表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/78

蕩ける氷

「エリカって、この辺住んでいるんだ。」


「はい、というか大体のここの学生はこの辺に賃貸で住んでいると思うのですが。」


エリカはそう言ってコーヒーをすする。

唇に黒い水滴がつく。


「そうなんだ。私はこの辺に借りてないんだよね。」


「そうなんですか。それはまたどうして?」


エリカはベーコンレタスサンドにかぶりつく。

かみ切ることができなかったベーコンがパテからスルリと出てくる。

ベロンと唇から垂れ下がったベーコンをエリカはすするように飲み込む。


「ルナさん?」


「ああ、ごめん。えっとね、そうね、あまり意味はないんだけども、そうね。なんとなくたまり場になったらいやだなって思ってちょっと離れたところに借りている。」


「ああ・・・ルナさんくらいだったらそういうこともありますよね。」


エリカが視線を床に落とす。

少し顔が赤くなっている。


「あ、いや!!そういうんじゃないの!別に男をとっかえひっかえとかじゃなくて・・。」


「あ、いや、私もそういうつもりで言ったわけじゃないんです。そのルナさんってとてもきれいだから・・・・。」


「私がきれい??」


「ええ。とてもきれいです。よく整ったお顔立ちにさらさらのショートヘア。そして魅惑的なスタイル。みんなのあこがれです。」









ふとカフェの外を眺めてみる。




「憧れか・・・・。」



夏らしく、大学の中庭ではセミがけたたましく鳴いている。


一限に遅れたであろう、化粧だけはばっちりしている女子学生が走って研究棟に走っていくのが見える。


今年の夏くらいは、海にでも行きたいくらい暑そうだ。




「る、ルナさん?」


「ああ。。。ごめん、なんだっけ?」


「あ、いえ・・・なんだかごめんなさい。」


「今年もさ暑くなりそうだよね。」


「ええ・・・・」


「うちらもさ、そろそろ夏合宿だね。」


「はい。」


「エリカは夏合宿は来るんだよね?」


「ええ。でも結構いやなんです。あ、ダンスが嫌なわけではないんですけど・・・・」



エリカのその先の言葉は知っている。


よく膨らんだ胸元、頼りなさげでいつも頭の上から汗がとびってますくらいの焦りぐあいの表情。


そして何を言われても言い返すことなく、

我慢してしまうような性格。


ケイ一派の恰好の的だ。


「おととしは来たよね。」


「ええ。でもおととしは・・・・」


そうおととしの合宿はとてもひどかった。

ダンスの練習自体は何も問題なく、滞りなくしまったのだ。


ただ。

エリカは嫌な思いをしたようだ。


私もなんとなくだが、聞いている。


「ルナさんは今年は・・・来られるんですか?」



「そうだなあ。行きたいんだけどね。うん、なんとか都合あわせていこうと思っているよ。」


アイスコーヒーの氷が解けて、カランと音を立てる。


今年はとても暑そうだ。


合宿はもうすぐだ。

そうだ、今年こそは合宿に行きたい。









だって・・・・。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ