第3話 勇者誕生
その日、いつもと違う通知が届いた。
《重要なお知らせがあります》
※至急ご確認ください
「なんだ?俺、なにかしちゃったのか?」
ユウトは画面を開いた。
表示されたのは、これまでに見たことのない進捗画面だった。
継続遂行率。
正確性。
社会的貢献度。
信用履歴の一貫性。
すべての数値が、最大値に近づいていた。
画面が一瞬、暗転した。
《システムメッセージ》
音もなく、文字が浮かび上がる。
全履歴照合中……
照合完了
進捗バーが、ゆっくりと満ちていく。
条件達成
《特別称号を付与します》
次の瞬間、
画面が金色に染まった。
これまで見たことのない演出だった。
光の粒子が流れ、中央に大きな文字が浮かび上がった。
《称号付与》
その下に説明文が表示される。
あなたは長期間にわたり
社会的に必要なクエストを継続的に遂行しました
信用履歴に重大な欠損はなく
評価の変動も極めて安定しています
よって、あなたを制度上の理想モデルと認定します
さらに一行追加される。
《称号:勇者 認定》
同時に、周囲の掲示板が一斉に更新された。
過剰な光の粒子が画面を流れ、背景が切り替わる。
画面が切り替わり、ユウトのプロフィールに項目が追加された。
称号:勇者
表示優先度:最上位
クエスト提示制限:解除
外部公開も自動設定され、名前がランキングに表示される。
掲示板やSNSで称賛が広がる。
「初の勇者だ!」
「偉業だ!ステータスカンストだ!」
通知音が鳴り止まない。
肉体系の仕事における継続性。
頭脳系の仕事における正確性。
他者からの評価履歴における一貫性。
社会貢献度の定量化。
全てを証明された者だけが、勇者の称号を得られる。
胸の奥が、強く打たれた。
――ああ、やっとここまで来た。
この世界に認められた。
これまでのつらさが、すべて正しかったと証明された気がした。
運営からの公式メッセージも表示された。
全条件を満たした労働者が確認されました
以後、当該称号保持者には
高優先度クエストが自動的に割り当てられます
しばらく、ユウトは画面を見つめていた。
称号が、名前の横で眩しく輝いている。
そして改めて自分のステータス画面を開いた。
評価。
履歴。
達成数。
その下に、年齢が表示されていた。
思考が止まった。
休みを削り過酷なクエストをこなしてきた指先。
歳を重ねた自分の身体。
ユウトは、特別な才能を持っていた訳ではない。
能力も、発明も、カリスマ性もなかった。
ただ、どのクエストも断らなかった。
社会的に必要だと判断された仕事を、淡々と、長期間、正確にこなした。
働き続ける者だけに、次のクエストが提示される。
齢六十五。
史上初の《勇者》は、世界のために今日も新しいクエストを受諾する。




