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4.00042 鏡のひび割れ(外歴)
境界層に足を踏み入れた瞬間、
空中に浮かぶ鏡が一斉に“呼吸”を始めた。
吸って、吐いて。
光が集まり、散り、また集まる。
エメラルドの気配だ。
鏡の一枚が俺の前に降りてきて、
そこには“別の俺”が映っていた。
笑っている俺。
泣いている俺。
怒っている俺。
諦めている俺。
「成美。境界層では、あなたの“反転”が先に歩くの」
エメラルドの声は、鏡の裏側から響いた。
俺は鏡に触れた。
ひびが走り、光がこぼれた。
そのひびは、俺の胸の奥にも同じように走った。




