③ ガールズトーク
「事情はみんな会議に出ていたから理解していると思う」
会議を一旦終了させた後、葵は麻衣、由真、いすずの3人だけと回線をつなぎ、そう切り出した。
「DoL増強剤。
かなり怪しい代物に思える。
危険もある。
使ったからといって、戮天に乗れるようになるとも限らない。
そもそも、戮天っていうレヴァネーセスだって、試作機でどこまで頼りにできるかも未知数。
ここまでが今言えるところ。
この先は私の考え。
でも、カテゴリー5の電子機器無効化結界に対抗できるのであれば戦力として使いたい。
だから、可能性は低くても、私は増強剤を使うことに掛けることにする。
それが私の結論よ。
後はみんなの自由意志に任せる。
私のように可能性に掛けてもらっても良いし、降りてもらっても構わない。
命令はしない。
言いたいのはそれだけ」
私は使うよ、と由真が即座に答えた。
「麻衣といすずは?」
そして、由真は2人の答えを促した。
「どちらでも良いです。命令してくれれば従います」
そう答えたのは麻衣だった。だが、葵はすぐにその要求を却下した。
「駄目よ。これは命令できない」
「それでは作戦が成り立たないのでは?」
「戮天を使えるか使えないは投与とは関係ない。そのどちらの場合でも作戦を考えるのは私の責任。
でも、投与を命令する権限は私にはないわ。誰にもないと思う。だから自分で決めてちょうだい。
少しでも嫌なら止めてもらって結構よ」
「……
4人の中でDoLが一番高いのは自分だから、自分が投与するのが一番合理的だと思う」
少しの沈黙の後、麻衣はぼそぼそと答えた。
「いすずはどう?」
「わたしは……正直怖い。
将来、体に影響があるかもしれないものを入れるのは嫌。それに、わたしのDoLは0.7しかないから投与しても届かない気もして、そしたらリスクをしょいこむだけな気がして……」
「うん、いいわ。分かった。
なら私と由真、麻衣が投与に同意で良いかしら」
「はい」
「了解。ところで順番については自分に意見があるわ。
隊長は多分自分が一番最初に投与するつもりでしょうが、順番は私、次に麻衣が良いです。
私は自分の飛天を失っているから、もしも私が戮天に乗れるようになったら戦力の大幅アップになる。仮に投与による障害が出ても現有戦力は変わらない。
だから一番リスクが小さい。
そうでしょ? だから私が一番最初よ。
麻衣が次なのは、単純にDoLが一番高い、すなわち最も戮天に適合できる可能性が高いからよ」
葵は由真の言葉を静かに聞いていたが、やがて言った。
「分かったわ。それで行きましょう。」
「なるほど。それで、まず2人で試したいってことか」
廊下を歩きながら熊野は言う。その後ろを全身をぴっちりした白い服で包んだ格好の女性が続く。
「そうです。自分は名取由真。こっちは絹川麻衣です」
熊野は興味なさそうに、ああ、そう、とだけ答え、ずんずんと歩いていく。行き先は医務室だ。
「増強剤を投与してから1、2時間かけてDoLはゆっくり上昇していく。なので、1時間ぐらいの時間差を置いて投与することをお勧めするよ」
医務室のドアを開けながら熊野は言う。医務室には先客がいた。
露子と真一が入ってきた3人に目を向けた。




