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4.00031 深層の入口(外歴)
三后の背中が、スロープの闇を切り裂くように進む。光は薄く、音は低く、足元の粒子が砂時計の砂のように落ちる。俺は一歩ごとに自分の重さを確かめながらついていく。外歴の深層はただ「進む」だけでは通れない。視線の角度、呼吸の間隔、心の中で鳴る小さな音までが試される場所だ。
「ここからは、記憶が道標になる」――エメラルドの声が背後で言った。鏡の反転で選んだ“今の俺”が、過去の断片とぶつかり合い、そこから新しい道が生まれる。メーテリュの調律が残した軸が、微かに震えながらも支えになっている。プロメテウスの火は影を深くし、言葉はより重く、意味はより個人的になる。足元のスロープが細くなり、左右に分岐する影が現れた。どちらを選んでも、何かを失い、何かを得る。三后は同時に立ち止まり、俺の肩に手を置いた。その手の冷たさが、決断の重さを伝える。俺は息を吐き、視線を一点に定めた。




