④ 閉じ込められる人々
早苗はクレードルⅡの助手席にいた。
膝に置いている無線機が短く鳴った。
「こちら、ガードワンです」
無線の主は輸送チームの警備リーダーだった。早苗はちらりと前を見る。数十メートル先を黒塗りの車両が走っている。それがガードワンだ。
「こちら最上です。なにかありましたか?」
「空が変です」
「空?」
早苗は前屈みになって空を見上げた。しかし、いつもの青い空が広がっているだけだった。
「別になんの異常もないけど……」
「後ろです、後ろの方」
無線の声に、窓から顔を出して後ろを見た。
あっ! と思わず声が出た。クレードルの後ろの空が真っ白いものに覆われていた。一見して雲とは違うと分かる。わた飴のような粘り気のある物質が空を侵食していく。見る間に、それは早苗たちを追い越していった。
早苗はシートに座り直すと正面を見据える。もうフロントガラス越しにも空の異常を見てとれた。
「あれはなに?」
無駄と思いつつも無線に向かって問いかける。
「分かりません。どうしましょう」
予測通りの回答。我ながら愚問であったと早苗は一人反省する。
どうしょうって私に分かるわけないでしょ!
早苗は心の中で毒づきはしたが、それでも彼女が現場の責任者なのだ。なんらかの判断をしなくてはならない。
「と、とにかく急いで。警戒しながら予定のコースを進んで!」
早苗の指示で先導車も彼女の乗るクレードルも先を急ぐが空はどんどん正体不明のものに包まれていった。すぐに進行方向が白い壁に塞がれた。
「ああ……」
早苗は絶望のうめき声を上げた。後、数十メートルも行けばぶつかるというところで先導車もクレードルも止まった。
「どうしますか?」
ガードワンから再度、打診が入った。
「白い壁を調べて。突っ切れるものなら突っ切りたいわ」
「……了解。調べます」
先導車から二人の武装した男が降りるとゆっくりと白い壁へと近づいていった。早苗は黙ってそれを見守っていた。
男たちは壁に到達すると色々と調べ始めた。
やがて、無線が入った。
「なんだかか良く分かりませんが、かなり固い物です。我々の装備では突破は無理です。通り抜けれそうな隙間も見当たりません」
早苗はナビの地図を確認する。正直、このクレードルのような巨大なトレーラーが走れる道路などそんなにあるわけではないのだ。
「う~ん。どうしようもないわね。
ナビのE23、E35のルートが通れるか手分けして確認して来てください」
早苗は唇を噛みしめながらそう指示をした。




