4.00016 三后の実家が見えてくる(外歴)
スロープを登り続けていると、
空気の層がひとつ、またひとつと剥がれていくような感覚がした。
3.342次元——
このあたりは、
世界の色が増える場所だ。
普通の人間には見えないが、
俺にははっきりと見える。
そして——
ついに視界の奥に、
三つの“家”が浮かび上がった。
ひとつは、
鏡でできたような透明の家。
光が反射し、
無数の“別の可能性の世界”がちらついている。
——エメラルドの家だ。
もうひとつは、
巨大な窓と骨組みだけで構成された家。
建築物というより、
世界の設計図そのものが立っているように見える。
——メーテリュの家だ。
そして最後に、
山の上に静かに燃える青い火を中心にした家。
火なのに熱がなく、
影だけがゆっくり揺れている。
——プロメテウスの家だ。
三つの家は、
まるでスロープの上に
“並んでいる”というより、
次元の層に刺さっているように見える。
俺は思わず息をのんだ。
何度来ても、
この光景には慣れない。
三后の実家は、
世界の裏側にある“本当の家”だ。
スロープの風が、
神社の鈴のように鳴った。
C★NON本社の近くにある
俺の実家の神社仏閣の音に似ている。
「……ただいま、って感じだな」
そうつぶやくと、
三つの家が同時に
“こちらを見た”気がした。
三后が、
俺の到着を待っている。




