あーしは頑張る
『エリカ、あんた、、合宿来るんじゃないんだろうね??』
『え?』
『あんたが来るとさあ。部の空気が乱れるんだよ。』
私の目の前にいるのはケイさんだ。
『はあ。そんなこともわからないのかい、この青二才は。』
『え、いや、でも、、、りょーちゃんは全員にって、、、』
『そんなのはね、建前なんだよ!わかるだろ?部長様なんだからさあ!部員を公衆の面前で省けないことくらいさ!』
ケイが肩を押してくる。
私をここから追い出すかのように。
部室は、ケイさんとその取り巻き数名が私を囲んでいた。
『わかったかい?!来るんじゃないよ!あんたは部室の掃除でもしてな!!』
汚れた雑巾を投げつけられる。
取り巻きはニヤニヤしながら、こちらを見ている。
そうか。
あんな事件を起こしたのだから、私は要らない人間なのだ。
私は、、、
『今北産業!』
突然、部室の扉が開く。
『やいやいやい!なんだか穏やかじゃあないねえ。』
『ルナ、、あんたなんで、、、』
ルナさんだった。
『ケイさあ、こんなことしてるのはりょーちゃんの指示なのかな??それとも、ケイさんのボランティアかな?」
「・・・・ルナあんたには関係ないだろ。」
「関係ない?同じ部員じゃないか。それに後輩。私たちがいなくなったあとはこの子らがこの部を背負うんだからさ」
「・・・・だったらなんなのよ。背負うからこそ、今からお邪魔虫にはいなくなってもらった方がいいじゃないかね!?」
「エリカがお邪魔虫ねえ・・・・・。」
ルナさんはケイさんに近づく。
「私からしたらねえ。こうやって可能性を摘み取る、あんたの方が邪魔だと思うんだけどさあ・・・・」
ルナさんはケイさんの頬を片手で鷲津噛む。
ケイさんはその手を払う。
「なんなのさ!りょーちゃん様の天下にするためにもスキャンダルは摘んでおきたい私の気持ちも知らない癖に!」
「スキャンダル?ああ。スキャンダルになるかどうかはさ・・・・エリカを追い出すよりさ。周りの口が軽そうな
側近たちにくぎを刺しておいた方がいいよ。当事者よりさ、無関係の関係者の方がこういうのはタレコミしたがるから。」
そういうとルナさんは指でケイさんの眉間を小突いた。
「く・・・・行くよ!」
ケイさんの号令で部室からぞろぞろと部員が出ていく。
「エリカ、大丈夫だったかい?」
「・・・・・」
「エリカ?」
「ルナさん!!ちゃねらーなんですか!!??」
「は??」
「だって!!今北産業って!!」
「ああ・・・・なんとなく最近目にすることが増えてねえ・・・・」
「ああ。。。本当に!!あいつらマジ!!あたおかなんすよお!!」
♦♦♦
エリカの話し方やキャラが変わったように見えた。
いや、こちらが本当のエリカだったようだ。
「本当にマジキチなんすよ!!あいつらこうやってあーしにまとわりついて・・・・TNJ女子なのに・・・本当
もう香ばしい奴らなんす!!」
エリカはどこからともなく持ち出した、鉢巻を頭にまいて、まくしたてるように話始めた。
「あーしのおっぱいに嫉妬してるんす!!本当、乙なんす!!あーやってられねえって感じっすわ。」
「なあ・・・エリカ・・・・・」
「え?なんすか?」
「その話し方はいったい・・・・」
「あ、あーしの話し方は本当はこんな感じなんす!ほら、ダンス部ってお上品なの多いじゃないすか?だから
馴染むようにしたくて、話し方を変えてたんすけど・・・・ほら話し方かえるって結構、きついじゃないすか。
まあ・・・・だからその・・・」
「ああ・・そうなんだ。」
エリカを見る。
スラっとしながらも、タンクトップに見事な双丘が実っている。
ホットパンツだからから肌の露出も多く、しかし髪型は茶髪をしっかり肩まで切りそろえていて
清楚系女子っていう感じである。
しかしだ。
ネットスラングを巧みに使い、あーし言葉を使うあたりは清楚系というかギャップ萌えという感じである。
「そのさ・・・エリカは、あの事件の時にはどっちのエリカだったんだい?」
「え・・・・あーーーまあもう昔のことすからかねえ・・・・傷はあるんすけど。。。まあ、こんな話し方だと
キモオタすら近づかねえって感じすからね。お上品バージョンでやってたんすよ。」
「なるほどね。そしたら、ああいうことになったと。」
「ええ・・・まじ自分的にもゴミPだったっす。やっぱなんつーかね、憧れの瑠璃大学のダンス部に入れたから
舞い上がってたんすかね。」
そう瑠璃大学のダンス部というとなかなかの強豪でかつ就職のパイプも太いのだ。
ダンス部に入るには珍しく入部試験というのがあり、パスしなければ入れない。
だからここにいる時点でエリカもケイもりょーちゃんもみんな基礎的なダンス能力は高いのだ。
「まあ・・・とはいえあんなことをやってしまったし、2軍落ちっすけどね。せめていいところに就職できればと
思うんすけど・・・」
「いや、エリカ。まだチャンスはあるよ。1軍に入ろうよ?エリカの踊り見ているとさ、すごい可能性感じんだよ、あたしは。」
「え・・・・何を言ってんすか。冗談きついすよ。どうせ、ケイさんの取り巻きで占めるんでしょうから。」
「大丈夫だよ。私が全面的にバックアップするからさ。」
「え・・・・いやまあ気持ちはうれしいんすけど。。傷物っすよ。ダンス部の。それと一緒にいるとルナさんの
品性も問われるというか・・・・・」
「私はいいんだよ。ただ後悔したくないだけさ。命を何に使うかって言われたら未来あるダンサーを支えることだからさ!!」
「はあ・・・大げさっすね。人生なんてこれからなんすから。20代からそんなぼろ雑巾を縫うような仕事しなくても・・・。」
「何いってんのさ。命短しだよ。それにエリカには未来があるからさ・・・サポートさせてよ!」
「は・・・はあ。まあ、ルナさんがそこまで言うんなら同じ神輿を担ぐことにさーっすわ。どうかよろしくお願いするっす!!」
エリカをサポートし1軍に送り込む。
それだけで私のこの部活の底上げをできるという大義名分を得たのだ。
そう、これから私の仕事は彼女のサポートなのだ。