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第二十一話:検証開始 ― episode 関羽(麦城・呪的逃走)

System log updated.


Verification phase initiated.



検証対象:

関羽(字・雲長)



時は、荊州。


城は囲まれていた。


麦城。



四方を敵に塞がれ、

兵は疲れ切っている。


退路は細く、

援軍は来ない。


関羽は、

それを理解していた。



「ここまでか」


誰に聞かせるでもなく、

そう呟いた。


敗北ではない。

だが、勝利でもない。


ただ――

道を誤った結果だ。



夜。


霧が低く垂れ、

視界は悪い。


関羽は、

わずかな手勢と共に動いた。


生き延びるためではない。


抜けるためだ。



その腰に、

いつもと変わらず下がっているものがあった。


銀の携帯酒筒。


実用一点張りの、

飾り気のない品。



網。


前方に、

それが張られているのに気づいた時、

もう距離はなかった。



止まれば捕まる。

突っ込めば絡め取られる。


判断の猶予は、一瞬。



関羽は、

迷わなかった。



酒筒を、

投げた。



銀が月光を反射し、

音を立てて飛ぶ。


網の一部が、

わずかに持ち上がる。



その一瞬。


関羽は馬腹を蹴り、

身を低くして抜けた。



完全ではない。


肩を擦り、

甲冑が引っかかり、

兵の一人が倒れた。


だが――

抜けた。



背後で、

怒号が上がる。


追撃の声。



関羽は振り返らない。


振り返らず、

ただ前へ進む。



夜が、

彼を飲み込んだ。



数刻後。


関羽は、

川辺で馬を止めた。


息は荒く、

血の匂いが残る。



腰を探る。


酒筒は、

もうない。



「……そうか」


それだけ言って、

関羽は目を閉じた。



英雄は、

死ななかった。


だが、

勝ってもいない。



名誉も、

地位も、

この夜に多くを失った。


残ったのは――

命だけだ。



System log updated.



✔ Survival confirmed


Target: Guan Yu

Status: Alive

Condition: Escape successful

Outcome: Non-victorious survival


(生存確認

対象:関羽

状態:生存

結果:勝利なき生還)



検証は、

まだ終わらない。


次の対象が、

待っている。



―― episode 張飛へ続く。

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