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超弦天使 レヴァネーセス ~ 夏に降る雪  作者: 風風風虱
epic 1 デーモンスレイヤー
6/104

⑥ 激闘

()めて!」


 葵は止まるとキャノンを男に撃ち込む。麻衣もだ。


 ガコン

 ガゴッ


 くぐもった音とともに二つの徹甲弾が男に着弾する前に止まり、ひしゃげはじかれる。

 男は葵、麻衣の攻撃などまるで意に介する様子もない。


 DDに、この異次元から来襲する怪物に知性はあるのか?


 ふと、葵は思った。人のような知性を有しているのか、それとも本能で生きる動物のような存在なのか。

 一度は簡単に誘いに乗り、攻撃対象をヒメからユーマに切り替えたのに、今はまるでこっちの誘いに乗ろうとしない。その違いは単なる気まぐれか、それとも冷静な判断によるものなのか、その問いに答えられる人間はいない。


「FS弾 セット!

このッ こっち向け!!」


 距離を1000メートル近くに縮めた葵は、もう一度ハンドキャノンを撃ち込む。

 FS弾。

 多弾頭の高燃焼炸裂弾。フィルタに高負荷をかけて飽和させるのを主目的にした対DD専用弾頭だ。無数の焔の火花が男の周囲で弾ける。

 ヒメ機からも同じようにFS弾が撃ち込まれるが二人がかりの攻撃でも男の気をひくには足りないようだ。

 

「チッ」


 葵は苛立たしく舌打ちをする。フィルタが削れているのかいないのか分からないのはなんともやりづらい。

 葵は接近しながら飛天の右大腿部に装備している20ミリ機関砲も撃ち込む。機関砲が唸りをあげて毎分1000発の弾丸を叩き込むが、それもことごとく止められ、はじかれる。

 

 ゴッ


 葵と麻衣の必死の攻撃も全く効果がなかった。男の目が発光し、ユーマ機が光の束に包まれる。


「ユーマ機 被弾 FC 29」

「29?! 29だと?

ヤバイだろ。 次、食らったらフィルタがもたないぞ」

「どうでしょう。案外ギリギリもつかもしれません」


 どこか漫才のような蜜子と工藤の会話を聞きながら、葵は全力で男に向かって走り出す。

 のんびりした蜜子の意見より工藤曹長のシビアな見立てを信じるべきだ。もう一発も射たせる訳にはいかない。となれば格闘戦に持ち込むしかない。

 およそ毎秒50メートルで1000メートルの距離を一気に詰める。

 アオ機の全面モニタに白い影が現れた。


男の右手だ。いすずがカニの爪と形容した手の横殴りがアオ機に襲いかかったのだ。

 反射的に両腕を組んで男の手をガードする。


 ブゥオン


 低い虫の羽音のような音と衝撃とともにアオ機は後方へ弾き飛ばされる。

 本来、MDFは物理衝撃も完全に封殺できる。だが、MDF同士がぶつかるとダメージは受けないが磁石の同じ極を近づけると反発するような斥力か発生する。干渉(インターフェレン)と呼ばれる現象だ。


「くっ!」


 諦めずに近づこうとするが、その度に男の手が鞭のようにアオ機の行く手を阻み、どうしても前に出れない。そうこうしているうちに、男の目が淡く発光しはじめる。狙いはユーマ機に固定されたままだ。ユーマ機は、いまだに地面にめり込んだ足を抜こうと格闘していた。


「由真! 早く逃げなさい!」


 葵が叫んだ。その時、「5秒遅延(ディレイ) HE弾 セット」。淡々とした声がした。

 

 


2021/04/04

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