⑩ 荒事
「そうね。いすず、耐えて。
なるべく爪の迎撃もしないでギリギリまで耐えてちょうだい」
由真もあっさり同調する。
「駄目だよ。フィルタもたないよ、絶対足りないから」
「飛天一つ潰しても構わないわ」
「ひ~~」
「119! 起爆まで2分を切りました」
「スズ FC 79!」
カウントダウンが進む中、《0020》が爪を大きく伸ばした。攻撃に備えて身構える、いすず。が、爪はぐんっと空に伸びたかと思うと近くの高層ビルにぐるぐると巻きつき始めた。
「へっ? なにやってるの」
いすずは意味がわからず呆けた声を上げた。
ビルの高さは30階ぐらいだろうか。その周辺では頭一つ抜きでた高層ビルだった。その屋上辺りに腕が何重にも巻きついていく。その不可解な動きに頭を由真も頭を捻った。
ズルズルズルズル
《0020》の蛇体が横滑りする。由真は一瞬自分の目を疑った。いすずと麻衣、2体の飛天をぶら下げたままどうしてこんな動きができるのかにわかに理解できなかった。
腕か!
DDは単に伸ばした腕を縮めているだけだと由真は思い当たった。ビルを掴んだまま、腕を縮めれば体が逆に引っ張られる。
単純な話だ。
そうこうしている間に《0020》の体が中に浮いた。30階建てともなると高さは100メートルを越える。全長80メートルはある《0020》でも地を足をつけることはできない。40メートルの飛天ではなおのことだ。
「あっ?! いすず、麻衣! DDから離れて!!」
由真は大声で叫ぶ。
と、同時に《0020》が掴んでいた爪を外した。
いすず、麻衣もろともDDは地面に落下した。
DDと飛天2体分の超重量が道路を粉砕する。その衝撃で周囲のビルの窓ガラスが粉微塵となり雨あられと地上に降り注ぐ。もうもうと土煙が立ち上ぼり、視界を塞いだ。
小さくうめくいすず。そして、すぐ正気を取り戻して、はっとなった。さっきまで押さえつけていた《0020》の姿がすっぽりと抜けていた。
「ごめんなさい! あいつに逃げられた!!」
「分かってる。それが奴の狙いよ」
焦って叫ぶいすずに由真も負けずに叫び返した。どうしても離れないいすずに業を煮やした《0020》は自分の体ごと地面にズズを叩きつけることで抜けるという捨て身の行動に出たのだ。
「気をつけて、奴は近くにいるわよ」
スズ、ヒメのスクリーンにはもうもうと立ち込める土煙以外にはなにも見えなかった。
ピン ピン
ピピン ピピン
けたたましくスズのコントロールルームに警告音が鳴り響いた。左右からなにかの急接近を告げる警報だ。
「うがっ!?」
4本の爪がスズを掴まえた。
「スズ FC 68!」
「エネルギー急上昇
ビームくるぞ! スズ回避を!!」
桑田サブオペ、轟チーフオペの声が矢継ぎ早に上がる。
スズは左右から押し込んでくる爪を必死に押し返そうとするが上手く行かない。
「ダメぇ、これ無理~」
ゴッ!
土煙を吹き散らしながら光の奔流がスズを包み込んだ。
「スズ 被弾! スズ 被弾!」
桑田の悲鳴がこだました。




