スキルの説明
訓練の終了時間。
鐘の音が鳴ると同時、グラウンドにいた兵士たちは次々とその場で横になった。
「つ、疲れた~」
「今日もクタクタだぜ……」
屈強な男たちがぼやいている中、ピンピンとしている者がいる。
佐藤真名である。
「アイツ元気だな~。本当にアイツらと同じ転移者か?」
「あ?どういうことだ?」
「いや、同僚から聞いたんだけど、ほっとんどの転移者が体力も根性もないガキだって」
「マジかよ、真名なんてあの副団長のしごきに付いていけるんだぜ?」
「ああ。真名は俺らから見ても根性あるからな。それにスキルもあるだろ?」
「スキルって……ああ、体力増強のスキルか。でもアレって“アッチの体力”だろ?訓練で関係あるのか?」
「それがあるらしいぜ? 今、真名が聞きに行ってるよ」
訓練が終わった自由時間。真名は副団長の元へと向かった。
「副団長、二つほど僕の話を聞いてくれないでしょか?」
「うん、なんだ?」
副団長は特に気にした様子もなく答える。
真名は何処かホッとした表情をした後、質問を開始した。
「まず、淫魔の祝福ってソッチ系のスキルを取るためのようなものですよね?」
「まあ……そうだな」
「では、何故戦闘でスキルを獲得できるんですか?」
淫魔の祝福は文字通り性交に関するものである。
そのため、異性を誑かし、嵌らせるためのスキル習得する。
というか、そういったスキルしか覚えられない筈なのだ。
しかし、真名はそのはずのスキルが戦闘に応用出来ている。
そのことに彼は疑問を抱いていたのだ。
「うむ、そうだな…スキルとは曖昧なものでな、たとえ違う用途に使っても、何なら全く違う行動でも、スキルの効果に矛盾がなければ成立するんだ」
「?」
真名は言っている意味が分からず首をかしげる。
「そうだな、例えば料理スキルに『包丁捌き』という食材を奇麗に斬るスキルがあるんだが、コレを戦闘に使う事で相手を剣で真っ二つにすることが出来る」
「え?でも包丁と剣じゃ違いますよね?」
「ああ。だが剣を包丁に、敵を食材に見立てることでこのスキルは発動するんだ」
「……けっこうスキルっていい加減ですね」
「そうだ、そのいい加減さを利用して様々な用途に使うんだ」
副団長は真名の両肩を優しくつかんだ。
「真名、これからお前は不名誉なスキルを習得するだろう。しかし不貞腐れてはいけない。使い様次第ではきっとお前に役立ってくれるはずだ」
「………ハイ!」
「いい返事だ。だが注意もしておけ。いくら応用出来るとはいっても、本らの戦闘スキルには勝てない。もし料理スキルの『包丁捌き』と戦闘スキルの『斬撃』がぶつかれば、
勝つのは戦闘スキルの方だ。決して自分のスキルを過信しないように」
「ハイ!」
元気に返事した後、次の質問へと移る。
「では二つ目です。……僕は他の聖徒に会えるのでしょうか?」
「ん?いいぞ」
あっけらかんといった様子で、副団長は答えた。
「え?」
「そもそも何故今まで誰とも会わなかったんだ? もしかして真名、お前は友達がいないのか?」
心配した様子で聞く副団長に、真名はムカッとしながらも礼節を弁えて反論した。
「だ、だって僕は隔離されてるんですよね?だったら誰とも会ってはいけないんじゃないんですか!?」
「ああ、ソレはお前が淫魔のスキルを発動させて余計なトラブルを起こさないためだ。訓練は兎も角、日常なら問題はない」
「そ、そうだったんですか……」
ガクッと、真名は俯いた。
「まあ、友達がいるならちゃんと顔を見せてやれ。こんなご時世だ。会える時に会って遊んだほうがいいぞ」
「はい」
力関係としては
祝福>魔法・スキルです。




