第三話
「あっちょっとどこいくの?」
ドラちゃんは私を降ろすと,すぐに飛びあがりどこかへ飛び去って行った
ちょっと冷たくない?
あんなに懐いてたのに飴一個に対して言うこと聞くのは一回だけってか?
「まったく,ここに人がいるの?」
文句を言うのをやめ辺りを見回すと到着したのは石造りの城みたいなところだった。
「お城だぁ」
・・・なんでジャングルに城?アンコールワット?
それに上から見たときこんな城見えたっけ?
疑問を抱きつつ外観を見てまわる。
城壁は白っぽい石ででき,門にも細かな装飾が施されている。
上手く言えないけどなんかすごい雰囲気がある。
どこかの王族が住んでいたと言われても何の違和感もない。
だが城の上のほうの一部はくずれてるし壁にはびっしりとつたがくっついている。
ずいぶんと手入れはされてないようだ。
城が完全な状態だったときはさぞ美しい城だったに違いない
「ここに誰かいるのかな」
もしかしたら誰かいるかもしれないし入ってみようかな。
ここがどこかも分かるかも・・・
そう思い門の内側に足を進めた
「おっじゃましま~す」
やっぱりどんなときでも礼義は大事だよね。
玄関を超えると大きな広間があった。
エントランスホールかな?
城の中は外よりひどく荒れていた。
テーブルはたたき潰されソファーは切り刻まれカーテンも引き裂かれている。
壁にも大きなひっかき傷みたいなものがいくつもついていた。
「ひどいなぁ,いったいここで何があったのよ。」
床に落ちていた写真立てを拾い上げる。
入っていた写真は人の部分はぐしゃぐしゃに切り刻まれていた。
反乱とかがあったのかな?
ずいぶん前は人が住んでいたみたいね。
ここに住まなくなって10年・・・いやもっとたってるわね。
窓のさっしを指でこするとホコリがかなりつもっていた。
「ドラちゃんめ,今人がいるとこへ連れて行ってほしかったのに。今度見つけたら鱗はいでやる。」
ぐちゃぐちゃに荒らされた部屋を見渡す。
「どうしようかな,ここまで荒れていたら本とか役に立ちそうなものは残ってなさそうだしなぁ。」
まぁもうちょい探してみるか。
木片やガラスの破片を避けながら奥へ進む。
なんにもいる気配がないので全然怖くないな,アハハ。
一階の部屋はどれも同じくらいぐちゃぐちゃにされていて,
役に立ちそうなものは一つもなかった。
「やっぱハズレかなぁ。いてて,くそっ。」
探索中に三回こけた。自分の運動神経のなさをうらむよ。
さっさとでればよかったかなーと後悔しつつ階段をのぼる。
階段にも穴があいていてちょっとおちそうになった。
あぶないなぁもう。
二階についてエントランスホールの真上にあたる中央の部屋にはいってみる。
ドアを開けるとキキィィーと耳に優しくない音が鳴る。
中に入ると日の光が目に入ってきた。
どうやら天井の一部が崩れて日が差し込んでいるようだ。
外からみえたこわれてるところはここだったのか。
崩れた天井が床に散乱していて歩きにくいったらありゃしない。
この部屋もほかの部屋と同じようなものだったが一つだけ違うことがあった。
いやあり得ない光景があった。
部屋の中央にある1つのテーブルが傷一つなくきれいなままあったのだ。
周りのものはぐちゃぐちゃにされているというのに。
「なにこれ?」
近づいてゆくと本当にありえない。
傷1つどころかホコリ1つついてない。
どうなってんの?
その不思議な机の上にこれまた黒い本がおいてあった。
ただの本に見えるけどただならぬ存在感がある。
やばそうだなー。
そう思うのに自然と本に手が伸びる。
本に指がすいよせられ抵抗しようとしても体がまったく言うことを聞かない。
これ・・・やばいんじゃない?
本に触れるとバチッと光がはじけ声が聞こえた。
『待ちわびたぞ。 汝は我が器にふさわしい。
我汝に智を与えよう。 我を受け入れるか?』
耳にではなく頭に直接響くような声。
へ?本がしゃべった?
しかも器ってなに?智?あたまよくしてくれんの?
「受け入れたらどうなるの?」
私は利用規約とかちゃんと見る派だからちゃんと説明してもらわないとね。
『我を受け入れるか?』
・・・無視か。
本のくせに生意気な。
『我を受け入れるか?』
何の説明もしてくれないくせに催促してくる。
せっかちにもほどがあるっつーの。
ちょっとぐらい考えさせてよ。
さーどうしようかな。
嫌な予感ばりばりだけどとりあえずオーケーしとこうかな。
面白そうだしね。
なにより頭がよくなるなら嬉しいことこの上ないし。
「えっと,受け入れます。」
あーいっちゃった。
返事をすると同時に本から黒いもやがでてきてすごい勢いで私を包む。
あ,やっぱりオーケーするんじゃなかったかな。
本日二回目の命の危険。
黒い奔流につつまれ私は意識を失った。
『おい さっさと起きろ。』
聞き覚えのない声が耳元で騒ぐ
「ん~あと五分~」
『いいからさっさと起きろ。』
誰よ私の安眠を邪魔する奴は・・・
「はいはい起きますよ,起きればいいんでしょ。」
なんなのよいったい。
体に鞭を打ち無理やり体を起こす。
「あれ?」
私がいたのは気を失うまでいた城の中ではなく森の中だった。
辺りを見回しても城の影も形もない。
あれ~?もしかしてまたワープしたのかなぁ?
しかもどんなに探しても人の姿がない。
もしかしてさっきの声の幻聴?
『おい,どこを見ている。こっちだこっち。』
声の出どころを便りに声の主を探す。
なんていったらいいんだろ。
そこにいたのは顔があるヒトダマだった。
なにこれ?
『ふふふ驚いているか,俺のこの姿に。まぁそれも当然・・・』
「・・・可愛い。」
『は?』
デフォルメされた顔がソフトボールサイズにおさまってフヨフヨと浮いている。
一般的な感覚から見たらそんな風に感じないかもしれないけどそんなもん持ってない私にはツボだった。
『か,可愛いだと!?もっと良く見ろ,この姿のどこが可愛いと言うんだ。ヒトダマだぞ?』
怒ってる表情も愛らしい。
あーもう我慢できない。
『なっ!?何をするやめろっ。』
ついぎゅーっと抱きしめてしまう。
感触もぬいぐるみみたいにやわらかくて気持ちいい。
「はぁ♡」
癒されるなぁ。
『おいっこらっ放せっ。俺を誰だと思っている。』
可愛いぬいぐるみでしょ?
『放せと言ってるのがわからんのかー!!!』
『お,落ちついたか?』
ヒトダマくんは解放してあげると私からすぐに距離をとった。
抱きしめられるのがよっぽど嫌だったのか,息も絶え絶えで顔色も悪そうだ。
やりすぎちゃったかな?
「ごめん,我慢できなくてつい。」
『ついじゃない!!まったくこの俺をアルバート・ゲインだとしっての狼藉か?』
謝ってもまだ怒っている。
当たり前か。
さてと,そろそろふざけるのやめてまじめにいこうか。
「で,君誰なの?」
『今も言っただろ。アルバート・ゲインだ,アルと呼んでくれ。お前の事はカイリと呼べばいいか?』
「いいけど・・・ なんで私の名前知ってんの?言ったっけ?」
『なに言ってる,俺と契約を交わしただろ?左手を見てみろ契約の証しの刺青があるはずだ。』
契約交わしたら名前知られるの?
左手には確かに刺青がはしっていた。
おーかっこいい。
「確かにあるけど 契約って何?」
『黒い本から言われなかったのか?』
「器にふさわしいとか智を与えようとかいってたけど詳しいことはなんにも。なんの説明もしてくれなかったし。」
『自動対応にしたのは失敗だったか。やっぱりあの核の術式を変えて・・・』
なにやらぶつくさ言ってる,考えるのはちゃんと説明してからにしてほしいな。
冷静に考えるとヒトダマっておかしくない?
今まで可愛いから気にならなかったけど一度気にするとどんどん気になってきた。
「ねぇ。」
『なんだ?今忙しいんだが・・・』
「そのヒトダマってどうなってるの?」
『あ?これか?魔法に決まってんだろ。わかりきったこと聞くな。』
さも当然のようにさらりと言う。
・・・魔法?
いやわかってたけどね。
ドラゴンいるし魔法があってもおかしくないなーとは考えてたけどね。
やっぱとりあえず叫ばないと気がすまない。
せーの
「ええええぇぇぇぇ!!!」