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第十話


「ごめんくださ~い。」


「こっちですよ。」


門にむかって大きな声で呼びかけると、返事は門からではなく門の隣にある普通サイズの扉から来た。


こんなところに扉があったとは・・・気付かなかった

門が大きくてやたらと小さく感じるせいからかな。


こっちこっち、と手招きしている人の方へ近づいていくと、この人はクイードさん達の鎧と大体の部分が同じだけどちょっとちがう鎧を着ているのがわかった。

クイードさんがこの町には王国軍の駐在所があるといっていたので、この人も王国軍なんだろうけどかなり鎧の部分が省かれ動きやすそうなデザインになっている。

門番をしているんだし戦うためというよりも制服的な意味合いが強いのだろう。


「旅の方ですか?」


「そうです、町に入りたいんですけど。」


「ではこちらへどうぞ。」


示されたのはこの人がでてきた扉だった。

大きい門は開かないみたいだ。


門がぐわぁぁーと開いて町が見えるのを期待してたんだけどな。

ちょっと残念。










扉をくぐると小さな部屋があった。

部屋には小さめの机と数脚の椅子と紙がいろいろ入っている棚ぐらいしかなかった。

ここは安全な人かどうか審査する部屋なのだろう。


私が示された椅子に座り、門兵が棚から書類を取り出し私の向いに座る。


「では、」


こほん、と咳こみ書類を読み上げる。


「本日はアルビヤによくいらっしゃいました。いまからいくつかの質問に答えていただきます。質問には正直にお答えください。あなたのお答えが偽りであると明らかになった場合、即刻退去もしくは拘束に至る可能性があります。以上のことを頭に入れ質問に偽りなく答えることを英霊王に誓いますか?」


これ私大丈夫かな?


まぁアルに聞きながら答えればなんとかなるか。


「誓います。」


「ではお名前,所属ギルド,商隊の構成人数,この町に来た目的をお答えください。」




・・・いきなり答えられないのがきたよ。ギルド?人数?何の話?


「あの私1人で来たんですけど・・・」


「お一人で?」


ちょっと驚いたように見える。


「はい一人でですけど・・・旅人ってそんなに珍しいですか?」


旅の人ってそんなに珍しいのかな?

こういう雰囲気の世界では働きもしないで旅ばっかしてる人しか見たことないんだけど。

まぁ全部マンガの話だけど。

職種選択ミスった?


「いえ旅人は少なくはありませんが一人でこちらまで来る人は珍しいですね。この町と他の町の間には猛獣が出やすいので熟練の旅人でもパーティーを組んでいらっしゃいます。あなたぐらいの歳の旅人なら尚更です。」


なるほど旅人じゃなくて1人が珍しいのか。


「では改めてお名前とこの町に来た目的をお答えください。」


「櫛宮海里で,目的は滞在です。」


その後も次々と質問された。

出身地とかいろいろ聞かれたけど答えられないのでアルに言われたまま適当に答えた。

ちょっとぐらい嘘でもいいよね、この世界にきたばっかだし英霊王も許してくれるでしょ。


「ご協力ありがとうございました。では今から滞在許可証を発行しますので少々あちらでお待ちください。」





待合室みたいなところに通される。

中には私以外いなかったのでアルと話をする。

町入ったらアルと話すのは難しそうだしいまのうちに疑問をかたしておこう。


「ねぇなんであの人私が商隊の人って思ったの?1人だったのにさぁ。」


『この手続きは時間がかかるからな、ほとんどの商隊が近くまできたら隊の1人だけを先にいかせて手続きをさせるんだ。そしたら着いたらすぐに入れるだろ。お前もその1人だと思ったんだろうな。それに旅人っつーのは町に移動するときはだいたい商隊の護衛もかねて行くんだ、報酬ももらえるしな。』


「ふーん報酬ね~。そういや町に入るのってお金いるの?」


『入るときにはいらん、町からでるときに滞在日数分の金をまとめて払うんだ。』


後払い式か、ということは町の出入りにはかなり厳重な警備をしているのだろう。

じゃないと滞在料を踏み倒すために逃げる人が後を絶たない。

さっきも奥の方にちらっと他の門兵が見えたしね。







「おまたせしました。」


いろいろ考えていると門兵が待合室に入ってきた。


「こちらが一週間の滞在許可証になります。」


差し出されたカードを受け取る。

カードは金属の板でできており魔法陣によくにている模様が刻まれてあった。

魔法がかかっているのだろう。居場所探知とかの魔法かな?

それなら滞在料を踏み倒すこともできないだろうし。


「滞在期間を延長したい場合はこちらへ再びお越しください。許可証をなくした場合は一度町から出ていただきますのでご注意ください。」


「はいわかりました。きをつけます。」


入ってきた方とは逆の方にあるドアが開かれる。


「ではアルビヤでの滞在を心までお楽しみください。」


いよいよ異世界初の町入りだ。









扉を通り町に出る。

目の前に広がる景色を目を凝らし、そこでまず感じたのが既視感。

そういやさっき上から見たんだった~

失敗した~



『やっと町に入れたな、さっそくいろいろみてまわろうぜ。俺が死んでる間にどう変わってるか気になってんだ。』


私が打ちひしがれているのにアルはまったく気にせず盛り上がっている。


「まずは拠点の確保。宿屋の場所も探さなきゃならないんだし、散策はその後よ。」


『宿屋なんてどこでもいいだろ、どこだろうが同じだ。』


そりゃアルは宿屋だろうが野宿だろうが同じでしょうよ。


『だいたい宿屋つっても金持ってんのか?』


「・・・言われてみれば持ってないわ。」


ピーンチ

宿屋どころか滞在料も払えないじゃん。


「アル持ってないの?・・・持ってるわけないか。」


だってヒトダマだし実体ないし。


『ばかにすんな、金ぐらいいくらでも持ってるっつーの。ちょっとこっちこい。』







大通りからはずれて脇にある人気のない通路に入る。


「ここにあるの?」


『ちげぇよ、亜空間金庫に入ってんだ。あんな人通りの多いところで金庫開くわけにはいかねぇからここにきただけだ。いいから黙って言われたとおりにしろ。』


「はいはい。」


言われたとおりに木の棒で地面に魔方陣を書いていく。

金庫開くにはいちいち魔方陣を描かないといけないらしい。

めんどくさいなーと思うけど、活動資金のためにやらないわけにはいかないから描いていくんだけど。



まぁ複雑な模様の魔方陣を口の説明だけで分かるわけもなく。


『だからそこは三角じゃなくて四角だっていってんだろ!!』


「どこのこと言ってんのよ、ここ?」


『そこじゃねぇ!!そこはそれでいいんだよ、その隣りだよ!!バカかお前は!!』


「うるさいな~、こんな複雑なの口の説明だけで分かるわけないじゃん。これで分かると思ってるんだったらアルのほうがバカじゃん。バ~カバ~カ!!」


『くっ、お前のために教えてやってのになんでそこまで言われなきゃいけねぇんだ!!』


「何言ってんの?私が死んだらアルも死ぬのよ?つまりアルが私のために何かしてもそれは自分のためにしたことと同じ。つまりそんなにえらそげにするのは間違ってんの。わかった?」


『なんだと~』


「なによ」


結局30分ぐらいしてやっと魔方陣を描きあげた。

引き出すだけでこんなに体力を使うとは・・・

大抵はアルとの喧嘩での消費なんだけど。



接続アクセス


発動鍵を言うと魔法陣から立体映像が映し出される。

王冠と剣にバッテンがついたようなマークだ。


ちなみに発動鍵っていうのは、こうやって特別な魔方陣を発動させるための始動語のこと。


「ローレンス大陸ヴァイラス中立魔法銀行へようこソ。パスワードを入力してくださイ。」


マークから合成されたような音声が聞こえ、目の前に数字パネルが映写される。


「パスワードを入力してくださいだって。」


『パスワードは3255589647855568だ。』




・・・




「ごめんもっかいいって。」


5桁目までしか聞きとれなかった。

何桁あったの今?


『ったく、今度はゆっくり言うからちゃんと打ち込めよ。32555・・・』


16桁のパスワードって多いいよ、多すぎるよ。

全部で10の16乗通りもあるんだよ。

適当に打っても絶対当たらないね。

16桁全部打ち込むとパネルが消えさっきのマークに戻りまた合成音声が聞こえる


「アルバート・ゲイン様ですネ。ただいま口座を開きますので少々お待ちくださイ。」


声が聞こえた後マークが消えそこの空間に穴が開いた。

どうみてもダークホール、どうみても金庫には見えない。


「なにこれ?これが金庫?」


『そうだ、亜空間に保存されてんだ。中に金貨が入ってるだろ?』


恐る恐る覗き込むとなかにはキラキラと光る大量の金貨があった。

金貨の他にも拳ぐらい大きな宝石や細かい装飾が施された黒儀式に使われそうな髑髏も見える。

とりあえず今必要なのはお金だけだから気にするのは今度にしよう。


「どんぐらいあったらいいの?」


『さぁ宿屋に泊ったことないから相場がわからん。2,3枚あったら大丈夫だと思うが・・・』


後で聞いた話なのだがアルはどっかで泊らないといけないときは宿屋には行かず自分で建物を作ってそこで寝ていたらしい。

森の中にあった城みたいなやつをつくって。

いちいちそんなことして馬鹿なのかな?


念のために金貨を5,6枚とって金庫を閉じる。

これで活動資金は大丈夫っと。








宿屋を探しに町を歩き回る。

どの辺に宿屋があるのかさっぱりなので、その辺にいたやさしそうな町の人に聞き込みをする。

その人が言うには宿屋はモンカティーニ・テルメっていうとこがお勧めらしいので宿の場所を聞いてそこへ向かう。

目印は大きな煙突だとさ。


「いらっしゃい。」


モンカティーニ・テルメで出迎えてくれたのは恰幅のいいエプロンをつけたおばちゃんだった。

これこそおばちゃんだというぐらい、おばちゃん中のおばちゃんだった。

エプロンを豹柄に変えてパンチパーマをかけたら大阪にいても何もおかしくないぐらい。

そんだけやれば誰でもか。


「あの数日泊りたいんですけどあいてますか?」


「あんた金はあるのかい?」


ジロリと睨みながらきいてくる。

大阪と違い人情は薄いのか~

まぁ私でも手ぶらな未成年なんかひやかしだと思うだろうけど。


「えっとこれでたりますか?」


ポッケからさっきとりだした金貨を一枚とりだしおばちゃんに渡す。

すると目をまるくして金貨を掲げてみたりなでてみたりして金貨と私を交互に見た。

足りなかったのかな?

もう一枚おばちゃんの手にのせようとすると、


「あんたちょっとこっちに来なさい。」


「ふぇ?」


すごい形相で首根っこつかまれて宿の奥へ連れ込まれる。

なんでー?私何したの?



「あんたこんな大金をこんなところで出すんじゃないよ。ここは治安が悪いわけじゃないけど悪い奴はいるんだからね。」


大金?これが?

アルが金貨しか持ってなかったからこれが基本通貨だと思ってたけど違うのか。


話を聞くところによると金貨一枚あれば一般市民なら一年は遊んで暮らせるらしい。

たしかにそんな額を持ってフラフラしている未成年なら狙われるだろうね。


「わかったならさっさとしまいな。まったく、心臓に悪いよ。」


「私これしか持ってないんですけど、これじゃ支払いできないんですか?」


「使えないってわけじゃないけどね、ウチにある金を全部かき集めてもお釣りが用意できないんだよ。」


「お釣りは後でいいですからもらっといてください。ここは先払いなんでしょ?」


あんなに金貨があるんだし一枚ぐらいどうってことないしね。


『お前あれが俺の金だということを忘れてるな?』


(いいじゃんあんたもう使うことないんだし。)


「でもねぇ・・・」


おばさんはまだ渋ってる

一年遊んで暮らせるってことはだいたい3百~4百万くらいだから、一宿1万で計算しても一年分だもんね。


「おばさんお釣りのことは後でいいから部屋に案内してほしいんだけど・・・」


「うぅ~、わかったよ。ウチの宿で精一杯のもてなしをしてやるから覚悟するんだね。部屋はこっちだよ、ついてきな。」


でもこのおばちゃんいい人だな。

金貨もだまくらかすこともできたのにいろいろ注意もしてくれるし。

こっちきてからいい人としかあってないなぁ。

あっアルは今人じゃないからノーカウントで。


案内してくれたのは二階の部屋で何ら変わっているところはなくまぁ普通。

たいして広くもないし,ふかふかのベッドがあるわけでもない。

この宿の何がそんなにオススメなんだろ?

確かにおばちゃんはいい人だけどさー


『おい,宿も決まったしよ~』


「わかってるよ。よし町へ行こうか。」


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