⑥ 無理押し ごり押し そして、押す
ガコン ガン!
葵は怯むことなくスラッグ弾を撃ち込む。
残り800メートル。
事ここに至ればもう殴りあうだけだ
先に根を上げたほうが負けよ!
「エネルギー反応 再度急上昇!」
《0020》の目がギラギラと光始める。
「させるか!」
一声吠えるとスラッグ弾をDDの額に撃ち込む。
バシュン
当たった瞬間、《0020》の上半身がエビぞる。ほとんど同時に光学兵器が放たれる。光の奔流が虚しく垂直に伸びていった。
「おおおおお!」
葵は腹の底から声を出しながら、スラッグ弾を連射した。
「よし、追い付いた」
パイロットルームで由真は思わず呟く。
ハウンド01、02のモニタ画面に早苗が運転する車を捉えた。2体のハウンドはすぐに車の横を並走する。由真はマイクで早苗に声をかけた。
『無茶は止めてください。あなた一人でDDにどう立ち向かうつもりですか』
「……ご、ごめんなさい。でも、一刻も早くSSIBを起爆させないと真一の身が危ないのでしょ?」
ハンドルに覆い被さるようにして車を運転していた早苗が叫んだ。
『気持ちは分かりますが、無茶をするのは止めてください。DD相手にどうするつもりですか?』
「……いえ、ご免なさい。なにも考えてませんでした」
『いいですか、SSIBの起爆はお願いしますが、今後は私たちの指示に従って、勝手な行動は絶対しないで下さい』
「……はい。分かりました」
早苗は反省したように小さな声でそう答えた。
それから数分して、早苗たちは目的地に到達した。早苗は車を降りてビルを見上げる。
左右にハウンドを付き従えていた。
「このビルで良かったかしら?」
『いいです。このビルの6階です。エレベーターはもしもの時には身動きとれなくなりますので階段を使います。
ハウンドを1体先行させます。
最上さんはもう1体から絶対離れないで下さい。あなたを失うわけには行きませんからよろしくお願いいしますよ』
「分かりました」
『01を先行させます。最上さんはここで待機してください』
6階フロアの手前の踊り場で由真は言った。早苗は無言で頷いた。
「工藤さん、6階の状況を教えて。DDはどの辺にいるの?」
「すまん、さっき監視カメラの外に出たっきり戻ってきてなくて、位置が特定出来ない」
「じゃあ、カメラから外れた場所を教えて」
「その階段を上りきって、右手の廊下を言ったところだ」
「了解」
由真は工藤の言葉に従い01の歩を進めた。右手の廊下を進むとすぐに突き当たった。突き当たりにドアが一つあった。マニュピレータを使いドアを開けると螺旋階段が上に向かって伸びていた。
屋上への階段……
屋上にいるってことかしら?
階段を上り、屋上へ出た。
屋上にはエアコンの室外気や排気管、給水塔があるだけでDDの姿はなかった。
どこかの物陰に潜んでいるのか?
由真は首を捻りながら物陰を一つ一つ覗き、DDの姿を探し求めた。
ガン! バシューン
スラッグ弾が命中して《0020》はのけ反る。
残り600メートル。
ガン! バシュン
爆心予定区域まで残り500メートル。
ガン! バシュン
後、400メートル
ガン! バシュン
残り300メートル……残弾ゼロ
「くっ……
SSIBの起爆準備はまだ出来ないの?」
「まだです」
秋月の回答に、葵は口角をあげる。空元気だとしても笑いでもしなければ気力が保てない。
「あら、そう。なるべく早くしてちょうだいよ。こっちはもうすぐ準備ができちゃうわ」
ショットガンを放り投げると、アオの腰をぐっと下げる。DDの瞳が急激に光始めた。光学兵器射出の前触れだった。
「光学兵器 きます!」
「りゃあー!」
戸田の絶叫と葵の気合いと光学兵器の発射はほとんど同時だった。
MDFの防御膜と光学兵器がぶつかりバチバチと赤いを散らす中、ずるりと飛天が体を現す。
「FC 20 18 15……
危険です、危険。
このままではフィルタが飽和します!!」
ガリガリガリガリ
光学兵器の領域を抜けだし、飛天は《0020》の体に取りついた。
そのまま、渾身の力で押し込む。ずるずるとDDが押し込まれていく。
爆心予定区域までの距離が縮まっていく。
爆心予定区域まで後、残り150メートルだった。




