⑤ 中盤戦
「ちょ、ちょっと待って」
そう止めようとした時には早苗はオペビークルを飛び出していた。由真は小さく舌打ちをした。
「今、最上さんがSSIB起爆のために出ていきました」
仕方なしに由真はマイクに向かって叫んだ。
「なんですって、最上君?」
「違う、違う。最上早苗さん。彼のお母さんよ」
「……なんで彼女なの?」
「いや、自分がSSIBを起爆できるからとか言って飛び出てった」
「えっ、なんで?
いや、任せる。とにかくSSIBの起爆を急がせて!」
「ああ、もう!」
一方的に通話を切られ、由真は頭を抱えた。
とはいえ、まあ、それも無理はない。葵は《0020》と絶賛戦闘中なのだ。余裕など1ミリもないのだ。
「どうします? 起爆操作ができるとしてもDDがいますよ。一人で行かせたら不味いんじゃないですか?
食べられちゃいますよ」
「そんなこと分かってるって。あの人が勝手に飛び出ていったんだつーの!」
サブオペの蜜子の指摘が由真の神経を逆撫でる。
「どうしたんですか?
母さんがどうかしたんですか」
混乱に拍車をかけるように真一が会話に加わってきた。
「大丈夫だ。今、君のお母さんがSSIBの起爆作業に向かった」
「?!
なんで、母さんがそんなことをするんですか!」
「いいから、落ち着け!
私がサポートする。
大丈夫。君のお母さんは私が絶対に守るから。
だから、心配せずに、君はじっとしていろ。
命令があるまで待機だよ。分かったね!」
強引に真一との会話を打ち切ると由真はパイロットルームに向かう。向かいながら、オペチームの工藤と蜜子に叫ぶ。
「私はハンターを出して、最上さんを追いかける。
二人は秋月さんと連携して、他にもSSIBを起爆させられる人員を確保して!」
「秋月って、どっちのですか~?」
とぼけた質問に由真は少しは脱力と苛立ちを感じる。実は秋月という苗字のオペレータは二人いた。双子なので苗字だけでなく顔も同じだった。一人が葵、もう一人は麻衣のチーフオペだ。
「春樹のほう! 兄貴よ。
まっ、どっちでも良いけど!」
捨て台詞を残し、由真はパイロットルームに消えた。
バシューン
太陽が地上に落ちたかのような目映い光と共にDDの巨体がぐらりとのけ反る。
爆心予定区域まで残り910メートル。ようやく1000メートルを切った。スラッグ弾の残りは6発。
「もう一発!」
レバーを操作して排莢し、次弾をチャンバーヘ放り込む。
ガン!
バシュン
前面スクリーンが一瞬、白化してなにも見えなくなる。
ビッビッビッ
と、突然、警告音が鳴り響いた。サブオペ、戸田山彦1士の悲鳴が聞こえた。
「エネルギー急速に拡大!」
フィルタが形成する障壁を《0020》の光学兵器が突き抜けてきた。葵は反応が遅れて、まともに食らった。真っ赤な膜がアオの全体を覆った。
「アオ FC 55!」
2021/08/22 初稿




