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⑦ 再会、母よ

 麻衣の護衛を受けつつ少し歩くと緑一色に塗られたトレーラーが前方からやって来るのが見えた。


『あのトレーラーに乗って』


 ハウンドから麻衣の声がするのと横付けされたトレーラーの中腹のドアが開くのはほとんど同時だった。ドアのところに自衛隊の制服を着た男がいて、さあ、君たち乗ってくれ、と言った。促されるままにそのトレーラーに乗った。

 内部の片側の壁は一面無数のモニタやスイッチ、メーターに覆われていた。椅子が3つあり、内2つには人が座っていた。真一たちを招き入れた男は空いている一番左の椅子に座ると側面に設置されている簡易椅子を指差して、その辺の椅子に腰かけて、と言った。


「シートベルトは閉めてね」


 ヘッドセットを着けながら、そう言ったきりもう真一たちを振り替えることはなかった。男は目の前のモニターに素早く目を走らせると、マイクに向かって喋り始めた。


「予定通り3名を保護しました。

これより双美研究所に向かいます」


「了解。ヒメハウンド02もドームに向かわせて。

こっちのハウンドはもう残弾がないわ。

03は一旦ガンキャリーに戻すので弾薬の補給を。他のハウンドの到着時間を教えて」


「ユーマハウンド01は後60秒ほどです。

02は 324秒」


「ヒメハウンド01 現着 

マーク《0001》 レジストコード 0109

Krasue(ガスー)

マーク《0002》 レジストコード 0113

『Daddy-Long-Legs』 交戦開始

02 およそ630秒 03 210秒」


「ガンキャリー1号車 双美ドーム近くに進出させて。

他は双美研究所に集結させて」


「ユーマ03はどうする?」


「ユーマ03はオペビークルの守備継続」


「スズのハンターを投入。

スズハウンドのコマンド権限を私と麻衣、由真に委譲して」


「ユーマハウンド01 現着!

どこへ行けばいいの?」


「南出入口に民間人を誘導中よ。

その援護をお願い!

誘導は警察と研究所の警備班に任せて、ハウンドは追いかけてくるDDを食い止めて」


「了解」


「スズハウンド01、02、03 起動準備」


 矢継ぎ早に複数の言葉が目まぐるしく飛び交う。モニターには逃げ惑う人々やそれを追いかけるDDなどの姿が映っていた。双美ドームで今起こっている出来事のようだ。数分前に双葉が警告したことが、不幸にも現実に起きてしまったようだった。真一だけでなく、双葉、碧もモニターを言葉もなく見つめていた。

 暫くすると車内の3人の内の一人が席を立ち、真一たちの方へやって来た。

 そこでようやく、真一はその人が女性だと気がついた。


「ご免なさいね。いろんなことが混乱しているので。

私の名前は白須(しらす)露子(つゆこ)。技術医官……れっきとした医師よ。

まず、具合の悪い人や怪我した人はいない?」


 柔らかな物言いに張り詰めていた神経がほぐれる気分がした。


「あら。あなた、怪我してるわね。どうしたの?」


 露子は目ざとく真一の腕の傷を見つけた。


「いや、これは、別に大したことはありません。ちょっと引っ掻かれただけです」

「引っ掻かれたって……DDに?

ちょっと見せて」 

「いえ、本当に大したことないのでいいです」

「駄目よ。DDの中には毒を持っているものをいるのだから。

どんなにDDにやられたのかしら?」


 露子は真一の腕を取るとしげしげと傷を診察し始めた。


「腫れは無いようね。確かにただのみみず腫に見えるけど……

念のために消毒はしておきましょう」


 露子は治療キットを取り出すと手早く真一の傷の手当てを始めた。


「ところであなたたちの名前を教えて貰えるかしら?」

「僕の名前は最上真一。双美清郷学園の高校3年生です。前に座っているのは妹の双葉。中学2年。

その前に座っているのが柳碧。僕と同じ高校3年です」

「あおい。あら、うちの中隊長と同じ名前なのね」

「中隊長って、長良さんですか?」

「そうよ、長良葵。良く知ってるわね」

「さっき、自己紹介をしてくれたので。

後もう一人、女の方がいたみたいです。まいとかいう名前なのかな」

「ああ、絹川2尉ね。2人とも飛天のパイロット。そして、私たちは絹川2尉のサポートチームなのよ」

「飛天ってさっきの犬みたいな機械のことですか?」

「ううん、あれはハウンドと呼ばれる対DD用ドローンよ。飛天はもっと大型で人の形をしたロボットよ」


 露子に言われて今朝、悠哉が飛天の説明をしてくれていたのを思い出した。それがもうずっと昔のことのように思われた。悠哉は無事でいてくれるだろうか、と真一は心の中で思った。


「はい。これで応急手当て完了と。

後でまた、様子を見させてもらうわ。

みんな、お腹すいてたり、喉が渇いていたら遠慮なくいってね」


 露子が妙に明るく言った。それは多分自分たちを心配させないための配慮なのだろう。

 

「あの、僕たちこれからどうなるんですか?」 


 真一の問いに露子は少し困った表情を見せた。だが、それもほんの一瞬のことで、すぐに職業的笑顔に戻った。


「とりあえず、双美研究所ってところに向かっているわ。

そこで……」

「双美研究所!

双美研究所に行くんですか?!」


 それまでずっと黙り混んでいた双葉が時刻を報せる目覚まし時計のように声を上げた。


「えっ?! ええ、そうよ。後15分ぐらいかしら。私たちはそこを拠点にしようとしてるの。

だけど、双美研究所がどうかしたの?」

「双美研究所には僕たちの母が勤めているのです」


 真一の補足に露子は、あら、と少し地の表情を見せた。そして、まるでそれを合図にしたように男の声が響いた。


「双美研究所から連絡が入りました。

保護した民間人と話がしたいそうですよ。

4番モニタに映します」


 4番モニタに一人の女性が映しだされた。その女性はしっかりとした口調で喋り始めた。


『こちら双美研究所の最上です。

そちらに人がDDに変身するの目撃した人がいると聞きました。一刻も早く話を聞かせて貰えないかと連絡を取らせていただきました。

お話をさせてもらって良いでしょうか?』


 それは真一たちの母親、その人であった。


2021/07/18 指摘により衛生士→技術医官に変更

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