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槍術部ー1

めっちゃ短いです。申し訳ない。

 合同訓練の次の日は、朝の点呼に始まり、午前に座学、午後は実技と報告書類の書き方を習った。いつもなら放課後に自主トレーニングをするが、今日は部活動を覗きに校舎とは別の部室棟へ向かった。入口の案内図を確認したら、目的の部屋へ一直線に歩く。

 その部屋の前に到着し、人の気配が部屋の中にあるかを確認する。声は聞こえる。意を決して、扉を叩く。


「はいは~い!……こんにちは、槍術部で~す。お、見ない顔だね」

「はい、実は入部を考えていまして」

「お~!じゃあ、部屋入って、入って。ルイ~、入部届持ってきて!」


 自己紹介もしないまま、元気なお姉さんに部屋へと押し込まれる。部室に入るともう一人男性がいた。言われた書類を探しているのか、見えるのは背中だけだがお姉さんと同じ制服で私の憧れのものだった。


「はい、座って座って!授業終わって来た訓練生かい?」

「はい。509期生のマーガレット・ハウサです」

「あちゃ~、同期は今、訓練場なんだよね。私はジュナルミア。えーっと」

「503期生だ。俺はハーベルイド・ナンセン。504だ」

「彼はルイって呼んで。私はジュナでいいよ」

「よろしくお願いします。あの、先輩お相手に愛称は」

「かしこまらなくて大丈夫。部員の後輩たちも呼んでるから、安心して。ところで、この時期に入部なんて珍しいね?」

「いろいろあって、今から戦闘スタイルを変えようと、槍術部(ここ)に来ました」

「ほほ〜う。詮索するのは野暮だけど、今のスタイルと、目標、は教えてくれないかな?」

「今は、スピード重視で短剣を使っています。目標は、ケルピー騎兵隊に入る、ことです」

「おやおや、今は可愛い女の子にも人気なのか、あそこは」

「自分が所属している部隊を、あそこ、とか言うな」

「聞いてるのは2人だけだろ?マーガレットちゃん、入部届、書いて書いて」

「あ、はい」

「おい、無理矢理書かせるなよ」

「入部の意思は確認したし、理由も聞いた。マーガレットちゃんは、進んでペンを持った。問題ないだろ?」

「……はあ。部長のお気に召すままに」

「君の、そういうとこ、とても好ましいと思うよ」

「貴女のことは、諦めが肝心、だと学びましたから」

「彼らにも学んでほしいものだ。おっ、書き終わったかい?……うん、問題ないね」

「ありがとうございます。あの、活動日程とかは決まっていますか?」

「お〜っと、書類は、ありがとうルイ。一応、2、3日に一度訓練場を借りられる日に活動してる。普段は部室(ここ)にいないんだけど、今日は偶々。運が良かったね」

「そうだったんですね。あのミーティングとかもありますか?」

「月一であるね。翌月の活動日程と内容を決めたりしてる。まあ、息抜きに、今日みたいに部室を拝借して、喋ってる時もあるけど」

「息抜き、ですか」

「そう。任務でも槍、訓練でも槍、四六時中握ってたら嫌いになっちゃうからさ。部活では後輩に指導したり、ただ何もしなかったり。案外、離れる時間も必要なんだよ、後輩ちゃん。とは言え、君には時間がないか」

「はい、そうですね」

「ここで、提案!今、面倒見てる子がいないから、私でよければマンツーマンで教えてあげるよ」

「本当ですか!逆に、こちらからお願いしたいことです」

「可愛い後輩ちゃんのためなら、一肌も二肌も脱いじゃうよ!」

「おい、制服は脱ぐな」

「君も、この通気性の悪さを知っているだろう?普段着としては、この国の気候に適していない。そう思わないかい?」

「緊急要請があった時、着替える時間が無駄だと言っていたのは」

「だ~っ、分かった、分かった。とりあえず、訓練場に行こう、マーガレットちゃん」

「え、あ、はい!」

「あー、マーガレットさん。この人、勢いだけはすごいから、意思表示はちゃんとしたほうがいいよ」

「いえ、今日は時間があるので大丈夫です。ご忠告ありがとうございます」

「なら、いい」


 私はジュナルミアさんーージュナ先輩に押される形で、部室の外に出る。ハーベルイドさんーールイ先輩は残るかと思いきや、施錠をして私たちの後ろを付いてくる。訓練場までの短い距離を歩きながら、ジュナ先輩が話を切り出す。


「私は感動したよ。ルイが、自分から話しかけていることに!」

「俺のコミュニケーション能力が、欠落していると思ってたんですか?」

「いやね、君。同期からご飯誘われたって、時間聞く前に断ってるじゃないか」

「見え透いた誘いに乗るほど、寂しくはないんでね」

「うわー、聞いた?マーガレットちゃん。此奴、女子から告白された回数、うちの部隊でダントツなんだよ?」

「そ、そうなんですね。たしかに、背も高いし、カッコイイと思いますけど」

「わっ、騙されちゃダメだよ!」

「人聞き悪くないですか?俺を男除けに使ってるの、誰ですか?」

「私だが。……え、なに、私がいるから、恋人を作れないのかい?」

「半分、的を得ていますね。貴女、暴走癖あるんで、離れられないんですよ」

「特別手当、貰ってるからね!結局、金じゃないか」

「そういうことで。着きましたよ。他の部に迷惑をかけないように」

「なぜ、私の目を見る」

「気のせいだ。二人に言ってる」


 到着したのは、授業でも使う屋外訓練場の1つ。その一角で、槍を振るっているのは10人ほどだ。その近くで、様子を見ている4人はジュナ先輩と同じケルピー騎兵隊の制服を着ている。そのうちの1人がこちらに気づき、声をかける。


「今日はこっちに来ないんじゃなかった?」

「可愛い後輩が来なければ、ここにいなかっただろうね。紹介しよう、新入部員のマーガレットちゃんだ!」

「マーガレット・ハウサです。よろしくお願いします」

「どうも。俺はアーレン・ベイン。ケルピー騎兵隊に所属してる。……待てっ、新入部員⁉︎」

「そうそう!新たに入部してくれた後輩だ!私がマンツーマンで教えるから、野郎どもは手を出すなよ!」

「いや、部長!俺たちを信頼してなさすぎるのでは⁉︎」

「こんな可愛い子を、ほっとく男がいるのかいっ?」

「……鼻息荒い貴女も同類では」

「ルイ!わざとだろう、聞こえているんだよ」

「あっ、あの、ジュナ先輩。部員のみなさんに挨拶に来たのではないのですか?」


 話があらぬ方向に、しかも槍を握って訓練に励んでいた部員たちの目もこちらに向いている。それらは、またいつものやりとりだと呆れたような目線で、私には気づいてないように思える。


「おう、そうだった。みんな、訓練の手を止め、てるね。紹介しよう。槍術部の新たな仲間だ。私が指導を担当するが、彼女は槍を握ったことがない。可能な限り手を差し伸べてくれ」


 さあ、と背中を押されるように、訓練中だった部員たちのほうに一歩踏み出し、声を張り上げて自己紹介をする。


「訓練生のマーガレット・ハウサです。この時期に入部し、槍術も初めてで迷惑をかけると思いますが、これからよろしくお願いします」


 画して、私は今日から槍術部の部員になった。


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