアルだったけど・・・

あのぐちゃぐちゃにされた家具とか写真も全部偽物か,まんまとしてやられたって感じで腹立つなー。



「はいはいすごかったすごかった。」

 だまされたのが悔しかったので適当に感想を言う。


『なんだその投げやりな感想は。』


「だってどうでもいいし。」


『まったく,箱の隠し場所で一番時間かけて作ったというのに・・・』


 こいつ・・・暇だったのかな?


ん?ということは?


「一番時間をかけたっていうことは箱って何個もあるの?」


『あぁ,俺もあと三つぐらいつくってはずだ。でも同時期に蘇ることはできないからもうただの箱だな。』


「じゃ,じゃあ何度でも蘇れるってこと?」


『まぁ箱が残ってればな。』


 死んでも何度でも蘇るとかどっかの魔王ですか。

「・・・なんか魔王みたい。」


 正直に感想を言うとアルはあきれ顔でいった。


『馬鹿言うな俺は生前使えぬ魔法はなかったほどの魔術士だったんだぞ。皆から尊敬されあれ教えてくれこれ教えてくれと魔法を聞きに来る魔術士が後を絶たなかったほどだ。』


 絶対嘘だけどそういうことにしておいてやるか,悪いやつにはみえないし。

問い詰めてまた機嫌悪くなってもめんどうだし。







「魔法かー,私も使ってみたいなー。やっぱ勉強とかしないと使えないの?」


 アルの話も一段落したのでちょっと聞いてみた。

やっぱり男だろうと女だろうと魔法には憧れるものだ。あるんならやっぱ使ってみたい。



『そりゃそうに決まってるだろ,魔法は使えるまでが一番大変なんだ。でも,カイリは俺と契約したから俺の使える魔法は全部使えるはずだぞ。』


「ほんと?」


 左手の手の甲の刺青をみつめる。


 やったー,めっちゃテンションあがってきた。異世界きて初めてワクワクする。





「じゃあさっそく使ってみようかな,どうすればいいの?」


 その辺の木の棒を拾いとりあえずマンガとかの見よう見まねで振ってみる。

当然だけど何も起きない。


『まぁまて,呪文を唱えないと魔法は使えない。ちゃんと教えてやるからあわてるな。それに初めて魔法使うんだろ?しょぼいの使うよりどうせならド派手にいこうじゃないか,ククク。』


 アルが不敵な笑みを浮かべている。

こいつやっぱり悪かったんじゃないかな?


『たしかこっちのほうにいい場所があったはずだ,ついてこい。』


 アルが先導して歩き出す。

間違えた,飛んでいく。










「ねぇ,本が言ってた器っていうのは何なの?」


 アルについていきながら聞いてみる。

智がなにかはわかったけど器がどういことなのかについてはまだ何にもわかってない。


『そのままの意味ぞ。魔法の知識を与える代わりに魂を入れる器になってもらうんだ。』


「魂の器?」


『そうだ,まぁ器って言ってもこの姿を保つための魔力を供給してもらってるだけだからな,カイリの魔力量ならたいして問題にならんだろう。おっ,着いたぞ,ここだ』



 魔力量ってなんだろうな?その名の通りでいいのかな?と思いつつアルが示したところに目をやる。

そこから見えたのはのは四方を山で囲まれたに大きな湖だった。

今いる崖の上からでも水が澄んでいるのがわかる。

ずいぶんきれいなところだ。



『どうだいいところだろう,ここの湖はいろんな魚がいて生前はよく釣りしてたんだ。これが入れ食いでな。水は澄んでるし釣れる魚はうまいし言うことないだろ。』


 アルが楽しげに紹介する,思い出の場所なんだ。


「ほんとにきれいね。ねぇ,下におりてもいい?」


 泳いだら気持ちよさそうだな。あ,浮き輪ないから泳げないや。なんせ最大遊泳記録8メートルだからね。


『いや,下にいたら巻き込まれるかもしれんからここにいろ。』


 巻き込まれるってなににだろ?




『さてどれにするかな,なんか希望の種類あるか?』


「希望って言われてもどんなのがあるかさっぱりなんだけど・・・」


『そりゃそうだな,じゃあ勝手に選ぶぞ?』


「うん,お願い。」


 決まるまでこの景色を楽しんでおこう。








『よし,これにするか。』


 やっと決まったのか,けっこう悩んでたな,なんでもいいのに。


『フフフ,衝撃的デビューになるぞ。』


 また不敵な笑いを浮かべている。

大丈夫かな?


「私どうすればいいの?」


『俺の言うとおりにしろ。まず腕を構えろ。』


「わかった,こうでいいの?」

 両手を前につきだす。


『違う。右手はそのままでいいが左手で右の手首を掴め。』


「こう?」


『そうだそれでいい。あそこに小さな小島がみえるか?真ん中のあたりだ。』


 あそこって言われてもアルは指させないからめっちゃわかりにくい。あれかな?

湖の真ん中あたりに何か見える。

小島というよりは湖面にでているただの岩だ。


「みえるけど・・・なんで?」


『いまから使う魔法は目標座標を指定しないと発動しないんだよ。あそこに座標を合わせろ。』


 座標の合わせ方なんか知るわけないっつーの。

構え方も知らなかったのに知るわけないじゃん。


「座標ってどうやって合わせるの?」


『凝視するぐらいでいいぞ。あそこを中心に魔法を展開させるイメージだ。』


 けっこう適当なんだ。







 ふとアルを見るとなんか愁いをおびた目で視界に広がる光景をみている。


「どうしたの?昔を思い出したの?」


『んな分けないだろ。ただこの光景を二度と見れないと思うとなぁ。ここは数少ないお気に入りスポットだったんだ。』


 なんで二度と見れないのかな,いつでも見に来ればいいのに。


『よしっ染みったれていても何にもならんな。カイリ,俺に続いて詠唱しろ。』


「わかった。」


 魔法を使えるのかと考えると胸がドキドキしてきた。

アルが耳元で囁く言葉をそのまま繰り返す。


「術式展開!!」

 

 言葉と同時に右手の前に幾何学的な模様が刻まれた赤茶色の魔法陣が浮かび上がる。


爆鑼ばくらの王よ,契約に従い我が眼に映る物全てを爆塵に包み天の全てを灰に還せ!!」


 詠唱とともに魔法陣が煌々と輝く。




天空の消滅(ルイナ・シアロ)!!!」



 呪文を言い終えると湖の小島が小さな光の球に飲み込まれた。 

その瞬間光が湖やその周りにある山ごと風景を激しい轟音とともに包んだ。
















 爆発で舞い上がった砂煙が収まり始めすこしずつ景色が見えるようになってきた。

私はその光景を見て呆然とした。


『・・・ここまでとはな。』


アルがなにか言ってるが全然頭に入ってこない。 

目の前に広がる光景がさっきまでと違いすぎる。


ここから見えるのは心を奪われるような美しい湖,青々しい山々ではなくなっていた。




どんなに目を凝らしてもそこには生命のかけらも感じることができない荒地だけが広がっていた。



ついに主人公がチートの片鱗を見しましたね。

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