⑪ 希望、その名はジョーカー
「スズ FC 18! 危険領域です」
「爪来た! 避けろ」
ピピピピピ
桑田、轟の声に急速接近を知らせる警報が重なる。しかし、スズは相変わらず身動きが取れない状況だった。
「だ~か~ら、ムリ~。 対空防御!」
20ミリ機関砲が唸り、爪の1つを叩き落とす。だが、2つ目は弾幕をすり抜けスズに迫る。
ズキャン
その爪が撃ち落とされた。
横を見ると1体の飛天がショットガンを構えたまま駆け寄ってくる。
「ヒメ 接敵!」
ヒメは、スズを押さえ込でいた左側の2本の爪をハチェットで薙ぎ払う。
「麻衣ちゃっ、あんがと!!」
両爪のバランスが崩れた瞬間、ズズは横に転がり離脱に成功する。
感謝のいすずに麻衣は無言で予備のショットガンを放り投げた。
ズガン ズガン
2体の飛天が同時にショットガンを発砲する。散弾が真っ赤な膜を無数に発生させた。
「爆発まで30秒!」
ヒメ、スズは次弾も同時に撃ち込む。
真っ赤な膜に《0020》の姿が上書きされる。
「25……24……23……」
SSIB爆発までのカウントダウンが刻々と進む。誰もがこのままいってくれと心の中で祈る。
しかし……
キュロロロロロ
《0020》が吠えた。
ブツン!
ヒメとスズからのスクリーン画面が真っ黒になった。
「ヒメ、ズズ、ブラックアウト!!」
「高エネルギー反応確認! DD、光学兵器を発射した模様」
「SSIB起爆……停止…… 再起動準備中」
「くそっ!」
オペレータの報告を聞いて、由真は毒づく。
MDFの無い状態で《0020》の光学兵器の直撃を受ければいくら飛天でも耐えられるものではない。恐らくはヒメもスズも大破したと思われた。となれば、残された札を切るしかない。由真はゆっくりと口を開いた。
「ジョーカー、出撃。
真一君、奴を押さえ込んで。君が最後の切り札よ」
飛天の半壊した頭部を蛇体で踏みつけながら、《0020》は死んだような焦点の合わぬ眼で周囲をねめつける。脅威になりそうなものはもう存在しない
キュロロロ
DDは満足そうに高らかに声を上げた。その時、ビルの影から黒い巨体が姿を現した。
戮天。由真たちの切り札。
《0020》は新参者の存在に気づき、咆哮を止める。値踏みをするように視線を戮天へと注ぐ。
無言のまましばし対峙する両者。
永遠とも思える数秒の静寂。
それは走りだした戮天により破られた。
キュロロ
威嚇するようにDDが鳴く。しかし、戮天が止まることはない。《0020》と戮天が今激突する。




