孤島の悪魔ー結ー
「なあ、犯人、まだこの近くにいるんじゃねえか?」
!確かに、複数でいても襲われている、ここも危ない
「とりあえず、急いで戻ろう」
皆で急いで宿に向かう
「とうとう3人になっちまったな、、」
、、、鬼塚、正直言ってもう俺の中でほぼ答えは出ている
永瀬は部屋の中にずっといたが鬼塚は俺が知らない時間がある
いや、待てよ、でも鬼塚が一人になったのは2人が戻ってくるのが遅かったからで、やはり犯人は別に、、?
、、、まさか、そんな、、
それに気づいた時、ある恐ろしい考えが浮かんだ
俺が永瀬を見たのは部屋をノックした時だけ、、
部屋からは窓を開ければ外に出られる、、そして再び窓を通ってくれば、ドアを介さずに出入りできる、、
思えば体調不良を言い出したタイミングも絶妙だ、
疑いたくない、犯人であるはずがないと思えば思うほど彼女が怪しくなってくる
、、だが、浅尾と河野はすごい力で殴られ、後頭部と顔面を潰されていた
永瀬にあんなことができるだろうか、、?
道具、威力のある道具を使ったのか、、?
俺は、俺はどうしたらいい、、
いっそ鬼塚と協力して永瀬を拘束してしまおうか
「須田君、大丈夫、、?」
永瀬に話しかけられビクッとする
「あ、ああ、大丈夫だ、考え事をしていただけだ、、」
「考え事って、犯人のこと、、?」
永瀬、、一体君はどういう意味でそれを言っているんだ
俺も、俺も皆のように消されてしまうのか?
君とは良い関係を築けていると思ったのは俺の独りよがりだったのか?
もし本当にそうだとすると、永瀬、、どうしてこんなことを、、
「なあ、俺、もう船が来るまで一人でいるわ」
「え?」
「こんなこと言いたくねえけどよ、もう誰も信用できねえし、、自分の身は自分で守らなきゃ、な」
「鬼塚、、」
鬼塚の言うことももっともだが、今永瀬と2人きりになるのはまずい、、
「永瀬、、ごめん、俺も一人になりたいんだ」
一刻も早くその場を立ち去りたかった
「須田君、、」
ガチャ、カチッ
部屋に戻りカギをかける
永瀬、、本当に君なのか?
そう聞いたところではいと答えてくれるわけもない。
もし犯人じゃなかったとしたら、誰が?やはり、鬼塚?それとも、本当に外部の人間、孤島の悪魔が
終わりの無い問答を自分の中で繰り返す
俺は、、どうしたい?生き残ったとして、これだけ多くの仲間が死んで、もし永瀬が犯人だったら、、俺はその後、それから、、
ゴンゴン
不意のノックに思わずビクッとする
「俺だ、須田、いるか?」
鬼塚だ、、先ほど一人になると言っていたが、何かあったのだろうか
「どうした?」
「ちょっとお前と話したいことがあってな」
何だろう、でも良い機会かもしれない、正直この状況では鬼塚より永瀬の方が怪しい
それを伝えて少なくとも俺達は結託すべきだ、腕の立つ鬼塚が味方にいればかなり頼もしい
「ああ、俺もちょうどお前に話があったんだ、、」
ゆっくりと慎重にドアを開ける
「大丈夫、何も持っちゃいねえよ」
鬼塚が両手を広げる
「ああ、俺もだ」
俺も同じように安全であることをアピールする
そうして2人きりの状態で広間につく
「なあ、話って何だ?」
「いや、お前から話せよ」
「いいのか?いや、犯人のこー」
言いかけた瞬間強烈な痛みが背中に走る
「ガハッ」
鬼塚が馬乗りになり俺の首を絞めている
すごい力だ、、全く抵抗できない、、息もでき、、
「須田、何でこんなことしやがった?俺たちは仲間じゃねえのかよ」
どういう、、ことだ
俺を犯人と思ってるのか、それとも鬼塚が犯人だったのか、、
「ガッ」
弁解しようにも声が出ない
「浅尾と河野の死体、女にはありゃ無理だ。俺じゃねぇってことは、お前しかいねぇだろうが!」
、、違、、
「グッ、、」
苦しい、、意識が遠のく
ダメだ、、これ以上はー
すると不意に力が緩み鬼塚が倒れ込んでくる
「ゲホッガハッ、エホッ」
助かった、、のか?頭が、意識が朦朧とする
「ハーハーハー」
ようやく落ち着いた時、そこにいたのは、、
「、、永瀬?」
鬼塚の背中に包丁が突き立てられている
そして死んだように動かない
すぐにわかった、彼女が刺したのだと
永瀬が抱き寄ってくる
「私、私、、」
「助けてくれた、のか、、?」
彼女が涙を流しながら頷く
「私がいない間に皆は殺されてた、、私から見たら犯人は鬼塚君か須田君、、でも、私、須田君を信じてたから、、」
「そうだったのか、、ありがとう、助かったよ、、」
、、、彼女が俺を助けてくれた
それも一人の人間を殺すことで
それなのに、まだ彼女のことを完全に信用しきれてない自分がいるのが怖い
彼女が俺を助けたのはなぜだ、厄介な鬼塚を先に始末して2人きりで殺すため?今こうしている間も実は殺害の機会を窺っている?
、、いや、いいんだ
もう、やめよう。俺は自分が好きな人を信じる。たとえどんな結果になろうと。
彼女は俺を助けた、それは事実だ
勇気を振り絞って助けてくれた、
「ありがとう、、」
初めて心の底から人に感謝できた気がする
きっと、犯人は鬼塚だったんだ、さっきの俺への発言も全て嘘で男が残り俺一人だったから、強硬手段に出たのだろう
アイツは一人の時間があったし、体格的にも2対1でも勝てるだろう、いやむしろ2人相手にそんなことができるのは奴しかいない
ああ、そういえばアイツ、ずっと犯人の野郎って言ってたな、野郎って、男と決めつけてる、自分がそうだからだったのかな、、
でももう終わったんだ、後はこのまま2人で明日を待とう
永瀬とともに俺の部屋に向かう
震える彼女を抱きしめながら、長い長い最後の1日を過ごす。あともう少しだー
「永瀬、おはよう」
「ん、、」
二人とも全てが終わり安心したのか眠ってしまっていた
「そろそろ迎えが来る、、準備をしよう」
「うん」
ようやくだ、長かった悪夢のような日々が終わる
色々なことがあった、多くの犠牲があった、
俺達は生き残れた、、今はそれだけで十分だ
「海岸まで少し歩くけど、大丈夫そう?」
「うん、ありがとう平気だよ」
ー待てよ
迎えのことを考えた時、重大な事実を見落としていたことに気づく。
いた、、隔絶されたこの島を自由に行き来できる人物が、、
船でここまで乗せてくれたあの男性、、
なんてことだ、なぜこんなことをしたのか理由は分からない、、でも、船に乗り込むのは危険だ、、アイツが、アイツがきっと、、
「永瀬、、実は、、」
今の推理を永瀬に話す
「、、どうしよう、、船ないと、戻れない、、」
「油断させて船を奪おう、、向こうがその気ならこっちもその気だ」
「それって、、」
永瀬もその先は言わなかった
そうだ、永瀬だって俺のために鬼塚を、、
俺も覚悟を決めろ
「鬼塚に使った包丁、アレを使おう」
ー!
広間に戻ると鬼塚の姿が無かった
バカな、、
いや、移動していただけか
ホッと胸を撫でおろす、どうやら即死では無かったようだ、少し移動して力尽きたらしい
「フッ、、」
包丁を身体から引き抜こうとする
が、なかなか抜けない
永瀬、かなり勢い良く刺したんだな、、俺のために、、
ズボッ
「ふー」
これで武器は手に入った
不思議と恐怖は無かった、永瀬がついてくれてるからだろうか
「行こう」
玄関を開く
海岸はあっちだな、
ブスッ
あれ、、歩けない、、地面が近い、、
喉が熱い、燃えるように熱い、口の中に鉄の味が充満する
痛い、痛い、痛い痛い痛い痛い痛い
声が出ない、出ない、出せない
何が起きている、視界が狭まる、意識が遠くなる、辺りが暗くなる
永瀬、君は、、永瀬、
俺は、死ー
ー某日、某警察署ー
「ちょっと悪いね、通してくれ。はいはい、こっちだ。
ここが取調室だ、入ってくれ」
ガチャ
バタン
「なんか、えらい若いのが入っていきましたね。何やらかしたんですかね」
「おう、ありゃとんでもねえぞ。殺しだ、それも6人だとよ。」
「え、マジですか?!人は見かけによらないっすね、、」
ー取調室ー
「よし、じゃあ今から事情聴取を始めるぞ。最初に言っておくが、答えたくないことがあったら答えなくても構わない、ただ、君の心証は悪くなる。それだけわかっておいてくれ。」
「わかりました」
「まずは、名前と職業を教えてくれるかな」
「浅尾光子郎、学生です」