⑧ 世界は今、閉じられる
「ところで双葉ちゃんは見てあげた?」
「いや、見てない」
「ふ~ん。中等部の子たちもこのエリアに集められているらしいよ」
「そうなんだ……」
「そうなんだじゃないって。
不安がってるかもしれないから、ちょっと顔見せて上げたらどうなのよ。
まっ、とは言え、真一が中学生のところに行ったら騒ぎになっちゃうかもね。変な人来たーッてね」
「そんなことにはならないよ。失礼な!」
と言いながら、視線を動かし双葉のいそうなところを探した。点在する柱で視界が遮られて全体を見通すことはできなかったが、それでも左端のところに見覚えのある制服をきた人がいたので、その辺なのだろうと当たりはつけれた。
「俺、ちょっと行ってくるよ」
「おっ、優しいねぇ。じゃあ、私もついていってあげるよ」
碧の言葉に真一は眉をひそめる。
「なんで碧がついてくるんだ」
「さっきも言ったじゃない。真一一人だと変質者が来たーって騒がれちゃうわよ。もしかしたら捕まっちゃうかも」
「だれが変質者だよ」
と、答えながらも少し心配になった。
騒がれたりしてもどうということはないが、それで双葉が肩身の狭い思いをすることになるのも可哀想。
「そうだね、一緒についてきてもらおうかな」
「うん、うん。そうしたまえ、そうしたまえ」
碧はにんまりと笑う。妙に嬉しそうだった。
双葉を探しに行く途中で、二人ほほとんど同時に携帯を取り出した。見ると悠哉からのメールだった。
”街でDDが暴れてる”
二人で顔を見合わせる。
動画は付いていなかったが代わりに写真が何枚か一緒に送られてきていた。
どれにも街で暴れる異形の化け物の姿がとらえられていた。
「わぁ! 乳がいっぱいある」
「突っ込むとこそこかよ。
って言うか乳とか言うなよ」
「いいじゃん、別に。
これ……西山手の方だよね」
「うん、それっぽいね」
「うわぁ、『アクアジュエル』とか大丈夫かな」
「なに、『アクアジュエル』って?」
「アクセとコスメのお店。結構、可愛いアクセサリーとか売ってんのよ」
「……
まあ、西山手ならここから結構離れているから安心っていえば安心かな」
「今のところは、って感じ。それよかあのバカ、まだ外でウロチョロしてのね。
ちゃっちゃと避難しろって打ってやる」
碧は、そう言うと悠哉にメールをうった。
「あれ? メール送信失敗した」
碧に困ったような表情を向けられたが、真一としても困る。
「う~ん、電波が来てない。どうしたんだろう。DDにアンテナとかを壊されたのかな」
ふっと、暗くなった。天井の照明が一斉に消えたのだ。
「えっ、なに?」
そこ、ここで女の子たちの悲鳴が聞こえた。
碧も真一の腕に抱きついてきた。腕に胸があたる。
「停電……かな、大丈夫。多分、非常用の……」
ふっと、明かりが復活した。ただし、さっきまでの白色灯ではなく、赤い光だった。
「ほら、ついたよ」
「……う、うん」
碧は小さくうなづいたが、しがみついた腕を放そうとはしない。少し潤んだ瞳で見上げてくる碧の姿に、強烈に異性を感じて真一はどきまぎした。
「だ、大丈夫だよ。すぐに普通の電源も復旧するよ」
碧を落ち着かせるために、なるべくゆっくりした声で言いながら、優しくしがみついてくる腕をはがした。
「俺、本当に妹が心配になったんで行くよ」
「私も行くよ!
こんなところで一人は嫌だってばっ!!」
碧は真一の袖を掴んで強硬に主張する。
「う~ん、まあ、いいか。二人の方が見つけやすいしね」
真一たちは暗く不安定な非常灯の下、妹の姿を求めて歩き始めた。
2021/05/09
□□□ 次回予告 □□□
DDにより巨大な繭に閉じ込められた双美市。
その未知の状況を必死に理解し打開しようとする摩耶や真一たち。
だが、そんな彼女たちを嘲笑うかのように、
繭の中は次第に希望と絶望、勇気と恐怖が混ざりあう混沌のるつぼと化していくのだった。
次回、超弦天使レヴァネーセス
epic6 繭の中
さぁ~ 次回もぉ~ ハッスル ハッスル!
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