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② 貯蔵庫

 真一は改めて部屋を眺めた。

 横幅はそれほどでもない。部屋は左右の壁に接するように置かれた二つの棚で綺麗に三等分にされていた。棚の幅は3メートルほど。その棚と棚の間に出来て中央の通路の幅もおよそ3メートル。

 続いて奥へと続く通路へ目を向けた。しかし

、暗い非常灯に照らされた通路はすぐに黒い闇に溶け込んで、どこまで続いているのか先が見通せない。

 思ったよりも大きいな、と真一は思う。


 『あー、助かったと思ったら、奥に別の入り口があって化け物は既に侵入していたっての百一万回はみたわ』と碧のセリフが頭をよぎった。踏み出すのが少しためらわれた。


「ここ、さっき相沢先生たちと食べ物や飲み物を取りに来たところです」


 横に立った眞菜が呟くように言った。

 手近の棚に納められている段ボール箱の中を一つ二つ確認すると水のペットボトルや乾パンの缶詰めだった。


「とりあえず、最悪の場合、救援が来るまで籠城もできそうだ」

「えっ、トイレとかどうするのよ」


 すかさず碧が大声を上げた。


「う~ん、なければ部屋の隅で……」

「あんた! 乙女に何をやらせるつもりよ。変態!」

「いや、そんなことを言われても……」

 

 理不尽な罵倒に真一は言葉を失う。


 まずは一通り部屋を確認しましょう、と慌てたように眞菜が割って入ってきた。碧と真一の二人は少し顔を見合わせる。妙な緊張感が二人の間を流れる。


「いんじゃない」


 碧がぷいっと顔を背けると部屋の奥へと歩きだす。


「ありがとう」

「いえ、なにも大したことはしてませんから」


 眞菜は神経質そうに自分の右手で左の二の腕を激しくこする。そして、照れたように顔を伏せると碧を追いかけた。





「ここで行き止まり」


 三人は途方にくれたように目の前の壁を見つめていた。結局、同じような棚がならんでいるだけで他の出入口はなかった。

 

「他に出入口はないみたいね」

「そうですね」


 ため息混じりに碧が言い、眞菜も同意する。

 変な侵入口はないが逃げ場もないということに安堵半分、落胆半分というところだった。


「あそこの換気口からもしかしたら他の部屋に行けるかもしれないけどね」


 真一の指摘に二人は顔を上に向ける。

 行き止まりの壁の天井よりのところに金網で囲われた換気口があった。確かに金網を外せば中を通れるそうな大きさだった。


「うわ、カビ臭そう」

「とても手が届きませんよ」

「いや、その辺の棚をずらして土台を作ればなんとかなるよ。

でも金網を外す道具が要りそうだね。

それはそれとして、先に棚の中身を調べてなにか役に立ちそうなものを探そう。食べ物や飲み物以外にも薬とかの箱があると思うんだ」

「そうね、双葉ちゃんも心細がってるから戻りがてら箱の中身を確認してこうか」

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