③ 日向支隊
「各部隊の分担はこれで良いですね。
ざっと周囲を見て回りましたが、倒壊した建物などで見通しの悪いところが多く認められました。その辺は私たちの飛天で瓦礫の撤去をしたいですがよろしいですか?」
「いや、それは助かるな。是非お願いしたい」
怜奈の提案に第41師団の師団長は嬉しそうに頷く。大柄で真っ黒に日焼けしている姿はいかにも叩き上げという印象をもった。顔も鬼瓦みたいな強面だったが話してみると物腰は柔らかい。良い意味で期待を裏切られたと玲奈は内心ほっとしていた。
怜奈は横に控えている美佐緒へ目を向けた。
美佐緒は持っているタブレットから視線は上げた。
「とりあえず地上の警戒線は構築できましたが、問題は地下ですね。大きなところは監視カメラ、動体センサで監視してますが、コクーンで寸断、崩落した狭い下水道にはまで手が回りません」
「とりあえず、人が通れるぐらいのところをカバーできれば良いと思うわ」
「そうなんですが、そんなところが無数にあって……
なにより機材が圧倒的に足りないのです」
「機材の補充は申告済みだが、何時送ってくるか連絡もよこさんのだ」
野分師団長が忌々しそうに言った。
と、そこへ副官がやって来た。
「師団長、上から大型ヘリが発着できるポイントを大至急連絡しろと言ってきましたよ」
「ああ? 大型ヘリだと?
そんな場所どこにあるってんだ」
「100×100の平地ですよね……
待ってくださいね。スカウターの航空地図を3Dモデリングしてますからすぐに分かりますよ」
美佐緒は再びタブレットへ目を落とす。
「だぶん、すぐそこの空き地が使えます。
でも、瓦礫がすこし邪魔ですね。飛天で片付けますか。隊長?」
「そうね。そうして」
飛天で空き地を確保して2時間ほどたった頃、空の彼方に黒い小さな点が現れた。点はたちまち大きな染みのようになり、さらに複数に分離した。バリバリという轟音が聞こえ始める頃にはそれが大型ヘリコプターの集団であることが分かった。CH-47JAチヌーク。その数は10機を数えた。
「おお、沢山来たな。どこの部隊だ?」
「さあ、どこでしょう」
野分師団長も美佐緒が着陸を始めたチヌークをのんびりと見ながら弛緩した会話をしていた。端から見ると富士の総火演を見に来た親子、あるいは花火大会に来たおじいちゃんと孫娘に見えた。
着地すると迷彩服を身につけた陸士たちが機敏に降りてくる。その動きからなかなかに練度の高い部隊だと伺い知ることができた。
確かにどこの部隊なのか、と怜奈も気になりながら、上空に待機しているチヌークへと視線を戻し、ゲッ、と声が出た。
上空で待機するヘリコプターの集団の中に1機だけ異彩を放つ機体があった。
「虎柄の塗装って……まさか」
他の機体はみな普通の迷彩塗装であるのに対して、それは虎柄でカラーリングされていた。
そのチヌークが着陸態勢に入り、ぐんぐんと高度を落としていった。
「第113特殊機動師団……日向支隊」
怜奈はうめくように呟いた。
自衛隊広しと言えど虎柄のチヌークで思い当たるのはそれしかなかった。と、着地したヘリから一人の男が姿を現す。軽やかに飛び降りると迷うことなくこちらに向かって歩いてきた。
短髪に長身のやせ型、といって貧弱には見えない。そして、トレードマークのロイドのサングラス。遠目でもそれが誰だか怜奈には分かる。ぞわっと両肩に鳥肌がたった。
男は怜奈たちの前まで来ると敬礼をした。
「第113特殊機動師団、日向支隊の日向琥太郎1等陸佐です。
虎には王様が付きますんでよろしく願います」




