余話:その後の蜀漢
龐統は生き残った。
関羽も、張飛も、生き延びた。
それだけを見れば、
蜀漢の未来は明るく見えたかもしれない。
だが――
国は、人の数で成り立つ。
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益州を得た後、
蜀漢はしばらくの間、安定した。
諸葛亮が内政を支え、
龐統が策を整え、
関羽と張飛が前線を守った。
劉備は皇帝となり、
「桃園の誓い」を果たしたかのように見えた。
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しかし、現実は静かに削れていく。
文官が、足りなかった。
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孫乾が死んだ。
病と過労が重なった、
よくある死だった。
だが、その穴は――
思った以上に深かった。
伊籍、蒋琬、費禕。
優れた者はいた。
だが、数が足りない。
仕事は減らない。
戦がなくても、
国を回すだけで人は要る。
結局、
優秀な者に業務が集中した。
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龐統も、諸葛亮も、
そして彼らを支える中堅層も――
常に追われていた。
「次が育たない」
それが、
最も深刻な問題だった。
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劉禅の教育も、
結果として失敗に終わった。
決して愚かではない。
だが、厳しさを教えきれなかった。
人材不足は、
教育の余裕すら奪う。
これは、
誰か一人の責任ではない。
構造の問題だった。
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呉との戦いでは、
一時、荊州を取り返した。
だが、
維持できなかった。
最終的に保持できたのは、
永安に近い一帯――
零陵、武陵の一部にすぎない。
前線は短くなり、
国もまた、縮んでいった。
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滅亡は、
史実よりも遅れた。
だが、
避けることはできなかった。
人が足りず、
制度が回らず、
次の世代が育たなかった。
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それでも――
関羽と張飛は、
最後まで生き抜いた。
劉備もまた、
義を貫いた。
龐統は、
本来果たせなかった役割を果たした。
諸葛亮は、
できる限りの時間を、
国に捧げた。
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「少しだけ、長く続いた」
それが、
この蜀漢の結末だった。
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そして――
もし、
もっと多くの人材が育っていたなら。
もし、
教育に割ける余裕があったなら。
そんな「もしも」は、
次の世界に託される。




