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学生から捕食者へ

異世界で生きていくうえで、現代と違う生活への葛藤って必要だよね


「よくやった。最初は落第点だが、良くあの状況で逆転した」


 兎を倒した後、副団長は角兎の死体の脚を縛り、木につるし上げた。


『スキル:縄結びを習得しました』

「(こんな性と関係なさそうなものでもスキル取れるんだ)」


 スキルの習得に驚きながらも真名は観察を続ける。


 本来、ダンジョンのモンスターが死体を残すことはないのだが、例外がある。

 麻痺や毒などで仮死状態にされたモンスターを解体することで肉や骨などの素材が取れるのだ。

 真名の世界で言う活け造りといったところか。

 残酷な行為だがダンジョンで長く生きる為には必要な技術であり、この世界ではソロのベテラン冒険者などは習得している者が多いらしい。


 副団長は料理スキルで血抜きを行った後、解体作業に出る。

 血抜き、内臓の摘出、毛皮を剥ぎ取り、肉と筋を切り取る。

 その工程に若干引きながらも、真名は興味深そうに眺めた。


「生き物を殺すのは初めてか?」

「………はい」

「そうか。やはりお前もそうなのか」


 副団長は解体の手を止めて真名に振り向く。


「だが、魔王軍と戦う以上、モンスターを殺すのは避けられない。ソレに、お前も肉を喰う為に何かを殺してきたろ?」

「………!?」


 その通りだ。

 真名たちも生きるために、他の生物を犠牲にしている。

 いくら文明的になろうが、時代が進もうが、根本は変わらない。

 ただソレを見えないように隠しているだけ。今日も誰かが糧を得るために、誰かが“生物”を“肉”にしている。


「食え。お前が獲った肉だ」

「………いただきます」


 隠してきたリアル。

 当たり前のことだが見ようとしなかった現実。

 突き付けられた肉を、真名は受け取り噛みしめる………。



「………」


 そんな彼を、一匹の蛇が見つめていた。









 とあるダンジョン。

 草原のようなその場所で、巨大な角のモンスターが草を食べていた。

 ビッグホーンバッファロー。

 頭よりも大きな角を持つウシ型モンスター。

 そんなモンスターを狙う捕食者が一匹、草むらの影に潜んでいた。


「らぁ!!」


 モンスター目掛けて草むらから捕食者が飛び出す。

 飛び掛かりの勢いを利用した右ストレート。

 突き出された拳はビックホーンバッファローの顎に命中し、カクンと頭を揺らした。

 巨大な角のせいでバランスが悪いのだ。

 本来は己の身を守り、敵を倒すための武器なのだが、ソレが仇となった。


「ぶ…おぉ……」


 脳が急に揺れることで脳震盪を起こし、牛は気絶。

 その隙に捕食者は獲物の上に乗っ掛かる。


『スキル:弱点突き 発動』


 そして、スキルで頸椎を突く。

 これで獲物は仮死状態になった。もう抵抗の心配はない。


「それじゃ、加工するか」


 捕食者―――真名は仕留めた獲物を担いだ。



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