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孤独な女

ルナさんと朝ご飯を一緒に食べて、2限の時間になったので別れた。


なんだったんだろう。


「ええ。とてもきれいです。よく整ったお顔立ちにさらさらのショートヘア。そして魅惑的なスタイル。

みんなのあこがれです。」



そのあとのルナさんの表情。

それまで朗らかに笑みを浮かべていたルナさんは氷のように冷たい表情になった。

すべての感情をその氷の中に包み込んで外にださないようなそんな表情。


「私、地雷ふんじゃったかな・・・・。」


昔から人付き合いはあまり得意ではない。

何か話せば地雷を踏むし。気遣いが足りないといわれる。


そう、おととしの夏合宿もそんな私の一言が発端だった。



あの時のことを思い出すと今も心臓が締め付けられるように痛む。

それは、静寂な水面に落とした一粒の水滴に過ぎなかったのかもしれない。

でも私の一粒で部全体にその波が伝わり、ついには大きな波となって私に帰ってきた。



「はあ・・・・。」


今年はさすがにいかないとまずいだろうか。

夏合宿。

長野の山奥で行われるその合宿はある種の閉鎖空間だ。


そんな中に2週間もいたらどうなるか。

ダンスのことだけ考えられる部員なんて限られている。

りょーちゃんとルナさんくらいだろう。


後の部員は、他の部員を蹴落とすか、同姓しかいないなか高ぶった性欲をぶつけ合う。

もしくはその性欲をたたきつけられる。

もしくは暴力に訴えて、暴力のはけ口になる。


私はまた何かの的になるのだろうか。

何もせずにダンスのことだけに打ち込んでいればいいのに。

私にはそこまでの集中力はなかった。


だから・・・・。



「なんだから2限受ける気がなくなっちゃったな。」


部室にこもるのも面倒くさい。

だって、りょーちゃんの取り巻きがあの空間を牛耳っているに違いないから。


「一度、家に帰ろうかな・・・。」


今日の授業はどれも出席日数自体は足りているから、1日くらいさぼっても何も問題ない。

シャワーも浴びたい。



♦♦♦

鏡の前に立つ。

私は着てきた服を脱ぐ。


むわっと朝の練習のにおいが洗面所を支配する。

制汗剤と朝が混じったあの独特なにおい。


とても汚らわしい。

私は自分の体を見る。


女性らしい体つき・・・というのは何を指し示すのだろうかわからないが、

それなりの胸元とくびれとヒップラインはやはり通りすがりの男性の目を奪うのだろう。


なめまわすように見られることも多い。

それがとても嫌で、それは別に男性だけでなく、同姓からのそういった欲情の目というか

妬みの目というかその類のものは非常に嫌悪感がある。


だって・・・・


洗面台にあるダンス部の集合写真を見る。

ダンス部に入った年の新歓コンパの写真だ。


このころはまだ・・・・・



「ああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!」


写真立てごと投げつける。

洗面台の鏡にそれがあたり、鏡にひびがはいった。

写真立てのそれもひびが入る。


「痛っ・・・・・。」


指先から血がにじむ。


割れた破片をつかんだからだ。


「こういう癇癪というか直情的な行いが・・・自分を苦しめているのにね。。」


ただその指先から出た血を見てうらやましいとも思った。


私の生殖器からは二度とそれは出ない。


そういう体にされてしまったのだから。



♦♦♦


「ふう・・・・。」


シャワーを浴び終えて、

髪を乾かすこともなくベッドに下着だけで座り込む。


「もう何も・・・考えたくない・・・・」


そう。

私はもう。




テーブルの上に置いてある書類を遠目で見る。



「夏合宿のしおり。」


もうすぐ始まる夏合宿のしおりだ。

今回は宿代も交通費も納入してしまっている。


いかないと金をどぶに捨てるようなものだ。



誰か・・・・私を助けてくれる人はこのダンス部にはいないのだろうか。

また同じように・・・・・・・・・。



ピロン!!


携帯のチャットアプリが鳴る。


「なんだろ・・・・?」


ダンス部のチャットだった。




「昼休み、部室に全員集合するように。」


りょーちゃんからのチャットだった。

あんたの部活じゃないのに・・・。


でもこれ以上波風を立てるのは嫌だった。

いそいそと着替えて家を出発した。

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