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学校での昼休み

やっぱり転移前の日常シーンって大事だよね。

 昼休み。

 真名は教室で闘真と雑談しながら弁当を食べていた。

 メニューは昨日の残り物の詰め合わせ。

 肉じゃがとミニトマトのサラダ。そして卵スープである。

 対する闘真は菓子パンのみ。

 焼きそばパンやらカツサンドなどの高カロリーばかり。

 ソレでこの体型を維持できるのだから世の中不公平だと真名は思った。

 もっとも、体型だけ言えば真名も人のこと言えないのだが。


 二人はしばらく談笑しながら食事を続ける。

 真名は聞き役に徹しながら食べていたおかげか、すぐ食事がすんだ。


「隣、いいかしら?」

「座るわね隣」

「(……っげ)」


 断りも入れず隣に座って来た虎崎と蛇原。

 真名はたまらず顔を引き攣らせた。


 今朝同様に教室の空気が悪くなる。

 闘真が睨みを効かせて黙らせるが、ソレでも根本的な解決にはならない。

 男子生徒は心の中で真名をボコることにした。


「……誘ってくれてありがとう、蛇原さんに虎崎さん。でも、今は闘真くんと食べているから……」


 真名は抵抗を試みる。

 断って周囲から反感を買う可能性もあるが、ずっと嫉妬の目線を向けられて飯を食うより幾分もマシだ。

 しかし、その程度の抵抗など意味をなさないとばかり美少女達は追撃をかける。


「え? たったそれだけ? ソレで足りんの? あーしのやろうか?」

「そうよ、男の子なんだからちゃんと食べないと! 私のお弁当、分けてあげるね!」


 更に圧が強くなったが、闘真がより強い睨みで全員黙らせる。

 こうして真名の席に学校の有名人が集まった。当然、関心はそちらに向く。


「……あ、僕が次の授業準備の当番だった!」

「え、ちょっと真名くん!?」

「おい真名!?」


 慌てて弁当を片付け、その場から飛び出る真名。

 そんな彼を引き留めようと蛇原たちは手を伸ばした。


「……まあ、いっか。どうせ明日は一緒の班だし」

「ッ!?」


 ゾクッと、真名の身体に嫌な悪寒が走った。
















「ふ~、やっと終わった」


 昼休み明け直前の理科室。

 僕は次の授業のためにこうして先生を手伝っていた。


「ありがとう佐藤くん。君はいい子だね」

「いえ、これぐらい大丈夫です。ではこれで」


 先生のお礼を聞きながら教室を出る。

 そこには僕が合いたくない人の一人がいた。


「うむ、教師の手伝いを率先するとは流石私が目を付けた男だな」

「た…鷹野さん」

「ん?何を他人律義にしている?私の事は下の名前で呼べと言ったはずだ」

「う…うん……」


 鷹野涙華。

 背中に届く綺麗な銀髪に雪のように白い肌。

 スラリとした長身に豊満な女性らしい肉体。

 我が校が誇る四大美少女の一人で、この学校の生徒会長をしてる。

 そしてなぜか僕によく絡む分からない人でもある。


「すいません、次の授業があるのでこれで」

「待ちたまえ。そう急ぐこともないだろう。……例の話、考えてくれたか?」

「お断りします」

「そ、即答か……」


 振り向かずに答えると、鷹野さんは困ったような声を出した。

 よし、これで嫌われただろう。もう関わることは……。


「ではもう一週間ほど与えよう」

「答えは変わりませんよ。僕は生徒会に入るつもりはありません」


 今度はちゃんと目を見て言う。

 意志の弱い僕だけど、これは譲れない。

 放課後はちゃんとやることが……僕しか出来ないやらなくちゃいけない事があるんだ。


「そう言うな。最近は『赤獅子』と『銀狼』の影響で学校内も風紀が乱れている。君にも健全な学校を維持するために手伝ってほしい」

「大袈裟ですよ。ソイツら、ただのニッコリ動画でパルクールやダンスしているだけじゃないですか」

「いや、最近は半グレと抗争もしていてそのことが動画に上げられている。ソレを見て煽る生徒が多数いるんだ」

「………」


 赤獅子と銀狼。

 赤いラインの入った黒いパーカーを身に纏ってライオンの仮面を被っているのが赤獅子で、銀色のラインが入った黒いパーカーを身に纏って狼の仮面を被っているのが銀狼。

 二人は夜の町をパルクールで駆け巡り、広い場所に降り立ってダンスを披露。ソレを動画に上げて世間から注目を集めている。

 最初はただ踊ったり走ったりだけだったんだけど、とある事件で悪い人と衝突して喧嘩に発展。それから暴力的な動画も出るようになったけど、ソレが逆に評判らしい。

 流石にそんな動画は自分からアップしてなかったんだけど、偶然目撃した通行人が動画を撮ってしまったせいで、喧嘩も出来るパルクールダンサーとして注目されるようになってしまった。

 そしたら血気盛んな人からも人気が出て乱闘を期待され、こうしてダンスやパルクールじゃなくて喧嘩目的で動画を見る人が多く成ってしまった。

 本当は普通にダンスして注目してもらうつもりだったのに。というかパルクールだって本当はしちゃいけないだからね!?


「は…ハハハ。ニッコリ動画は規制が緩いからね」


 無論、暴力行為の動画はアウトである。

 しかし、上の人が見逃せば事実上の同意である。

 人気だから仕方ないね。広告料で稼げるから仕方ないね!


「最近、赤獅子の顔を見るために中途半端なパルクールを覚えて追おうとする輩が出ている。現に怪我人が出たんだ。そういったバカ者を君に懲らしめてほしい」


 鷹野さんはそう言いながら僕に近づき、背中に胸を押し付けてきた。

 大きい。そして柔らかい。

 蛇原さんには負けるけど、それでもメロンみたいに大きくムニムニしたお胸は、この一発だけで僕の精神を篭絡させる……。


「ごめんなさい。急いでるんで」


 僕は誘惑を無理やり振りほどいた。

 流石にここまで拒絶を示せば諦めてくれるだろう……。


「そうか。では昼休みに生徒会室へ寄ってかないか? コーヒーぐらいなら出すから」


 マジかこの人。こんだけ拒絶しているのにまだ来るの?

 そんな風に生徒会長のしつこさに呆れていると、会長を呼ぶ声が聞こえてきた。

 生徒会の人たちだ。

 どうやら生徒会について会長に話があるそうだ。


「会長、ちょっとよろしいでしょうか? 大事なお話があります」

「そ、そうか。出来るなら後にしてほしい。私は真名と話している」

「ダメです。そんな男なんかに構っている場合ではありません」


 よし、今だ。さっさとこの場から去ろう。


「あッ、真名くん! 明日は同じ班だからよろしく頼む」

「………」


 聞こえない聞こえない、さっさと教室に戻ろう。

 僕は出来るだけ早く、走ることなくその場を去り、振り切るために階段を登った。


「(しっかし随分噂になってるな……)」


 赤獅子と銀狼。

 最初はダンスとパルクールの腕前を披露するつもりが、今では喧嘩師として名前が売れるようになった。

 こんなはずじゃないのにな……。

もう少し…もう少しで転移します!ソレまでお付き合いください!

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