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超弦天使 レヴァネーセス ~ 夏に降る雪  作者: 風風風虱
epic 1 デーモンスレイヤー
8/104

⑧ 鳴動

「ヒメは? ヒメはどこだ?」

「分かりません……

FC 変わらず…… 無事のようですが……」

「上よ!」


 戸惑う秋月と松永に対して葵の声が届く。

 ヒメは空高く、男の頭上にいた。攻撃をジャンプでかわし、そのまま男に急降下する。


 ザシャ


 男の肩に着地するとすかさず両足を脇の下に回して振り落とされないように固定する。

 腰に装備した白兵戦(クロスコンバット)用の(ハチェット)を取り、思いきり男の顔面に叩きつける


 ガッ 


 ブゥウンン


 フィルタ同士の干渉で顔面直前でハチェットが止められた。

 しかし、諦めない。もう一度振りかぶり全力で打ち下ろす。


 ガッ 


 キュウーーン


 耳に障る金属の不協和音が響きわたる。空間に赤茶けた膜のようなものが浮き上がった。

 二つのフィルタの境界面。

 フイルムの飽和時に現れる現象だった。

 もう一撃! そう思ったヒメ機を衝撃が襲う。


「ヒメ FC 15」


 男の爪だ。男はヒメを叩き落とそうと爪で殴りかかってきた。


 ガキュ!!


 ヒメの周辺に赤茶けた膜が一瞬現れて、消える。


「FC 6 !

このままだとヒメのフィルタがもたないです」

 

 鞭のようにしなり、男の右手がヒメを叩き落とそうと迫る。


 ガッ


「させない!」


 アオ機が男の右手に飛びかかり、押さえ込む。アオ機とヒメ機がほんの一瞬視線を合わせる。両手でハチェットを振り上げ、振り下ろした。


 ズン!


 ヒメのハチェットがついにフィルタを貫く。


『ゴオグゥア』


 顔面にハチェットを叩きつけられ、男は苦悶の声をあげる。だが、麻衣は容赦なく、もう一度ハチェットを叩きつけた。ブシャリと赤紫色の液体が吹き出した。

 不意に男が弛緩し、両膝から崩れ落ちた。




「……

マーク0010(まるまるひとまる)活動停止」


 コマンドルームにオペレーターの乾いた声が響いた。誰もなにも答えない。各種電子機器の作動音だけが静かに流れていた。ただ、先程までのヒリヒリした緊張感は消えていた。


「双美市内の被害報告!」


 コマンドルームの沈黙を破ったのは摩耶の静かな声だった。


「ビルが一つ半壊。 

崩落により周辺設備にも多少被害が出ています。

民間の人的被害はありません」

「そう」


 摩耶は無感動にそう答えた。答えながら思う。


 何はともあれ、終わったのだ。

 なのにこの胸騒ぎはなんだろう。どこか違和感があった。何かを見落としているような気がする。だけど、それがどうにも思いつかない


 摩耶は少しイライラしながらメインスクリーンに目をやり、自分の胸騒ぎの原因を探した。

このスクリーンのどこかにあるはずなのだ。

 そして、ハッとなった。


 なぜ侵食球が残っているのか!


 侵食球はDDの通り道。DDが顕現したら時間とともに自然消滅する、ものだった。それなのに……


ピーーン


 微かな電子音が鳴った。

 レーダー監視担当の幸田(こうだ)睦月(むつき)3曹は目の前のレーダーに視線を落とすが、不思議なものを見るように首を傾げた。それが意味することが頭に入ってこないでいた。


 ピーーン


 睦月の目が一回り大きく見開かられた。ようやく事実が頭に染みこんでくる。


「時空震…… P波…… 検出?!」

 

 ピピーン


「つ、続いてS波!」


 睦月は少し上擦った声で言った。


 ピーーン 


         ピピーン

 ピーーン

      ピピーン


 電子音の間隔が短くなっていった。

 誰も身動ぎもせず、その無機質な音に聞き耳を立てていた。


 ピピピーーン


「P波、S波同時鳴動」


 睦月の声は既に悲鳴に近かった。


「侵食体 来ます!」




 双美山上空に浮かぶ侵食球がグニャリと捻れ、その日、二つ目の侵食体がこぼれ落ちた。



2021/04/04


□□□ 次回予告 □□□

辛くもDDを撃退した麻衣たちの前に新たなDDが出現する。

『皿の男』を越えるカテゴリー4(フォー)。

未知のDDに対して、摩耶たちは第4中隊を先頭に第32特務大隊総力で立ち向かう。

たが、死闘の中、隊員たちの目前でDDは信じられない行動をとり始めた……


次回、超弦天使レヴァネーセス 

エピック2  unkown


さぁ~ 次回もぉ~ ハッスル ハッスル!

□□□□□□□□□□□□□

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