↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

43/85

こぼれ話 :天虹国の統治制度

 天虹国(てんこうこく)の王城を舞台に色々な部署が登場するお話なので、制度や部署を備忘も兼ねて少し整理してみました。気になる方はぜひ覗いてみてくださいね。


※用語集に近いものですので、読まなくても影響なく本編をお楽しみいただけます。

※まだ登場していない部署については簡単な設定となっています。

※局については代表的なもののみ記載。実際には各院にもっとたくさん局があります。

※本編に合わせて適宜、修正・更新して参ります。



 「しおうご……ええっと、しおう、しおうごっぐふっ、いっつ、し、しらはんだ〜(舌噛んだ)」

 「さっきから何をしている」


 振り向くと背後に白蓮(はくれん)が立っていた。腕を組んで私が広げた書物を覗き込んでいる。


 夏煌祭(かこうさい)が終わってから、急激に暑さを増した日差しが照りつけるようになったある日の昼下がり。昼食後の休憩時に、私は執務室の応接セットの卓に広げた書物と奮闘していた。


 「……諸外国の統治制度研究、比較とその実践? 一体どこからこんな本を見つけて来たんだ」

 「葉周(ようしゅう)様から時間がある時に読むようにと渡されまして」

 「葉周に……いつ渡された?」

 「……十日ほど前でしょうか」

 「本当は?」

 「本当は……一月ほど前です! どうしましょう白蓮様、助けてください!!」


 私は体を捻ると白蓮の清々しい浅葱色(あさぎいろ)の上着の裾に縋り付いた。


 「葉周に渡されて一月も放置するとは、其方意外と気骨があるのだな」

 「気骨なんてありませんよ! ただただ慌ただしくて読む時間が無かっただけです。何度も読もうとしたけど、その度に色々起こってしまって……そして眠気も……」


 腕を組んだ白蓮がわずかに視線を逸らす。


 「……まあ、確かに。多少同情の余地はあるか」

 「そうでしょう、そうでしょうとも! 白蓮様、何かあんちょこのようなものをお持ちではないでしょうか? 流石に全部読むのは大変で……」

 「あんちょこ? それが何かは分からないが、どれ貸しなさい。ふむ……ああ、なるほどな、入門書的なものか。一見難しそうだが文章はわかりやすい」


 白蓮は椅子越しに手を伸ばし、卓に広げた書物を手にとってぱらぱらとめくる。

 そんな白蓮を私は疑いまくりの半眼で見つめた。


 白蓮の言うことを鵜呑みにはできないだろう。完全に見た目に惑わされがちだが、目の前の男は研究所を含む医薬院全体を統括するこの国きってのインテリなのだ。前の世界で例えるならば、某国立大学の教授や国立研究所の研究者の発言だと考えるとしっくりくる。


 往往にして、専門家にとっての「分かりやすい」というのは一般人のそれとは少々視点が異なる。文中の言葉の定義が明快であるとか、反論が網羅的に検証されているとか、引用された参考文献や事例が適切であるとか、そういうことを指している場合が多いのだ。

 故に、白蓮の言う「分かりやすい文章」なるものが、果たして一般人にとっても分かりやすいかどうかは全くの別問題なのだった。


 葉周に何かのついでにさらりと渡された、この立派な題名に恥じぬ分厚さを備えた書物も、私がぱらりと数ページ流し読みした感じでは専門コースの院生が学ぶ教科書というのに近い。確かに内容は網羅的で説明は懇切丁寧だが、決して門外漢が読んで分かりやすい内容ではなかった。


 葉周からすれば、主の属する医薬院の組織構成もしどろもどろにしか答えられなかった私に、主に恥をかかせぬためにはせめてこのぐらいの内容は理解して欲しいということなのだろうが、それにしても要求水準が高すぎる。


 「仕方ない、この国の制度のところだけは私が掻い摘んで説明してやろう」

 「この国の制度のところだけ……」


 上着の裾を掴んだ私は渾身の目力で白蓮を見上げた。


 「……他国についてもさわりだけならば」

 「ありがとうございます!!」


 人目を憚らずに盛大なガッツポーズをかます私を尻目に、白蓮は大きな溜息を吐くと向かいの席に腰を下ろした。

 そうして渋々ながらも、この国、天虹国の統治制度を中心に白蓮が要約してくれた内容を、私は一心不乱にメモしたのである。



<以下、澪のメモ>


至王五師十院制しおうごろうしじゅういんせい

一人の王のもとに、五老師と呼ばれる五人の宰相級の人物が集まり、王と五老師の対話によって国の大まかな方針が決められる仕組み。決められた方針に基づき、各機能ごとに十個に分けられた「院」という機関が実務を執行する。


五老師ごろうし

五老師とは五人の宰相級の人物の集まり。国政に対し非常に強い発言権を持つ。


十院じゅういん

執行機関。日本で言うところの省庁にあたる部署。各院の下により詳細な執行機能を有する局、その下に課がある。各院の代表を院長、補佐を副院長、各局の代表を局長という。 


以下は各院の概要。


行政院(ぎょうせいいん)」(院長:蓬藍(ほうらん)

内閣官房に相当する部署。十院の運営、各院間の調整、国単位の交渉事、また各地方の施政も担う。

内政局(ないせいきょく):十院の運営

外政局(がいせいきょく):外国との交渉

地政局(ちせいきょく):地方政治の統括

隠花局(おんかいん):間諜を専門とする影の部隊


宮内院(くないいん)

宮内庁に相当する部署。主に王族のお世話、奥宮の運営全般を担う。重要な職務の一つに王城の祭礼の取り仕切りがある。

御前局(ごぜんきょく):王族のお世話係、婚礼関係など

仕方局(しほうきょく):奥宮の運営全般

祭礼局(さいれいきょく):(輝晶(きしょう)夏煌祭(かこうさい)冬麗祭(とうれいさい)など祭礼全般

食彩局(じきさいきょく):奥宮の食事、厨の管理

近衛局(このえきょく):王族、要人の身辺警護(軍兵員より選抜され出向)(海星(かいせい)


人事院(じんじいん)」(局長:弦邑(げんゆう)

王城において、王族以外の人事を司る部署。登用試験、教育、庶務と、幅広い業務を受け持つ。

登用局(とうようきょく):官吏登用試験全般

学事局(がくじきょく):国内全般の教育を管理する

育成局(いくせいきょく):管理など王城で働く人員の教育

庶務局(しょむきょく):総務に相当する仕事

給与局(きゅうよきょく):給与の管理(給与予算は財歳院の管轄だが、給与支給は人事院の管轄)


医薬院(いやくいん)」(院長:白蓮(はくれん)

厚生労働省に相当する部署。御殿医はもちろん、王立の治療院、各部署と連携した研究、市井の衛生管理、疾病対策など幅広い業務を受け持つ。

療養局(りょうようきょく) 

 王府療養所(おうふりょうようじょ);国立病院のようなもの(松穂(しょうほ)

  宮内派所(くないはしょ):奥宮、後宮に駐在し療養所と同じ機能を提供

   御典医(ごてんい):派所の中に御殿医がいる(律明(りつめい)

   後宮医(こうきゅうい):後宮の貴妃専門の医師(梅宝(ばいほう)


薬種局(やくしゅきょく):薬の生産、管理(斉澄(さいちょう)

衛生局(えいせいきょく):市井の衛生、疾病管理(史恩(しおん)

研学府(けんがくふ):様々な研究をおこなう(亜南(あなん)) 


財歳院(ざいさいいん)」(院長:我陵(がりょう)

予計局(よけいきょく):予算編成

歳出局(さいしゅつきょく):歳出管理(冬利)

出納局(すいとうきょく):日々の支払い業務など

徴税局(ちょうぜいきょく):税の徴収・管理


外商院(がいしょういん)

経済産業省に近い役割。交易や国全体の商業振興を担う。市井の商業組合とのつながりが深く、官吏には貴族以外の出身者が多い。外商院の奮闘によって天虹国は商業大国となったが、伝統を重んじ貴族出身の官吏が多い宮内院などとは常に反りが合わない。

商業局(しょうぎょうきょく):国全体の商業振興、主に国内での市井の商業組合との折衝

渉外局(しょうがいきょく):国産品の販売、対外交渉、主に国外での折衝

購買局(こうばいきょく):王制品など国単位の購買、王城の購買と担当


軍兵院(ぐんへいいん)」(輝晶(きしょう)

軍事や警備全般を司る部署。

軍事局(ぐんじきょく):紛争時の軍事作戦の指揮・実践部隊(九虎(きゅうこ)

防衛局(ぼうえいきょく):主に国境の警備や管理

警護局(けいごきょく):宮内院近衛局と連携し、主に王族や要人の外出・外国訪問時の警護を担当

警備局(けいびきょく):王城警備、市井警備網の監督(沈雨(じんう)


土木院(どぼくいん)

治水局(ちすいきょく):運河・水運の建造・管理

運路局(うんろきょく):街道の建造・管理

建造局(けんぞうきょく):国主体の建造物の建造・管理

地測局(ちそくきょく):自国、他国含めた測量・地図製作


刑司院(けいしいん)

裁定局(さいていきょく):裁判所的役割

刑務局(けいむきょく):刑期・罪人の管理


司法院(しほういん)

立法局(しっぽうきょく):法律の研究・発案

施法局(しほうきょく):法の周知、施行

調伺局(ちょうしきょく):捜査機関

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。