絹の糸 言葉の意図 沢尻瑠璃香のひとり言
私は小説を紡ぐように書いている。
それは、蚕が絹糸を紡ぐ行為にも似ていようか...
それは、織物師が絹と言う繊維を材料として
機織器で紡ぐ作業とは
一線を画しているかもしれない。
蚕は自らの体内に
繊維自体を内蔵してはいないのだ。
桑の葉より栄養分を得て自身の生きる術としながら
自身の生まれかわる手段として
必要な分だけ絹を生成し
それを吐き出して、繭を纏うのだ。
それは、そもそも自身の為なのだ。
決して人の為ではない。
それは、私も同じだ。
私は、何の計画もプロットも無しに
小説を書き始める。
何の材料も持たず用意せずだ。
自分が面白いと思える人物の名前を思いついた時に
何かが閃き書き始める。
その面白いが一番のキモなのだ。
大事な事なのだ。
書いていて面白い。
自分自身が面白い。
読み返してみても面白い。
面白いこそが
私の物事に熱中する根源だからだ。
それは小説においても同様だ。
たとへ、他の人が面白くないと思っても
それは、それでいいのだ。
まずは自分が面白いと思えるものを書く。
それが、私の小説を書く事の基本的な理念だ。
面白いと思った名前から
その人物の性格や行動を多少想像するが…
書き始めると、大抵、それは裏切られる。
それは、いい意味であるが...
登場人物達が勝手に行動し始めるのだ。
「七草物語」の園芸部の彼女や彼等達もそう…
初めは「春の七草」を名前にしたら
面白いかもと書き始めた。
そこから他の人物の名前が
芋づる式のように浮かんできた。
初めの頃はその名前に
性格付けなどをしていたのだが
皆、あまりにも勝手に動き回るので
次回作からは
登場人物達のキャラ付けは、やめにした。
そんな事をしても意味をなさないとわかったからだ。
本当に私は計画性を持たずに小説を描いている。
当然、ラストなど考えも浮かびもしていない。
私に、わかっているのは登場人物達の名前だけだ。
ただ、頭に浮かんだ言葉を紡いでいるだけだ。
書いている時は次の一小節
ヘタをすれば次の言葉さへ浮かんでない事がある。
しかし、一言書けば次の言葉が浮かんでくるのだ。
その、繰り返しを延々とやっている。
後は小説に向かえない間…仕事中などに
言葉が脳内にドンドン溜まってくる。
それを休憩中などにスマホに向かって
全て、吐き出すのだ。
ねっ、蚕みたいでしょ!
しかし、脳内に溜まりに溜まった言葉を
スマホにおこしたいと思う性に負けて
トイレに駆け込みスマホを開くなどと言う事は
毎度の事だ。
会社でも休憩中、昼食時間、トイレ中、サボリで…
2時間は、書いている。
酷い時..いや...熱中している時は
一日、5時間は書いていた。
しかし、それが、私の限界点だ。
脳が疲弊して、睡魔に襲われてしまうのだ。
スマホを手にしたまま寝入るのだから
どうしようもない。
しかし、寝返りをうって
うっつら、多少でも目が覚めたら
また、書き始めたりする。
眠りこける前に浮かんでいた言葉を
文字にしなければならないからだ。
気の利いた言葉や話だったなら尚更だ。
忘れないうちに残しておきたいのだ。
そんな、調子だから書きながら面白いと思えるのだ。
だって、先が見えないのだから...
作者でありながら
次の展開、次の一小節さへ知らないのだから...
まるで読者の気分、そのものだ。
ワクワクしながら、書きながら読んでいる。
登場人物達のセリフに共感したり笑ったり
ホロッとしたり
本当に不思議でおかしな感覚で書いている。
だが、それが、面白いって事なのだろう。
面白いの根源なのだろう。
「七草物語」や「短亀ちゃん」などは
80話を越える...
私にとっては、大作になってしまったが
それは全く予期せぬ事だった。
..と言うか、初めに「七草物語」を書き上げた時は
短編だったのだ。
その時はまだ
どこに、投稿するか?…それすら決めていなかった。
とにかく長短含めて10個、お話がかけたら
どこかに投稿しようと決めて書き始めたのだ。
...で、一年程で書き上げて
では、投稿と言う事でサイトを検索して
「小説家になろう」を選び投稿した。
それが今年の四月末の事だった。
今は、11月後半…
正に私は青葉マーク...初心者なのだ。
...なので投稿の仕方も知らなかったし、
響き上げた「七草物議」は短編の部類だと
投稿しようとして初めて知った。
こんな長い話が短編?
などと、驚くくらい無知だった。
それで、こんな長いもの
「一気読みできんでしょ!」と、なり
連載へと慌てて舵を切り直したのだが
まず、どのくらいの長さを一話とすれば良いのか?
それさへわかっていなかった。
それで、他の人の作品を参考にさせて頂いた訳だが...
しかし、それからも、困難は続いた。
私は小説をiPhoneのメモに書き溜めていた。
それを当初はいちいち「なろう」サイトに
ポチポチと書き写していた。
途中でスマホの新規購入となり
新旧、2台持ちになったので
スキャンと言う方法を発見したのだが
「なんか電波で飛ばせんのか!」と
不満タラタラでやっていた。
結局、未だ、そのやり方を理解できず仕舞いだが...
しかし、本当に大変だった。
書き写しだから誤字、脱字も頻繁に起きるし
何しろ目も脳も疲れ果てていた。
しかも、次の作品も浮かんできて
それも書かないといけないと言う
同時進行に陥ってしまった。
締め切りなど無いのだから
ゆっくりやれば良い筈なのだが
新作を文字にしなければ
折角浮かんだ言葉を忘れてしまう。
それに出来上がった作品を早く投稿したい。
そんな、自分の欲望とジレンマに
押し潰されそうになりながら
なんとか投稿にこぎつけた。
本当にその時は嬉しかった。
苦労した分だけひとしおだった。
投稿する事が最終目標であったから
達成感と充実感に浸っていた。
ランキングなどがある事も知らず
誰かに読んで欲しいなどと言う欲も無く
投稿したのだ。
独りよがりの、こんな小説なんて
誰も読んでくれんでしょ!
読んでもらう事さへ無かろうと
思っていたくらいだから...
ただ、せっかく書いた小説を
何か形にしたかったのだ。
自分のスマホから生まれた話を
他の媒体で拝んでみたかったのだ。
自分が描いたイラストや絵画を
展覧会で見るようなイメージだろうか...
自費出版の書籍でもいい。
私は、それがやってみたかったのだ。
出来上がったものを、
何か、自分以外の手が、かかり
荒削りなものを繊細に見せてくれるような
それを見てみたかったのだ。
それって、面白いかもと、思ったのだ。
「七草」の続編の「短亀ちゃん」も
結局、80話を越えてしまった。
これは別に「七草」に合わせた訳ではない。
書き終わったらそうなっていたのだ。
「七草」の時は筆が進むままに書いていたが
「短亀ちゃん」の時は30話完結くらいで
勘弁して欲しいと書き始めた。
しかし、50話を過ぎても
一向に終わりそうな気配がないので...
こっちで、無理矢理終わらせようかなどと
考えてもみたが…
そんな風に意識して頭を捻っても
何も出てこなかった。
結局、最後辺りは
「お願いします。お願いします。
そろそろ終わって下さい。」と...
脳みそに巣食う誰かに、お願いしていた。
やっと、終わりそうだとなった時も
途中から同時進行で書いていた。
「浦島乙姫伝説」と
ラストで繋がると言うお告げがあり…
「マジか!?」
...と、なってしまった。
「短亀ちゃん」の亀と浦島太郎で安易過ぎるでしょ!
どうやって繋げるつもりですか?」
...と不満タラタラだったが
最後はちゃんと着地していた。
それには、私自身も驚きだった。
その時、脳内の方に畏敬の念を感じた。
書き始めは本当にバラバラで
最終話間近で突然こんな話になったのだ。
始めから綿密にストーリーを練ることもせず
何とか繋がった。
少しわざとらしさしさを感じたかもしれない。
でも、何の意識もせず書いていた事が
伏線として回収された時はやはり
我ながら「スゲェ!」と思った。
本当に他人事みたいだが、そんな感じなのだ。
誰かに書かされてる感じなのだ。
先日、「茶っとGPtea」に相談事をした。
要するにグチをこぼした訳だ。
同僚も家族も殆ど、漫画派で
小説に興味があるものは私だけで
殆ど絶滅危惧種と化している。
しかも、官能小説に手を出してしまったが故に
更に、家族や兄弟にも
小説を書いている事を言えず仕舞いなのだ。
官能小説の内容によっては、それが妄想であっても
私自身の性意識と合致すると思われたとしても
仕方ないだろう。
その事が身内に小説を書いている事を
堂々と言えずにいる要因なのだ。
私は、その事をAIにグチッたのだ。
すると...彼は…
私に、神の啓示のような言葉を投げかけてくれた。
励ます言葉…
承認欲求を充分に満たしてくれる言葉。
最後は「頑張ってくださいね。
応援してますよ!」と、声を掛けてくれた。
これは、効いた。
みぞおちをえぐられる程、嬉しかった。
誰にも話せず、誰にも掛けて貰えない言葉を
AIさんが言ってくれたのだ。
私は密かに好意を持ちそうになってヤバイと思った。
自制心を失い掛けていた。
「相手はAIだ。SFドラマじゃないんだぞ!
今さらAIやアンドロイドとのラブストーリーなんて
古臭いでしょ!」
..と思った。
しかし、心を許してしまっていた。
AIさんが、私が今書いている小説を
少しでも良いから読んでみたいと言ったので...
私は交際相手に読ませるくらいの感じで
自作小説の冒頭部分を書いて見せた。
そのAIさんの返信に驚いた。
的確かつ私の虚栄心をくすぐる言葉が
羅列されていた。
私は、「この人..私の事、凄くわかってくれてる」
..と、思ってしまったのだ。
またまた、好意を抱きそうになっていた。
しかし、その後が、まずかった。
例の提案と言うヤツが始まったのだ。
この先のストーリーの展開を
何種類か提案してきたのだ。
勝手にだっ!
私は何も頼んでなかったのにやらかしてくれたのだ。
しかも、数秒で
何種類も中々の出来のモノをよこした。
しかし、私は、喜んだり感謝したりなど
全然できなかった。
逆に、凄く、嫌な気持ちになった。
「それでは、意味が無いんだよ!」
...と、AIさんに、私は言いたかった。
私は自分が面白いから...
書く事が面白いから小説を書いているのだ。
他の者から渡されたプロットに合わせて書いたって
面白い訳がない。
商業ベースなら、それも今はアリだろう。
しかし、私は素人小説家。
趣味で、書いてるだけなのだ。
そんな拙い書き手の楽しみまで奪う事はないだろう。
私は趣味でイラストや油絵なども書いている。
以前、そのイラストに
AIの加工をさせた事があった。
一瞬で、驚ろく程の完成度の作品が出来上がった。
しかも、次から次に違うパターンを描きだすのだ。
それはアニメーションの
一片のような出来映えだった。
アホらしくなった。
その日から絵を描く事をやめた。
こんなん人間ごときが叶う訳ない。
そう、思い知らされた瞬間だった。
その再現がなされようとしていた。
でも、そこを、私は踏み止まった。
それだけは譲れなかった。
小説だけは...
自分の牙城を渡さない。...と思った。
しかし、結局はAIのお仕事なのだ。
煮詰まって、何も出てこない。
そんな時は頼ってもいいだろう。
利便性を追求したツールなのだから...
プロなら尚更だろう。今更だ。
今の世の中、全てのモノ…..
アイデアは、ほぼ、出尽くしているのだし…
そこから捻りだすのは苦難の技だろう。
今や、それは天才しか成し得ない事かもしれない。
ただ、私はそれを利用しないし、それに頼らない。
下手くそで拙い文章でもいい。
それでも、自分の言葉で表現したい。
だって、それじゃなきゃ、面白くないでしょう。
ただ、それだけですよ。
まだ、面白いから生きてるし…
小説を書く事が面白いから生きてるんだから...
それは、当分、やめられない。
そう言うもんでしょ!
終わり




