⑧ おいかけっこ
とりあえず近くの柱に向かう。
そこから様子を伺い、さらに隣の柱へ向かう。近づくと柱の影でうずくまっている者がいた。
「あっ、鳥海さん」
それは眞菜だった。自分の名前が呼ばれてたので振り向いた眞菜は真一の姿を認めるとボロボロと涙を流しながら抱きついてきた。
「えっ?! ち、ちょっと鳥海さん、落ち着いて」
「相沢先生たちが……変な化け物に捕まって、みんな、みんな!」
「そうなんだ……」
眞菜の言葉に真一は少なからずショックを受けた。だが、今はそのことに思いを巡らす余裕はなかった。
「とにかく、今は一緒に逃げよう」
3人が4人になった一行は、次の柱へ向かって走る。それが、出入口との間にある最後の柱だった。柱から出入口までを覗いてみて、真一は愕然とした。
出入口の真ん前にやはり怪物がいたのだ。
サイズ、全体的な形は人に酷似していた。ただ、手と足は4本ずつあり、どちらも非常に長かった。その怪物は長い手を絡めて捕まえた憐れな犠牲者を頭からガリガリと噛っていた。
「くそっ!」
こんなことならもう一つの出入口をゴールにすれば良かったと真一は思った。
いや、もう一つの出入口のほうにも化け物がいないとは限らない。それよりはここを切り抜ける方法を考えるべきだと、思い直した。
「いいかい、俺が合図したらみんな全力であの出入口へ向かって走るんだ」
双葉、碧、眞菜にそう言うと真一は携帯を引っ張り出した。慎重に柱を回り込み、携帯を床に滑らせる。ちょうど化け物から数メートル離れたところで止まった。しばらくすると携帯からけたたましい音量でアラームが鳴り始めた。
化け物は噛るのをやめると携帯に向かって歩き出した。
「今だ!」
真一の合図でみんな一斉に出入口に向かって走り出す。
最初に出入口に取りついたのは真一だった、ドアを開け、碧、眞菜を先に行かせる。そして、双葉が途中で凍りついたように立ち止まっているのを見て愕然となった。
「双葉! 何をやってる」
思わず大声で叫んでしまったが、それが失敗だった。双葉だけでなく化け物もまた真一の声に反応してしまった。その手長足長は双葉に猛然と駆け寄り、そのシワが寄りねじくれた手を伸ばす。
「双葉!」
真一は双葉にタックルをした。もつれて転がる二人の上を化け物の手が通りすぎていった。
「なにやってんだ、馬鹿ッ!」
「ご、ごめんなさい。でも……」
「言い訳は後だ。今は逃げるぞ」
真一は双葉を引き起こすと出口に向かって走る。しかし、化け物は二人との距離をみるみる縮めてきた。
化け物の手が双葉の肩を掴もうとした瞬間。
「えいっ!」
辺りが真っ白になった。碧が化け物に向かって消火器を吹き掛けたのだ。突然のことに化け物は動きを止める。その隙に真一たちは出入口にたどり着いた。そして、なんとか出入口を通り抜けた。
そこは長い廊下が続いていた。誰もいない。勿論化け物も。薄暗い廊下があるだけだった。
この廊下の先に地上につながる階段がある。
「ふう。助かったよ」
「へへへ、どういたしまして」
二人は顔を見合わせると安堵の笑顔を浮かべた。
と、出入口が音をたてて開かれ、化け物が姿を現した。
「ゲッ?! 追ってきたよ」
と、碧が悲鳴を上げた。
「逃げて!」
4人は長い廊下を走る。だが、手長足長の方が圧倒的に早いのはさっきの追いかけっこで実証済みだった。このままだと地上への階段にたどり着く前にみんな捕まってしまう。
そう思う真一の目の間に廊下の壁のドアが飛び込んできた。
「その部屋に入って!」
4人は一塊になって部屋になだれ込んだ。間髪を入れずドアを閉める。
ガツン
真一の背中でドアが踊った。化け物が中に入ろうとドアを激しく叩いているにのだ。そうはさせじと真一は懸命にドアを押さえた。
「な、なにかつっかえ棒になるものを探して!」
2021/05/16 初稿
□□□ 次回予告 □□□
突然現れた化け物に追われた真一たちは
避難所の一角に立てこもる
そして、化け物が突然現れた理由を知る
一方、葵たち、繭に取り込まれた
飛天のパイロットたちは反撃の準備を始める
次回、超弦天使レヴァネーセス
epic7 魔宴
さぁ~ 次回もぉ~ ハッスル ハッスル!
□□□□□□□□□□□□□
次回投稿は、6月13日10:00 予定




