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第十二話

遅くなりましたっ。


新学期が始まってしまったのでこれからもこんなことが多々あるかもしれません。


一応3日ペースを目指します。

『いい加減起きろよ、もう昼だぞ。図書館行ってくれるんじゃなかったのかよ。』


「もう昼?いつのまに・・・」


アルに起こされ,カーテンを開けると光が燦々と降り注いでいた。まぶしー

さっき起きたときはまだ薄暗かったのにな。



昨日図書館にいってあげるって言ったのを思い出し,アルに急かされながら身支度を整え、階段を降りる。

服は昨日買ったうちの一つで、動きやすいスポーティーなやつだ。制服はおばさんが洗ってくれている。



下に降りるとおばさんに呆れた顔で朝ご飯は残ってないと言われた。

朝昼兼で屋台で買い食いしていくことにして宿を出る。

さぁ屋台完食レースの続きだ。







「これが図書館か。」


屋台で買った烏賊っぽい生き物の串を食べながら建物を見上げる。

外身は図書館というよりちっちゃな美術館みたいな感じ。

入場料とかはいらなくて簡単に入ることができた。


ただでこんなものつくるなんてここの領主はどんだけ金持ちなの?

貴族ってそんなに儲かるのかな?



中はまるっきり普通の図書館だった。

日本よりこっちのほうが快適そうなんだけど。

フカフカしそうなソファーもあるし。


本の数自体はそんなに多くない、というか図書館というには少ないぐらいで、学校の図書室と図書館の間ぐらいの数だ。


思ったより人も多い。

金持ちそうな人も、そうでなさそうな人もいるし、私ぐらいの歳の人も何人かいる。

この世界の識字率はかなり高いのかな?




中に入るやいなやアルが超特急で棚の方へ飛んでいった。

どんだけ~

次からはもっと早く来てあげようと強く心に誓う私であった・・・なんてね。



さて、とりあえず適当に読んでみるか。


一番近くにあった本棚から適当に一冊とってソファーに腰掛け本を開く。

やっぱフカフカだ。



そこで私は重大な事に気が付いた。

この世界は日本でもなければ、地球上のどの国でもない。

そして生息している動物も植物も違う。

発達している技術も科学ではなく魔法だ。


ここまで世界観の違う世界でこれが同じなわけがない。


そんなこと少し考えればわかることだ。



そう私は・・・・字が読めねぇ~~








衝撃的でもなんでもない事実をいまさら発見。

そういえば今まで字を見たことなかったよ。


言葉が通じてるから字が読めないなんて考えもしなかった。

てかこの字何? 

全部が直線の組み合わせでつくられていて,ひらがなでもなければ漢字でもアルファベットでもない。つーか地球の言語のどれとも似てないんじゃないかな?


まぁたとえどこかの言語と似ていたとしても読めないけどね。

日本語以外からっきしだから。

英語とか英検4級のレベルだから。






私ここにいる意味ないなー,とうなだれているとアルがこの世の終わりみたいな顔して戻ってきた。

さっきまでのうざいぐらいのテンションはどうしたの?


『どうしたカイリ?元気がないな。』


(あんたこそさっきとテンション違いすぎるよ、なにかあったの?)


『何もねぇからこんななってんだよ。ここ魔法書がほとんどねぇんだよ、かろうじてあるのも読んだことあるやつばっかりだしよ。そっちはどうしたんだ?』


(私はもっと根本的な問題でさー

・・・字が読めないのよ。アハハ・・・)


『そうかそれは大変だな・・・』


『「はぁ~」』


二人揃って深くため息をつく。

私はこれから読めない文字の中で暮らしていく不安で。

アルは満たされなかった知識欲で。


・・・やってられないよ,ホント。





(そだ、アルが読んでよ。)


私が字を読めなくても言葉は通じるんだし、アルの声は私にしか聞こえないから周りの人の迷惑にもならないし。

名案じゃない?


『拒否する。』


(えーなんでよ?)


『さっきも言ったろ?どれも読んだことあるんだよ。内容覚えてる本を人に読んで聞かせるなんてバカらしくてやってられるか。』


(へーそんなこと言うんだ、じゃあアルが読みたい本あっても私何もしないからね。)


アルは人間を通り抜けることはできても、昨日袋を通り抜けれなかったようにほとんどの物質を通り抜けることはできない。

それに手が無いから自力で本をめくって読むことはできない。

つまり読みたい本がある場合私の手を借りるしかないのだ。

あれだけ本読みたがっていたんだからこれは効くはずだ。


『くっ!!俺の唯一の生き甲斐を人質にとるとは・・・この外道がっ!!』


アルはもはや勝ち目はないことをさとったのか負け惜しみを吐く。

どんなに言われても負け犬の遠吠えにしか聞こえないよ~だ。


しかも外道はあんたでしょ。

それに人質じゃないし。


(どーすんの?私はどっちでもいいよ、アルが選んで。私に読み聞かせするか、二度と本を読まないか。)


『ちっ、わかったよ、読んでやるよ。で、どれ読めばいいんだ?』


(タイトルも読めないからアルが選んでよ。)


『選ぶのも俺かよ。』







結局読んでもらったのは二冊。

一冊はアリエストル王国の創立史。

これはアリエストル王国のできかたとか、その後の歴史とかをめんどくさい言い回しで小難しく書いてあって、全然面白くなくて途中で眠ってしまった。

そしたらアルが『せっかく読んでやってるのに寝るとは何事だー!!』ってぶちギレてなだめるのが大変だった。

でも悪いのはそんな眠くなる本選んだアルだと思うんだよね~。


そんでもう一冊は初級魔法書。

どんな魔術士でも最初はこの本から入るほど有名な本らしい。

これはゲームの攻略本見てるみたいで面白かった。

魔法のでき方とか使用法とかを分かりやすく書いてあったし,アルが,ここはこうだ,とか,ここはこっちのほうがいい,とかいろいろアルの知識も合わせて読んでくれたので理解もしやすかった。

ただ魔法の入門書とも呼ばれているぐらい基本の本なのでそんなに深くは書いてなくて新しい魔法を覚える事はできなかった。


これにたいして文句があるとすれば,アルはほとんど丸覚えしていてほとんど見ずに読んでいたことぐらい。

ちょっとひいた。












「うわー、もう真っ暗じゃん。」


図書館を出ると日はもう完全に落ちていて真っ暗になっていて、街灯の灯りが通りを照らしていた。

たった二冊読んだだけなのにここまで日が落ちるか~

やっぱり音読は時間くうな~

来るのも遅かったしな~


『あ~疲れた、喉が痛ぇよ。もう絶対やらねぇからな。』


隣でアルがぐちぐちと文句をたれる。

喉ないから気のせいだと思うよ。


「そんなに嫌なら文字教えてよ、そしたらいちいちアルに聞かなくてもわかるしさ。」


読み書きできたほうが今後ともなにかと便利になるだろうし。


『ん~それもめんどくせぇが・・・毎回読んでやるよりましか。わかった教えてやるよ。』


よしっ、これで言語問題解決!!







「あーお腹減った、早く帰ってオードさんのご飯食べよー。」


『お前はホント食い意地ばっかりはってるな、本当は男じゃねぇのか?』


「何?確かめさせろとでもいうわけ?このエロダマ!!

そういえば昨日も風呂にまでついてこようとしてたし。」


『なっ!?昨日は早く図書館に行きたくてお前を説得しようとしただけだ!!お前の体なんかに興味あるか!!』


「・・・そこまで言われると傷つくって。」


『知らねぇよそんなこと。おっ、こっち通ったら早ぇんじゃねーか?』


アルが示したのは灯りがほとんど入らない裏路地。

日本だったら不良とかがたむろしてそうな路地だ。

なんか怖っ


「危なくない?街灯もないし暗いしさ。」


とか言っても行くけどね。

もう限界なんだよ。








 

うわーホントに暗い。

路地はかすかに足元が見えるほどにしか灯りが入ってこず,危険な雰囲気がある。

漫画とかだったらここで不審者が後ろからナイフを突き付けられたりするけど現実には・・・


「動くなよ、おとなしくしてれば手荒なこたぁしねぇよ。」


はいきた~

思った通りのことが現実に~

最近こんな悪い予感がよく当たるな~

もしかして予知能力ついてるんじゃないかな?


「おとなしく金だしな、たんまり持ってんだろ?」


金目当てか。

昨日金貨を見せびらかしたのが悪かったか。

もとをたどれば金貨しか持ってないアルが原因じゃん。


『お前のせいだ,みたいな目でこっち見んな。』




どーしよーかなー

逃げるのはそう難しくはないだろうけど,ついてこられて宿に迷惑をかけるのはさけたい。ルーちゃんもいるし危険だ。


『めんどくせぇなこの男。ぶっ殺すか?』


(なんでそう極端なのよ?もっと平和的解決を求めるよ。)


『平和的か,適当に魔法撃てば逃げると思うぜ?』


(それじゃ目立つじゃん。ここで派手な事したら私が犯人だと思われるって。昨日のことで王国軍が私に目をつけてるんだし。)


『手遅れだと思うがな。

まぁお前のワガママに答えて目立たずに平和的解決ができる魔法を教えてやるよ。』


(一応聞くけど何の魔法?)


『肉体強化系,拳で解決するのが一番平和的だ。国が証明してる。』


こんなときに政治的皮肉いらないよ。


まぁ・・・仕方ないか。

肉体強化系なら目立たないだろうし。

よしいくぞっ!!


(ってどうやって発動させんの?この状態じゃ詠唱できないじゃん)


詠唱なんかしたら絶対刺されるよ。


『・・・なんとかしろ。そこまでは面倒みきれん。』


えーそこなげやりすぎない?


「おいビビってねぇでさっさと金だせよ!! これが見えねぇのか?」


まったく反応を見せない私にいらだった男がナイフを首に近付けてくる。

仕方ない・・・対痴漢用の必殺技を使うか。


あ,その前に・・・


「今放せば許してあげるけどどうする?」


報復するときは一度忠告するのが私のルール。

ちなみにこれでやめられたことは一度もない。

意味ないけど一応きいとかないとね。


「あ?何言ってんだ?」


バカ言ってんじゃねぇよ,みたいな顔で笑う。

ちゃんと忠告したからね?どうなったも知らないよ?


油断しきった男の足の甲をおもいっきりかかとで踏み抜く。


「ぐあっ」


ゴキッといい音が足元から聞こえ,思ってもない反撃にあい拘束していた男の腕が緩む。

かなりいい音がしたから骨までいってるかも知れないな。


念のために言っとくけど普通の痴漢にはここまでしないからね。

そこまで鬼じゃないからね。


男が呻いてるそのすきに距離を取り早口で詠唱する。


「躯瞳の公爵よ!!契約に従い我が肉体を祝福し我が肉体に力を与えよ!!」


祝福されし躯ベンディト・ハーゴ・クエーポ!!」


一瞬体が光に包まれ,体に力が漲る。


(おー体が軽い。これならなんとかいけそう。)


『これは運動能力を強化するだけだからな,殴られたりするといつもぐらい痛ぇから気を付けろよ。』


(わかったわかった。)


アルに諸注意を受けたがテンションがあがっちゃって頭に入ってこない。


「このガキがっ!!」


足の痛みから復活した男が怒りをあらわにし,怒りのままにナイフをつきだしてくる。

怒りで攻撃が直線的になっているから避けやすい。


突き出された腕をいなし,足をかけ,男のバランスをくずす。

前のめりになり,勢いにのった男のあごをおもいっきり掌底で撃ちぬく。


強化された一撃は男の意識を打ち砕き男はその場に崩れ落ちた。


一撃必殺!!


感触から察するにたぶん顎は砕けているだろう。

やるまえに忠告する理由の一つがこれで,ついやりすぎちゃうんだよね。

前は肉体的にじゃなく,精神的・社会的にだけどね。


いやーでもあそこまでうまく決まると業名をつけたいな。

爆裂粉砕掌とかどうかな?



・・・厨二すぎるね

やめとこ

魔法のせいでテンションがおかしくなってるよ。





『・・・なかなかやるじゃねぇか』


ほんとに驚いたのかアルが素直に感嘆していた。


「いまの?たいしたことないよ,昔護身術として教わっただけ。」


型は覚えれたんだけど実際に使うには筋力がなくて使えなかったけどね。

魔法のおかげでなんとか実戦レベルになったって感じ。




『つけられていたのは気づいてたが,まさか襲ってくるとは思わなくてどうしようか焦ったんだが,ここまできれいに叩き潰すとはな。』


「え?気付いてたの?なら言ってよ~」


言ってくれたら遠回りしてでも人通りがあるとこ通ったのに。


 ちなみにこのあとは誰にも襲われることなく宿に戻って晩御飯にありつくことができた。


「・・・ねぇ,体がすごい痛いんだけど・・・」


襲われた次の日私はすごい全身筋肉痛に襲われていた。

ホント尋常じゃないぐらい。


『副作用だな,肉体強化系魔法は使った後副作用がくるんだ。いっておくがそれが副作用が一番軽いやつだからな。俺は悪くねぇぞ。』


かなりひどい筋肉痛なんだけどこれで一番軽いやつか。

この系統の魔法は便利だけどあんまり多用できないなー。

体がもたないわ。


とりあえず今日は筋肉痛が治るまで寝とこっ。


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