⑧ 女性警官
近づいてくる碧に気づいたのかパトカーは停止して、一人の女性警官が降りてきた。
その姿を見て、真一はどうやら普通の人間だと胸を撫で下ろした。碧もそれを確認できてますます嬉しそうに手をぶんぶんと振り、叫ぼうとした。
「大声は出さないで!」
鋭く低い声が女性警官から発せられた。そして、神経質そうに周囲の様子を確認する。そして、大きな音を立てるとあいつらが寄ってくるのよ、と続けて囁いた。
「あいつらって、化け物のことですか?」
釣られて碧も小声で聞き返すと女性警官はゆっくりと頷いた。運転席に座っているのは男の警官だった。無線片手に、やはり落ち着かなさげに顔を動かして周りの様子を伺っていた。
「そうよ。あいつらは音に反応して近づいてくるの。ところで3人だけ?」
「えっ、えっと……」
女性警官の質問に碧は口ごもった。その様子に警官は怪訝な目を向けてきた。
「はい。避難所から逃げてきました」
真一が後を引き継いだ。
「突然化け物たちに襲われて必死に逃げてきました。他の人たちのことは……分かりません」
分からない、と言った時、真一の胸はチクリと痛んだ。
「そう。怪我や具合の悪い人はいない?」
「こちらパトロール12号。
生存者3名発見。全員怪我などない模様。これより保護して双美ドームへ連れていきます」
運転席に座っていた警官が無線で連絡を始めるのが聞こえてきた。
「双美ドーム?」
「ええ。あなたたちを双美ドームへ連れていきます」
双葉が不安そうに呟くも、女性警官は微笑みながらそう言った。
「今、そこに生存者を集めているのよ」
「人を集めているんですか?」
集めている、と聞いたとたん双葉は体をビクリと震わせた。
「そうよ。市内の人をドームに集めて、化け物から守ろうとしているの。
大丈夫よ。そこは私たち警察ばかりじゃなくて自衛隊の人たちが守りを固めているからすごく安全なのよ」
「そうじゃない! そうじゃないの……」
突然双葉狂ったように首を横に振った。女性警官は訳が分からないらしく、微笑みを貼り付けたまま、双葉を落ち着かせようと口を開いた。だが、その女性の首になにかが素早く絡みついてきた。
「あっ?! がっ、がぁ」
女性警官は目を見開き、首に巻きついてきたものを剥がそうともがく。双葉も碧も真一も驚きと恐怖で固まって動けない。女性警官は手足をばたつかせたまま、空高く舞い上がった。
研究所にたどり着いた早苗が局長室へ直行した時、局長は丁度警備部の部長と話をしているところだった。
「さぁ、来ましたよ!
すぐに今なにが起きているのか説明してください!!」
局長と部長は、早苗の剣幕を前に互いに顔を見合わせた。一瞬視線でどちらが早苗に説明するかの激しくつばぜり合いが演じられたように見えた。やがて、局長が観念したように早苗に向き直った。
「実はね。市内のあちこちにDDが現れているようなんだ。カテゴリー1クラスの小物なんだけど、とにかく数が多くて、街中で市民が襲われて大混乱なんだよ。
ほら、小物と言っても相手はDDだからね、警察の装備では手に負えなくて。
そこで、この研究所の警備部に協力要請が来たのさ」
「やっぱり……」
早苗はぐったりしたように手近の椅子に崩れ落ちた。
「やっぱり? 今、やっぱりと言ったのかね?」
「そうです。
今、市内では想定外のデモナイゼーション現象が発生しています。
すぐに熊野さんを呼んでください」
「熊野くん? 生物研究課の熊野課長のことかい?」
「そうです。熊野さんにすぐに相談して、対策を練らないと、私たちはみんなDDになってしまいます」
2021/06/20 初稿
□□□ 次回予告 □□□
謎のデモナイゼーション現象が進行する中、時間は刻々となくなっていく。
打開策が見つからないまま葵たちは、一か八かの反抗作戦を決意する。
その作戦の鍵となる最新鋭レヴァネーセス、戮天を真一たちは目覚めさせることができるのか?
次回、超弦天使レヴァネーセス
epic9 眠れる天使
さぁ~ 次回もぉ~ ハッスル ハッスル!
□□□□□□□□□□□□□




