表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/25

第十六話 落鳳坡前夜

益州遠征は、

静かに始まっていた。



戦は、

必ずしも刃から始まるわけではない。


山道の選定。

城への使者。

糧秣の再配分。


そうしたものが積み重なり、

気づけば軍は、

深く益州の内へ入り込んでいた。



拙者は、

前線にはいなかった。


常に本営寄りで、

書付と算木に囲まれていた。



一つ終えれば、

次が来る。


それを処理すれば、

また別の名が呼ばれる。



戦の全体は見えない。


見えるのは、

数字と、紙と、

人の疲労だけだ。



龐統の名は、

報告の中に何度も出てきた。


険路を避けた。

敵を誘った。

進みを遅らせた。


どれも、

「正しい」としか言いようのない内容だった。



だが、

彼と直接言葉を交わす機会は、

ほとんどなかった。


同じ軍にいながら、

立っている場所が違う。


それだけのことだ。



ある夕刻。


帳の中で、

未整理の書付をまとめていた時だった。


外が、

ざわついた。



駆け足。


伝令。


声が、

少し震えている。



「士元様――」


その呼び方に、

嫌な予感が走る。



「落鳳坡にて――」



その先を、

拙者は聞かなかった。


聞かなくても、

理解してしまったからだ。



奇襲。



拙者は、

報を受け取ったまま、

しばらく立ち尽くした。



――まだだ。



まだ、

終わっていないはずだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ