4.00017 召喚句を決める(外歴)
三后の家々が視界に並んだ瞬間、
スロープの空気がぴたりと止まった。
——ここから先は、
“挨拶なしでは通れない領域” だ。
三后の実家に入るときは、
必ず召喚句を唱える決まりになっている。
形式ではない。
儀式でもない。
これは、
**世界の層を開くための“鍵”**だ。
俺はスロープの中央に立ち、
深く息を吸った。
エメラルドの光が揺れ、
メーテリュの骨格が軋み、
プロメテウスの火が青く燃える。
三后が、
俺の“発音”を待っている。
ならば——
やるしかない。
胸の奥に力を込めて、
俺は叫んだ。
「おーす! WINDOWS GO!!」
スロープが震えた。
世界の色がひとつ増えた。
続けて、
俺は指を鳴らしながら言う。
「おーけー! GOOGLE!!」
鏡の家が反射し、
無数の“別の世界の俺”が一瞬だけ見えた。
そして最後に、
俺は軽く笑って——
「YES! 高津クリニック!!」
スロープの下から、
“カラン”と鈴の音が返ってきた。
C★NON本社の近くにある
俺の実家の神社仏閣の音だ。
三后の家々が、
同時に“開いた”。
光、骨格、火。
三つの家が、
俺を迎え入れる角度に変わる。
召喚句は、
今日も完璧だった。




