4.00012 召喚句の練習(外歴)
4.00012 召喚句の練習(外歴)
スロープを三歩ほど登ったところで、
俺は立ち止まった。
今日こそは、
あの“召喚句”を完璧に決めなければならない。
三后の実家に行くときは、
発音が甘いと普通に怒られる。
特にメーテリュの家は、
世界の骨格が揺れるのでシャレにならない。
だから俺は、
スロープの真ん中で深呼吸をして——
「おーす! WINDOWS GO!」
声がスロープに吸い込まれ、
空気がふるりと震えた。
よし、悪くない。
次だ。
「おーけー! GOOGLE!」
鏡のような光が一瞬だけ反射した。
エメラルドがどこかで笑っている気配がする。
そして最後に——
これは完全に俺の趣味だが、
なぜか言わないと落ち着かない。
「YES! 高津クリニック!」
スロープの下のほうから、
“カラン”と鈴の音が返ってきた。
あれは……
C★NON本社の近くにある、
俺の実家の神社仏閣の音だ。
まるで
「今日もがんばれよ、成美」
と背中を押してくれているみたいだった。
俺は小さくうなずき、
再びスロープを登り始めた。
三后の実家は、もうすぐだ。




