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孤島の悪魔  作者: スザク
6/6

孤島の悪魔ーエピローグー

一体何度思ったことだろう

宮下さんがここにいれば

あの時俺があそこにいれば

あの時俺が留学なんて行ってなければ

皆があんなくだらない会を開かなければ



一体いつからだろう

心の底から笑えなくなったのは

皆のことが憎くなったのは


、、憎しみが殺意に変わったのは




宮下さんが死んだ

そう聞いたのは留学から帰ってきてからだった

自殺、、第一志望の会社に入れなかったことが原因らしい。責任感が強く、周囲の期待や自分の価値、そういったものがせめぎ合い、自分を維持することがてきなくなってしまったのだろう。

あまりに突然のことだったので涙を流すことさえできなかった。

ただ、抜け殻のように呆然とすることしかできなかった。


そして、その大事な面接の直前に送別会があったのを知った。

そんなもの、全てが終わってからやればいい、優しい宮下さんは後輩の気持ちに精一杯応えてくれたのだろう、その姿がありありと浮かんできた。


その時点では、憎しみまではなかった。

ただ、彼らも責任の一端であり、それを悔いていれば良い、同じように彼女の死を悼んでいれば良い、そう思っていた。


しかし、そうでは無かったと知った。

誰も自分が悪いなんて思っていない、あろうことか自分たちの時は就活と時期はずらそうなどといけしゃあしゃあと息巻いている。

彼らが笑う度に激しい怒り、憎しみがこみ上げてきた。

なぜ彼らが笑い彼女が命を落とさなければならなかったのか。

自分でも分かっていた、逆恨みでしかないと。

彼らのように、すべてを忘れて、気にせず今まで通り暮らしていけばよいと。


でも、できなかった。

彼らへの憎しみは次第に、殺意に変わっていった。

そしてその思いが消えることがないというのも分かっていた。


この思いを抱えたまま一生生きていくのか、それとも自分なりのやり方で決着をつけるのか、その決断に迷いは無かった。


それからは、授業の時も、通学の時も、皆といる時も、休みの時も、皆を抹殺するための計画を考えていた。



一人一人自分の手で消していく、そうしないとこの思いは癒えない。


まずは、外界から隔離された環境を用意する必要がある。

Z島ー孤島の悪魔の都市伝説があり、電波もネットも繋がらない、正にうってつけの環境だ。


一人一人消していくとなると、犯人とバレるリスクが出てくる。それは殺害を重ねれば重ねるほど、容疑者が絞られてくるので高くなってくる。


一番安全なのは容疑者から外れること、そう被害者になりすますことだ。

自らの死を偽装し、自由に安全に立ち回る。


そのためには、いくつかの仕込みが必要だ。

まずは死体の用意、自分と同じ背格好の落合に自分の服を着せ顔を潰しておく。

もちろんよく確認すれば分かってしまうので、薄暗い場所を選ぶ必要がある。そして、既に何人かが殺された後、皆が死に慣れた後にする。もっと言うと、死体を2つ並べておくのが良い。それであれば皆詳細に確認することはしないはずだ。

しかし、医学部の河野は厄介だ、念入りに調べる可能性がある。だから、奴には俺の死の偽装より前か、同じタイミングで消えてもらう必要がある。


そうなると、まず落合か河野を消すことになるが、死んでいることを確認させる意味でも河野は残しておき、落合を消す。奴の死体は後ほど使うため、皆が再び見に来ないように部屋の中で殺害し、放置しておく。


次に消すべきは桐谷だろう。

正直、彼女とは長い付き合いだし、できるならば殺したくない。

だが、俺のことを良く知っている彼女を長く生かしておけば、それだけ俺の犯行がバレるリスクが高まる。

そして彼女は俺のことを良く信頼しているので、落合の死後、皆が警戒し合う状態の中でも2人きりになるのは難しくないだろう。


この後で俺の死の偽装と河野殺害を行う。

落合の死体は俺の服を着せて事前に林の中に隠しておく。万が一誰かが落合の部屋に入っても良いように、ベッドには代わりの詰め物を入れておく。


河野と2人きりになる必要があるので、残ったメンバーを分断する必要がある。

鬼塚、須田、永瀬、河野、俺の5人だ。

永瀬を利用させてもらう。須田は永瀬にべったりだ、彼女を睡眠薬で眠らせれば必ずそちらにつく。

そうすれば後は男2人ずつに分かれるのは容易だ。

水をくむために元栓の場所を知っている俺、元栓を開けるのに必要な器用な河野という理由もつければ河野と2人になれるだろう。

そして不意をついて河野を殺し、顔を潰した落合と一緒に林の中に放置し、俺は身を隠す。

河野は後頭部を潰しておこう、後頭部と正面をそれぞれ潰された1対の死体という方が落合の顔が潰されている違和感も薄れる。


この後は鬼塚、須田、永瀬の3人が残るが、状況から言って、分断される可能性が高いだろう。

俺達が帰ってこないとなると、まず間違いなく探しに来るはずだ。須田が永瀬を1人にするとは思えない、腕に自信のある鬼塚が一人で探しにくるだろう。


鬼塚、、正直一番厄介な相手だ。奴を殺す時はスタンガンなど何か道具を使った方がいいだろう。

鬼塚に死体を見つけさせ皆の元に帰させる。

ここで不意打ちをしても良いが、日中で隠れるところがあまり無い屋外で奴に接近するのは危険だ。1人になったところを消せばいい。


鬼塚から俺達の死体を見つけたと聞いた須田、永瀬は間違いなく鬼塚を疑うだろう、逆に鬼塚目線では2人が疑わしい。

こうして孤立するであろう鬼塚を消し、須田と永瀬は最終日にまとめて始末する。この2人であれば一度に消すのもそう難しくないだろう。


しかし想定通り行くとも限らない。

鬼塚が須田や永瀬と結託する可能性もあるし、3人で結託する可能性もある。そもそも俺達の死体に気づかないかもしれない。


鬼塚が誰かと結託した場合は、孤立した1人を始末してから、最終日に迎えの船に乗る脱出直前の気が緩んだ所を狙う。玄関から出てくる無防備なところで不意をつく。

鬼塚さえ戦闘不能にしてしまえば、残ったのが須田であろうと永瀬だろうと消すことができるだろう。


3人で結託された場合は、同じように最終日の気が緩んだ所を狙う。

鬼塚から道具で戦闘不能にし、須田、永瀬の順に始末する。


少々強引だが、最終日が近くなるにつれ、1人ずつ消していくのは難しくなる。多少の実力行使も止むを得ないだろう。

まあ、3人で結託するケースはかなり低いだろうが。




ーZ島、初日 夜ー

ガチャ

落合、想定通り泥酔して熟睡している。

ある意味君は一番幸せかもしれないね、そのまま苦しまずに逝ける。


トスッ

落合の胸にナイフを突き立てる

ズブ

深くまで刺す


途中少し落合の声が漏れた気がしたが、すぐに服に血がにじみ出し、呼吸、脈が無くなった


、、なんだ、人ってこんなにも簡単に死んでしまうものなのか

宮下さん、、あなたもこんな風に簡単に、、



ー2日目ー

「桐谷!」

案の定、桐谷は一人になると言い出した。長い付き合いだからね、君の行動は手に取るようにわかるよ。


誰も付いてきていないことを確認する。


「桐谷、待ってくれ」

彼女の腕を掴む

「、、放して」

「聞いてくれ、実は、、犯人の目星がついてるんだ」

「え、、」

「今日の夜中、1時くらい、皆が寝静まった時に外のキャンプ場に来てくれ、一緒に脱出しよう」

「私たちだけで逃げるってこと、、?」

「そうだ、残念だけど全員で逃げるのは難しいと思う、、

君と、桐谷とこれからも一緒にいたいんだ」

「浅尾、、、


うん、わかった、、私も、浅尾と一緒なら、大丈夫だと思う、、」

「ありがとう、皆には明日朝集合という流れにしておくよ、桐谷の部屋にも伝えに来るだろうけど、さっきの2人だけの約束を信じてほしい。

それと、危険だからそれまでは部屋にこもってじっとしておいた方がいい」

「うん、うん、ありがとう、、」


さあ、あとは夜まで待つだけだ。

残念だよ桐谷、あんなことがなければ君とは良い関係でいられたのに





「桐谷、来てくれてありがとう、誰にも見つかってないよね?」

「うん、大丈夫


、、キャッ」

彼女を抱きしめる

「え、浅尾、、どうしたの?」

「桐谷、、ごめん。今までありがとう、、


さようなら」

「え、、」

持っていた紐で彼女の首を絞める

ギリッギリッ

「グッ、、なっ、、あ、、、」


何分くらいだろう、力を込め続ける

彼女が悲痛と苦悶の表情を浮かべ首を掻きむしる

「なん、、、で、、、あ、、、、」

やがて彼女の腕が力なく垂れ下がる

まだだ、まだ、絶命するまで


ギリッギリッ



桐谷の目が開き唾液は口から垂れ舌も下がっている

紐を緩めると彼女の体はすぐに崩れさった


ドサッ


辺りを警戒する

大丈夫、誰もいない


彼女の亡骸を確認する

呼吸、脈全て大丈夫だ



、、、桐谷、、

なぜだろう、震えが止まらない、涙がこみ上げてくる

落合の時とは違う

生きている人間を自分の手で殺めたという自覚が込み上げてくる

それだけじゃない、自分に好意を寄せる相手をそれを利用して殺したのだ


俺はとんでもないことをした


でも、もう戻れない、後戻りはできない

やるしかない


覚悟が一段深まった気がした



しかしこうしてはいられない

今のうちに落合の死体を林の中に移動させ、顔を潰し、俺の服を着せなければ


ガチャ


誰にも見られないよう慎重に部屋に入り、死体を運び出す



よし、いくぞ



ー3日目ー

桐谷の遺体は太陽の下で見るとより凄惨なものだった

体から血の気は引き、とても人間とは思えない


「桐谷、、なんで、、」

思わず体が動いていた

自分の手で殺めたはずのか細い体を抱きかかえる


俺は何をしているんだろう

何をしてしまったんだろう

困惑、後悔、様々な感情が押し寄せてくる


しかし、それは同時に昨夜の覚悟を思い出させてくれた。そうだ、もう後には引けない。



この日は誰も殺さない

あえてそうすることで皆の緊張を緩ませ明日分断させやすくする


そして、皆をさりげなく犯人探しから遠ざける



ー4日目ー

この日が正念場だ

河野を殺害しつつ俺の死を偽装する


まずは皆を分断する

そのために、タイミングを見て永瀬に睡眠薬入りのハーブティーを飲ませる


「永瀬、大丈夫?」

「うん、、実は皆に申し訳なくてほとんど寝れなくて、、ちょっと調子があんまり、、」

「ちょっと待ってて、今お茶でも沸かすよ」

「あっ、そういう意味で言ったんじゃ、、」

「大丈夫、俺がいつも飲んでるハーブティー、温まるし落ち着くよ。ちょっと待ってて。」

皆に気づかれぬよう睡眠薬を入れる

「はい、どうぞ」




予定通り河野と2人になることができた

「あれか?」

「そうそう、ちょっと見てみてくれる?」

「ああ、、」



さて、後ろは取った

「どうだい?」

「、、うむ、ここを、、」


ゴッ

川原にあった大きな石で殴りつける


「ッガ、、グ、、グオオ、」

ガッ


苦しむ河野にとどめをさす


さて、落合の死体を置いた場所に河野の死体も運ぶか




茂みに隠れて誰かが様子を見に来るのを待つ


あれはー鬼塚か

やはり須田は永瀬につき、一人で来たな


さて、2人の死体に気づくかどうかー



、、、気づかずに帰ったか、

少し分かりにくかったか、とは言え、陽の光の近くだと俺の死体として使っている落合の死体が時間が経ったものたと分かってしまう


、、河野の眼鏡でも近くに置いておくか




来た

今度は須田、永瀬も一緒か


眼鏡に気づいたな



死体にも、、気づいた

そしてすぐに戻っていった

これで偽装は完成した、後は彼らがどうなるか、、




宿の外から中の様子を伺う


予想通り、鬼塚は1人になった

それどころか須田と永瀬も別れた

よし、予定通り鬼塚が1人になったタイミングて始末するか



鬼塚、出てきたな

ん?須田の部屋に、、

須田も出てきたか


鬼塚と須田が結託か、、

永瀬から消すか、、



いや、、鬼塚が須田に馬乗りになっている

そうか鬼塚は須田が犯人だと

仲間割れは結構だが、トドメは俺がさしたい

しかし今出ていくのはリスクがある、、どうしようか


あれは、、永瀬

!鬼塚を、、刺したのか、

須田を守ったのか、、



戻っていく、、



鬼塚の様子を見に行く


「グ、、ぐおお、、が、う、、、」

しめた、まだ息はある

「お疲れ様、楽になるといい」

鬼塚に刺さっていた包丁を深く突き刺す

ザスッ

「うっ、、」

鬼塚が動かなくなる



感謝するよ永瀬

厄介な鬼塚を簡単に始末できた、それも俺にトドメを譲ってくれるなんてね


どうやら運は俺に味方しているらしい


さあ、後もう少しだ



ー5日目ー

長かったこの計画も終わりが見えてきた


最後、2人が玄関から出てくるとき、油断している時を狙う



部屋から出てきた

なぜ広間に?鬼塚の包丁を抜こうとしているのか、、?

そうか、外部犯の仕業と、、

半分正解ってところかな


包丁を持っているのは須田か

やはり須田からだな



「行こう」

須田の声が聞こえる

玄関が開く、2人が出てくる


ブスッ

須田の首元に後ろから刃物を突き刺す


ドサッ

須田が倒れ込む


「、、え?

、、浅尾君、、どうして、、」


トスッ

「続きはゆっくり考えるといいよ、あの世でね、、」


ドサッ

永瀬が崩れ落ちる




、、、終わった

体を地面に投げ出す


終わった、終わったんだ、、もう、


なぜだろう、景色がぼやける、涙が止まらない

俺は何をしていたんだろう

何がしたかったんだろう


不思議と達成感は無かった

物寂しさ、終わったというよりも終わってしまった


宮下さん、、俺は、、

いや、もういい、

全部、全部終わったんだ、、


帰ろう、もうすぐ船が来る




「あれ、なんだいお前さんだけかい」

「ええ、どうやら皆ここが気に入ってしまったようでもう一泊したいと。すみませんが、明日同じ時間にも来て頂けないでしょうか?」

「まあ、いいけどよ、、お前さんは帰るのかい?」

「ええ、ちょっと用事があるもので、、」





ー某日、某霊園ー

宮下さん、仇はうちました



宮下さん、桐谷、皆、、

俺ももうすぐそっちに行くよ




トゥルルルルル

「はい、こちらは110番です。事件ですか?事故ですか?」



「、、人を、、殺しました」



孤島の悪魔

ー完ー

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― 新着の感想 ―
伏線がすごい。 短くて文章も読みやすくスラスラ進めてしまうが、それが逆に罠になっている。 読み終えた後に、なるほど、確かにそうだったと思う部分があり、点と点が繋がっていく感じがする。これは気づけたかも…
すごいものを読んでしまった・・・
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