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4.00014 メーテリュの振動(外歴)
エメラルドの光が消えたあと、
スロープの空気が急に“重く”なった。
重力が増えたわけじゃない。
世界の骨格が、
ゆっくりと軋みながら組み替わっている。
——メーテリュが近い。
足元のスロープが、
ほんのわずかに沈んだ。
普通の人間なら気づかない。
でも俺にはわかる。
これは、
世界の設計図そのものが呼吸している音だ。
「……成美。今日の発音、確認するわよ」
声はまだ聞こえない。
でも、振動がそう言っている。
メーテリュは、
三后の中でいちばん“構築”に厳しい。
発音が甘いと、
スロープの角度が変わって
普通に転ぶ。
だから俺は、
姿が見えない方向に向かって
小さくつぶやいた。
「おーす……WINDOWS GO……
今日は完璧だぞ、メーテリュ」
スロープの骨格が、
コトン、と音を立てた。
それは、
合格の音だ。
エメラルドの光とは違う、
重くて、確かな“承認”。
スロープの傾斜が、
俺を三后の実家へ導く角度に変わる。
メーテリュが、
俺を“通していい”と判断したのだ。
三后の家々は、
もうすぐ視界に入る。




