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闘真と昔話

友人との会話パートです。


「もう! なんでノックもなしに入ってくるのさ!?」


 僕は枕を闘真目掛けて投げつけた。


「いやいや、ちゃんと入るっていったろ?」

「入った後じゃ意味ないよ!」

「あ~、うん……。まあケチケチすんなって。もし女連れだったらすぐ出てくつもりだったからさ」

「そういうデリカシーのないとこが犬山さんに怒られるとこなんだよ!?」

「ハハハ、アイツは怒るとこも可愛いからいいんだよ」


 僕の投げた枕を敷布団の上に置いて、闘真くんは僕の隣に座った。


 大神闘真。

 顔良し、頭良し、スタイル良し、運動神経良しの超イケメン。

 ただ内申点はよろしくないようで、クラスでは不良扱いされている。

 けど、ソレでもモテる。滅茶苦茶モテる。むしろ素行の悪さがワルの魅力とか言われている。

 

「俺は別にお前が自家発電しても引かないぜ! 男として当たり前だからな!」


 中身はただの悪ガキだ。

 小学生のころからほっとんど変わってない!


 僕と闘真くんは幼稚園の頃からの仲だった。

 家が隣同士でよく会ってたんだけど、性格が全然違うから最初は仲良くなれないと思っていた。……あんな事があるまでは。

 けど、一度仲良くなったら子供はずっと親友だって思ってしまう。現に、中学校に上がって闘真が親の事情で転校するまでずっと一緒だった。

 そして、同じ学校で再開した時も。

 そこからは激動の毎日だったな………。


「あ~あ、明日はマスクランナーの再放送だってのに、こんな事に巻き込まれるなんてな」

「闘真はマスクランナーのBD全部持ってるからいいじゃん」

「良くねえよ! ファンなら再放送も生で見るのが筋だろ!」

「……ソレ、生って言えるのかな?」


 マスクランナー。

 日曜の朝にやっている特撮番組で、宝玉を埋め込まれた本代猛介(ほんだいたけすけ)が蜘蛛の怪人に変身して悪の組織と戦うお話。

 フリーランニングで町中を駆け抜け、踊るかのように敵の戦闘員を一掃し、敵怪人と激しいアクションを披露。

 しかも、スタントマンもスーツアクターも全て俳優がこなしているという徹底ぶりだ。

 その格好良さに幼稚園の頃から闘真はドはまり。

 高校になった今でもファンを続けている。


「けど、初代が終わってからはアクション減ったよね」

「ああ、フリーランニングもCGが多くなったし、アクションもスタントマンを普通に使ってる。だから俺は主演になりたいんだよ!」


 闘真の幼稚園の頃の夢はマスクランナーになる事、今の夢はマスクランナーの主演になる事。大して変わってない。

 マスクランナーへの情熱は、あの頃から全然変わってない。

 そして、出演するために特訓した。


 ダンス教室に通ってブレイクダンスを覚えた。

 本やDVDを見てフリーランニングを覚えた。

 ジムに通って格闘技を覚えた。


 僕は、努力してきた闘真を尊敬している……。


「なあ真名、俺はコレをピンチと同時にチャンスでもあると思ってるんだ」

「え?何で?」

「マスクランナーになれないって分かって、俺はアクション俳優になるって決めた」

「うん、知ってる。何度も聞かされてるからね」

「けど、ここなら俺も勇者に……本物の正義のヒーローになれるって思うんだ」


 グッと、闘真は拳を握りしめ、僕に振り向く。


「俺はこの世界の人たちと転移された皆を救うヒーローになる。そんで元の世界に戻ったらテレビでヒーローになる」


「お前には俺の隣に立ってほしいんだ。ガキの頃から俺と一緒に夢を追いかけて来たお前と一緒なら、たとえ魔王だろうが神だろうがぶっ倒せる!!」



 ………ああ、本当に眩しいな闘真くんは。


 本気でヒーローになる気で……僕と一緒に魔王を倒そうとしている。

 ソレに対して僕は不安で仕方ない。戦いが……殺し合いがとても怖い。

 今こうして平気なのは考えないようにしているか。僕も皆と同じように現実を忘れようと必死なんだ……。

 けど、闘真は違う。本気で乗り越えようと……皆を助けようとしている。


 だったら、友達の僕がビクビクしていいわけがない……!



「……うん、僕も戦う。闘真くんと一緒に!」

「おうよ!」


 僕と闘真は力いっぱい握手をした。


 それからは、帰ったら何するかで盛り上がった。

 バカだと思う、魔王を倒せば本当に帰れるかどうか怪しいのに、そんな話を今するなんて。

 けど、闘真と一緒なら本当に出来る気がする……!


「お、もうこんな時間か」


 気が付けば、もう遅くなっていた。

 腕時計では零時を過ぎている。

 明日に備えて早く寝ないと。


「そんじゃあ寝るか」

「うん」


 闘真が部屋から出ると、僕は再びベッドの横になった。


 さっきより大分楽になった。

 こんなに心地よい布団に寝転がっても抜けなかった緊張が、アイツと話して大分緩和されたと思う。

 これでゆっくり眠れる。


「(……寝よう)」


 目を瞑る。

 張り詰めたものが切れたせいか、疲れや眠気がドバっと押し寄せた。

 真名はソレに逆らわずに流され、泥のように眠った。

転移系の主人公で友人と仲いいのってあまりありませんね。なんでなんでしょうか。

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