突然変異
起きるとやはり面白味も無い朝だ、毎日コピペで貼り付けたような日常。あまり生きた心地はしていない。大学に入れば感情が湧き上がってくるものだろうかその一心で生き続ける。目標がなければ自殺していたかもしれない。そのぐらい世に執着がない…と言うよりも感情が薄れている。皆はどうやって大して勉強もしないで高校へのモチベーションを持ち続けられるのだろう。
宿題なんてなければ大学のための勉強ができたことを考えながら前日の宿題と面接で趣味を聞かれて読書と答えるためだけの小説を詰め込んだ。朝食を食べて、制服を着る。くたびれた革靴を履いて家を出る。満員電車を二回乗り換え、駅を出る。改札を出たところで声をかけられる。
「おはよー柚木」
こいつはクラスメイトの一人、雄一だが、あまりこいつについては知らない。なんならよく知っているクラスメイトはあまりいない。学業に全く関係のない身の上話をまじめに聞くなどアホらしい。
精一杯の笑顔で挨拶を返す、どうやら良い大学に行くのには外面を良くしておくのがいいと聞く。そうして十分程歩くと無事高校に着いた。多少のイレギュラーがあってもいいと思うのだが、大学には生きていないといけない
暇な授業でもう知っていることをもう一度教えられる。窓の外を眺めていたり、寝ていたりすれば、推薦状を書いてもらえなくなってしまうかもしれない。常に笑顔で質問は積極的に答える休憩時間には本を読んでいれば好印象だ。そして、帰りに学友たちと駅で別れ、名門大学の合格者の本を読んでモチベーションを保つ。歩き始めて数分、いつも通り近所の家で家族喧嘩が起きているのだろうと思いふと見ると
巨人が現れる。
惰性で帰っていたからか、数秒は異常事態に気づかなかった。しかし、コピペで成り立っていたこの日常が突然文字化けした。俺はこの状況に怯えつつも、確かな高揚感に襲われていた。緊迫感を感じつつ家に走って逃げ帰る。ただ、走る、走る、走る。パカパカと間抜けな音を鳴らす革靴に苛立ちと動きにくさを感じたのは初めてだ。何かにとりつかれたかのように靴を脱ぎ捨て、足が削られるかのような痛みを感じながらもう長らく舗装されていないであろうコンクリートの上を裸足で走る。久しぶりの独り言がポツリと漏れる。
「ああ、今までの勉強が全て無駄だな」
逃げ帰った家で母が駆け寄ってくるが、すぐに腰を抜かす。「柚木、その羽、」
どうやら俺もこの異常事態の一部だったらしい。
初めまして!ビアンヴニュ中村です!
今回初投稿なのでかなり短めのエピソードとさせていただきました。この作品は今後10話ほどやらせていただこうと思っているのでよろしくお願いします!