⑫ ジョーカー 初陣
「最上さん、最上さん。いまどこですか?」
「今、起爆装置のところへ向かってます」
由真の問いに早苗が無線で答えてきた。はぁ、はぁと荒い息をついているので階段を上っているのだろうと、由真は推測する。ハウンドはDDの無効化結界のために機能停止して再起動中だった。
「真一君が戦闘に入りました。急いで起爆準備してください」
「分かりました」
由真は早苗との無線を一旦打ちきり、真一の戦いへと注意を向けた。
ジョーカー、真一が動かす戮天はアスファルトを踏み砕きながら、一直線に《0020》へ駆け寄っていく。
「《0020》に高エネルギー反応!
光学兵器来ます。回避を!」
「いいえ、そのままよ! そのまま、ビームの中を突っ切って!」
工藤チーフオペが叫ぶ。が、由真はその警告を打ち消すように大声で指示をした。
「なに言ってんですか!?」
工藤は気色ばむ。
「戮天のFCなら1発2発耐えれるわ。相手がビームを撃ってくれるなら好都合。そのまま組み付いて!」
「無茶苦茶だ!」
「……いいです。そのまま突っ込みます」
非難する工藤に、真一の声が淡々と答えた。
「来るっすよ」
蜜子のオペレートと共に《0020》がビームを発した。
「ジョーカー FC 260
うはっ、ほんとだ。なにこの数値」
変な感心する蜜子を尻目にビームを抜けでた戮天は《0020》に組みつくことに成功した。
それを見た由真は思わずガッツポーズをとる。
そのまま、胸に頭をつけろ!
由真は心の中で叫ぶ。ジョーカーは由真のイメージ通りに頭をつけ、続けて自分の両肩を相手の脇の下に当てる。と、体を伸ばして相手を持ち上げた。そして、両手をDDの背中に回して、相手の喉元で両手を握る。
よし、がっちり入った!
練習の成果が実を結んだ様に由真は小躍りしたい気分だった。
「よし! ジョーカー、そのまま相手を押さえ込んで! 絶対放すな」
「こちら最上。起爆装置にたどり着いたわ。
これから起動準備に入ります。1分ほど待って」
早苗から連絡が入った。
「了解です。時間の猶予はあまりありません。
退避厳しいですが爆発時間は3分でお願いします。それでなんとか退避の方をお願いします」
「ジョーカー FC 258!」
蜜子の声に戦況を確認するとDDがのけ反ると自分の全体をかけて戮天を地面に叩きつけていた。叩きつける度にDDと戮天、戮天と地面の間にMDFの赤い膜が発生していた。
「真一君、頑張って! 両足を相手の胴に回しなさい」
「は、はい!」
由真のアドバイスに従い、真一は戮天の両足でDDの胴体を挟んだ。一方、DDは狂ったように体を地面に叩きつけ続けた。真一は降り飛ばされないように懸命にDDにしがみついていた。
と、《0020》が動きを止めた。戮天を張り付けたまま、大木が地面から生え立つように直立する。なんとなく不気味な姿だった。
「気をつけて真一君、なにか仕掛けてくるわ」
とは言ったものの、由真は次になにが起きるのか見当もつかなかった。
ブツン
突然、《0020》の一番下の右腕がもげた。
「な、なに?!」
あまりの唐突さに言葉が出てこなかった。
ブツン
今度は左腕が肩口からすっぽりと抜けた。
ブツン ブツン ブツン ブツン
残りの4本の腕も次々と脱落して地面に落下する。まるでトカゲの尻尾切りを見ているようだった。
「うわっ?!」
極めていた腕がなくなれば戮天は最早、《0020》にしがみついていられない。あっさり地面に落下して無様に尻餅をついた。
腕も足もなくした《0020》は完全に蛇体の化け物だった。人面の鎌首をもたげ、じっと戮天を見下ろす。その目がキラキラと発光しだす。
「高エネルギー反応!」
蜜子の叫び声に由真は我に返った。
「真一君、逃げて!」
ゴッ!!
戮天を光の束が包み込んだ。




